8話 気を許した間柄ゆえにーマーヤサイド③ー
「…きて…起きて、マーヤ」
微睡みの中、私を呼ぶ声がする。
もうちょっと眠っていたいなぁ…
…眠っていたい…?
瞼は重く感じるけど、意識を取り戻した私は無理矢理瞼を開く。
焚き火が消えている薪と仲間達がまだ眠ってる姿が横向きに…横向き?
体を仰向きにすると…
「あ、おはようマーヤ、悪いんだけど朝食準備したいんだ…」
ジンの顔があった。
「えっ…!?えっ!?ジンさ…!なん…!?」
体も思考も追い付かない。
え?これ、膝枕…ッ!?
「その、マーヤが泣き止んだと思ってたらそのまま寝ちゃって…起こすの悪いかなって…」
悪いかな…じゃないよ!
私泣きじゃくった挙げ句にそのままひどい顔のまま寝て寝顔まで見られたってことじゃん!
恥ずかしさのあまりに体を素早く起こす。
「おっと」
「お…起こしてくれてもよかったじゃない!恥ずかしいよ!」
「まだワイルド達が寝てるから、ね?」
「あっ!?」
ハッとして辺りを見回しても誰も起きている様子はなくホッとした。
「その…騒がしくしてごめん…」
「メンバー起きなかったし大丈夫だよ、それよりマーヤがしっかり眠れてたようだし、素が出るくらいはストレス発散出来たみたいでよかったよ」
素が出る…?
あ……私……
いわゆるタメ口で話して…
「あ…あの…すみません…私…」
「いいよ、俺同年扱い馴れてるし、昨日いったでしょ気を使いすぎだって、歳もそんなに離れてないし俺相手くらい言いたいこと言いなって」
「でも…いいの?」
「いいよ、現に俺なんて……ワイルド達にタメ口だしさ」
ワイルドさんの話をするジンの顔が少し寂しそうにしていた。
ジンに対しての当たりが強くなったのもこの頃からだった魔物も強くなり、思うように戦えなくなっている事や、それこそ野宿とかのストレスが溜まってきてるのだろう。
「ワイルドさん…あの、最近そのワイルドさん達と大丈夫なの?」
「ん?最近ね…仕方ないよ、魔物達が強くなってる中、俺は全然成長しないから、それに対して不満が溜まってるんだと思うんだ」
ワイルドさんは、魔物にダメージ少ししか与えられず、倒せないジンにストレスをぶつけてる感じがする。
後衛の私やタミーさんをジンが身を挺して守ってくれてるから私としては凄く助かっているけど、その辺りの評価はしていない…
私がジンと同じ立場だったら…耐えられるかわからないよ。
「ジン…辛くないの?」
「そうだね、辛くないって言えば嘘、けど…戦闘で役立たずなのはあってる、それこそ真っ先に命の危機に迫られる前線を張ってるワイルド達のストレスが溜まるのも分かるし、任務が成功するなら俺にぶつけるくらい構わないよ」
それはジンだって一緒なのに…
体が傷ついて、それで心も傷ついて。
それでも皆の為に雑務や料理だって引き受けて。
一番泣きたくなるほど辛いはずなのに昨日の私も慰めてくれて…
「……凄いよジンは」
「ん?何か言った?」
小さい独り言のように発したつもりだったけど、私が呟いたことには気づいた様子だった。
「なんでもないよ、ねぇ私も朝食作り手伝うよ」
「1人で大丈夫だよ、今日は昨日より大変になりそうだし休んでなよ」
「大丈夫じゃないよ!私がタメ口で話せる仲なんだから対等でしょ?それに…」
「それに?」
「一緒に乗り越えていくんでしょ?だったら朝食作りも一緒にやろうよ」
この日を境にから私はジンの手伝いをするようになった。
夜の見張りも二人で起きて話すようにもなって、眠れるようにもなった。
心なしか治癒術の質がよくなった気がする。
圧倒的な剣技の達人のワイルドさん。
パーティの絶対的な盾のターキーさん。
殲滅出来る魔法使いのタミーさん。
治癒術で支える私。
そして精神的支柱のジン。
そう思ってるのは私だけかもしれない。
他の人達がどう評価してるかはわからないけど。
ジンがいればこの任務成功出来る。
確証はないけど…
けど、私は強くそう確信してた。




