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第一話 憧れの人

 私の名前は中村沙織。年齢は14歳で地元の中学校の2年生。得意な教科は社会の歴史で、苦手な教科は数学で部活動ではテニスをやっている。家族は私と父母の3人。私の自己紹介といったらこんなもので、特に取りえがあるわけでもない普通の女子中学生だ。

 そんな私に今日、不思議な出会いがあった。それは全く知らない男性の人との出会いだった。



 今日は日曜、良い天気で清々しい日だった。その日、私は幼なじみの涼子と遊びに出かけた。涼子とは家も近く、幼稚園の頃からいつも私たちは一緒だった。彼女は私にとって一番の親友である。また彼女にとっても私は一番の親友だ。

 私が、彼女の家へ行くと既に門のところで待っていた。

「沙織遅いよ!」

「ごめん、家で財布なくしちゃって・・・探してたら遅くなっちゃった」

「ホントにそそっかしいね」

「だからごめん。悪気があった訳じゃないんだから・・・・」

「まぁいいわ、許してあげる。それじゃ行こ」

 よく二人で遊ぶ時は電車で隣町まで行く。遊ぶといっても、大きなデパートや雑貨屋で買い物して町をぶらぶら歩くくらいだ。それでも良い気分転換になる。だからこうして、涼子と一日中ぶらぶらして買い物することは月に何度かある。デパートに着いた私たちは早速、洋服のコーナーへと向かった。デパートに着いたら必ず最初に行く場所だ。大体いつも、そこで2時間くらい時間がつぶれてしまう。すべてを見尽くしたらデパートを出て町の中をぶらぶら歩く。

 そしてデパートを出た私たちは、今日もまたあの公園に行った。あの公園とは、この町を歩いていたら偶然見つけた公園だ。それは町の中にある森にある。森に囲まれているので、自然の香や風景などでとても癒されるのだ。日曜日にここへ来ると、大体は大勢の子どもで賑わっている。今日もそうだった。今日は良い天気だし、最高のお散歩日和。私たちは、空いているベンチに座って一休みをした。

「いつ来ても落ち着くわね〜」

「まぁ、デパート行ったらこの公園ってパターン化してるからね」

 私たちは、特に話すこともなく自然の心地良さに身を任せた。


「あの・・・もしかして沙織さんですか・・・?」


 聞きおぼえのない声が、突然私の名前を呼んだ。よく見ると、前に見知らぬ男が立っていた。見た感じ年は20代後半・・・わりと良い顔立ちである。身長は170ちょっとで少し茶色がかった髪の毛、爽やかなお兄さんと言った感じだ。しかし、何で私の名前を知っているのだろう。

「沙織さんですよね・・・?」

「そうですけど・・・あの失礼ですけど、どこかでお会いしましたか?・・・ちょっと思い出せなくて」

「あ、そうですよね。いきなりすみません。名字までは覚えていないと思いますが、僕は大畑真といいます」

「え・・・?」

 私は、記憶の中をたどって「大畑真」という名前を探した。しかしいくら思い出そうとしても、その名前は出てこなかった。

「もしかして、隣に座っている人は涼子さんですか?」

「私の事も知ってるんですか?」

 彼は、涼子の事も知っているみたいだ。けれど、涼子も思いあたらないみたいである。すると、彼はニコッと笑顔を見せた。

「やっぱりそうだ!まさか、本当に沙織さんと涼子さんだなんて・・・僕の事、何も思い出せませんか?」

 私も涼子も、やはり「大畑真」という名前に聞き覚えがなかった。私は必死に頭の中の記憶を呼び覚ましたが、それでもその名前は出てこなかった。

「ごめんなさい・・・やっぱり思い出せません・・・・」

「ちょっと、沙織」

「えっ何よ?」

 いきなり、涼子はあわてた様子で私の腕を引っ張りこの場から立ち去った。

 そして、ある程度離れたところで涼子は私の腕を離し足を止めた。私たちは、軽く息が上がっている。

「ちょっと涼子、いきなり何なのよ!どうしたの?」

「あんたねぇ・・・」

「・・・な、何よ?」

「私たち、騙されるところだったじゃない」

「え、今の大畑真さんに?」

「そうよ、今オレオレ詐欺とか流行ってるじゃない、きっとその類の犯罪だったのよ・・・」

「まさかぁ、面と向かってそんな事する人はいないわよ。それに騙すなら、自己紹介の時に私たちに多少の関わりがある名前を使うんじゃ・・・」

「だからぁ!いろいろ言って、本当に私たちがあの人に会った事があるって思わせようとしてたのよ」

「でも、まだ私たちと実際どこで会ったか聞いてないじゃない・・・・」

「バカね、そんな事聞いたって何にもなんないわ。教えてくれたってウソを言うに決まってる」

「んー・・・そんなのまだ分からないわ」

「あなたは人を疑う事を知りなさい。いい?とにかく少しでも変だと感じたら、すぐさま逃げた方がいいのよ」

「・・・・・」

 涼子の言うことが当たっているのか分からない。しかし「大畑真」という人を思い出せないし、今から彼のところに戻る気はしなかった。

 ただ、少し私の中でその出来事は気になっていた。

 

 それが、今日起きた不思議な出会いだった。



 私は涼子と別れて家に帰り、ふとその事を考えた。

 涼子は、犯罪とかそんな事を言っていたけれど、私には大畑真さんが嘘を言っているようには思えなかった。それは根拠があるわけでもなく、なんとなくだけど。

「私、真さんって呼んでたのかなぁ・・・・」

 独り言をつぶやき自分のベッドに寝転んだ。次第にごちゃごちゃ考えるのが疲れてくる。仕方なく寝ようと思い、部屋の電気を消そうとベッドから起き上がったその時、私の部屋の扉をお母さんが開けた。

「沙織、涼子ちゃんから電話よ」

「え、涼子から?何だろうこんな時間に・・・・?」

 お母さんは、コードレスの電話を渡して私の部屋を出て行った。私は電話に出た。

「もしもし涼子?こんな時間に何?」

「沙織、私間違ってたわ・・・・・」

「はぁ?」

「大畑真さんの事よ!私たち確かに真さんと会った事があるわ!」

「えっ・・・・!」

「実は今、部屋の整理をしてたんだけど、懐かしいもの見つけたの!」

「懐かしいもの?」

「私たちが、幼稚園を卒園したときにもらった文集?みたいなの」

「幼稚園・・・・・・・あっ!」

 その時、私はすべてを思い出した。

 私が幼稚園の年長組だった時、私の組に一人の実習生が来た。その実習生が、当時大学生で幼稚園の先生になる事を目指していた大畑真さんだった。私は、彼に一目惚れしてしまったのだ。それから実習期間はずっと真さんにくっついてばかりで、何度も本気で「好き」という気持ちを伝えていた。しかし、真さんはいつも微笑んでくれるだけだった。そして、真さんの実習が終わり、私は彼への想いを引きずったまま年齢が上がっていく内に、彼の存在を忘れていった。今思い出すと、今日会った真さんと学生の真さんには当然面影がある。

「沙織も、思い出した?」

「うん、思い出した。でも涼子、よく分かったね」

「園児一人ひとりのメッセージのとこに、沙織は『まことおにいちゃんとけっこんする』って下手くそな字で書いてあったから」

 下手くそは仕方ないでしょうが。

「でも涼子、そうなると私たち真さんにかなり酷いことしたよね・・・もう一度真さんに会いたい」

「・・・・・・」

 少し沈黙があった。しばらくして、それをやぶるかのように私は言う。

「私・・・・」

 ふと真さんの顔を思い浮かべると、私は顔が急に熱くなった。電話での会話で良かったと思う。直接話していたら、私の異変が涼子にばれてしまう。それに、いきなり前の気持ちが蘇るなんて知ったら彼女は何て言うだろう。自分でも可笑しい事だと感じる。

「・・・沙織、どうしたのよ」

「いや、何でもない」

 もしかしたら、涼子は私の気持ちに気づいたかもしれない。けれど涼子は何も言わなかった。もちろん私も。今は自分の気持ちを静めるのに精一杯で、他の事には集中出来ない。だからもう何も話したくなかった。



 真さんへの想いをすっかり忘れていた私は、今その想いが再び大きくなった。幼稚園の時よりもずっと。少女の頃のひと時の気持ちを、いまさら追いかける事は恥ずかしい事かもしれない。でも、あの時の私にとって大切で真剣なものだった。記憶からなくなっていた事の方が恥ずかしいのである。

もう一度会いたい。しかし、真さんとあの公園で会えたのは偶然であり、再び出会える事は難しいだろう。

 でも、諦めたくない。もう一度彼に会おう。



 次の日曜日も、すばらしい晴天で気持ちが良かった。

 私は、真さんに会うべく一人で隣町まででかけた。そして、私と真さんが出会ったあの公園に向かった。しかし、広い公園を隅々まで捜したが当然真さんはどこにもいなかった。それでも、めげずに私は公園を出てこの町をしらみつぶしに捜そうと思った。

 もしかしたら、真さんはい今幼稚園の先生になっているかもしれない。それを信じ、この町の人たちにも彼の事を聞いた。けれども、彼を知っている人は誰一人としていなかった。そして、この広い町のどこかで真さんに出会う事はなかった。



 疲れきった私は町の中を歩いていた。流石の私も諦めの心が出てきた。まずこの町にいるかも定かではないのに。無謀な事をしたと今更感じてきた。脱力感でいっぱいの私は最後にまた公園に行った。とりあえずベンチに座って一息つく事にした。

「あーあ・・・何で会った時に思い出さなかったんだろう・・・」

 私は、後悔の気持ちでいっぱいだった。

 すると、なんだか眠くなってきた・・・。私は少し疲れるとすぐに眠くなってしまう。雲ひとつない良い天気と微かに吹く風が心地よかった。少し眠ろう・・・そう思った。


 私はどのくらい眠ったのだろう・・・。もう私は、ここから動く気もなくなりひたすら眠った。


 すると、私の隣に誰かが座った。でもそんなのは気にせず眠り続けた。しかしいつまでたっても、隣に座っている人はそこを動かない。私はいい加減目を覚ました。隣を見ると、座っていたのは知らないおばさんだった。そのおばさんもベンチで寝ていた。(何故?)



 そして私は、公園の中をのんびり歩いた。

 私は、真さんに会ったら何を言えばいいんだろう。まずはこの前の事をしっかり謝らないと。でもその後はどうしよう。そうだ、真さんが実習に来ていた時の事を話そう。彼も私や涼子と話しをしたかった事が話せるかもしれない。・・・・だけど、私の想いはどうしよう。真さんに言いたい。もし言ったら彼はどう思うんだろう。私の気持ち伝わるかな、今度は本気に考えてくれるかな。

 再び会える事などないのに、私は真さんの事を考えながら歩いた。しかし、当然彼の姿を見る事はなかった。いつの間にか「淋しい」いう気持ちが駆け巡る。気がつくと、私の目は潤んでいて辺りがよく見えなくなっていた。


「あの、すみません。沙織さん・・・ですか?」


「!!!」

 突然、真さんの声がその言葉が私の体を突き抜ける。なんとなくだが、後ろから聞こえてきた気がし、私は涙を拭き後ろを振り返った。しかし、そこにいた人は真さんではない。

「あの・・・あなたは?」

「申し遅れました。大畑大輔、真の兄です。あなたが沙織さんですか?」

「は、はい、中村沙織といいます!真さんのお兄さん!私先週この公園で真さんに会いました!でも、その時は思い出せなくて、真さんにそっけない態度を・・・」

「真に聞きましたよ」

「でも、何故お兄さんが・・・私も真さんを捜していたんです。あの、真さんは・・・?」

「・・・沙織さんたちと出会ってから、二日後に亡くなりました。」

「え・・・」

「真は白血病で入院していたんです。大学生の時に白血病と診断され何年も前に『幼稚園の先生』になるという夢を失ってしまいました」

「・・・・・・」

 私は突然の事で呆然としていた。というより今の状況がよく分からなかった。

「僕は、真を助けるために毎日のように病気について調べていました。しかし、あなたや涼子さんと会った後で急に様態が悪化したんです」

 何を言っていいか分からなかった。しかし、少しずつ真さんは亡くなってしまったのだと感じてきたのだ。けれど悲しみはない。おそらく実感がないからだと思う。

「真は、あなたたちに悪い事をしたと言っていました。突然、見知らぬ男が話かければ誰だって怪しく思うと・・・・。でも、真は最期にあなたたちに会えて嬉しかったと言っていましたよ」

「私は真さんに話しかけられた時、その場から逃げ出してしまったんです。真さんにとても酷い事をしたと思ってます」

「あいつは何も感じていませんよ」

「・・・・・」

「幼稚園の先生ではなかったけれどあなたたちは、真が『幼稚園の先生』として初めて出会った園児ですから。自分の夢を支えてくれた園児たちに出会える事より嬉しいことはない。それは、もし自分の事を思い出してくれなくてもです」

 それでも、真さんの事を何も分かっていなかった罪悪感が私を襲う。すると、お兄さんは封筒を取り出した。

「これは、真が亡くなる前にあなたたちに書いた手紙です。どうか、受け取ってください」

 私は封筒を受け取った。



 私は呆然とした気持ちで家に帰った。自分の部屋に入り渡された手紙を読んだ。いつの間にか私の目から涙が流れていた。少女のひと時の想いは、一瞬にして二度と叶えられない想いになった。私は繰り返し手紙を読んだ。真さんの死が告げられた時に流れなかった涙は今になって零れ落ちる。

 やっと気づいた、大切な人がいなくなった悲しみ・・・私が、真さんに会える事はもう一生ない・・・

「真さん、ごめんなさい・・・」

 私は手紙を握り締めて泣き叫んだ。



 〜沙織さん、涼子さんへ〜


 先日は、突然すみませんでした。とても驚いたことだろうと後々感じて申し訳なく思っています。

 二人とも、すっかり大人らしくなりましたね。しかし、僕にはすぐに二人が沙織さんと涼子さんである事に気づきました。

二人が、僕の事を忘れてしまっている事には何も感じていません。悲しくもありません。考えてみれば、もう何年も前の幼稚園の時の事ですからそれは当然です。もしかすると、兄から僕の事を聞かされて、この手紙を読んでいても思い出せないかもしれませんね。それならそれで構いません。もし思い出してくれたならあの時の事を思い浮かべながら、この手紙を読んでくれたら幸いです。

 兄から聞いたとおり、僕は大学生の時に白血病だと医師から診断されました。完治する術を見つける事ができず、僕は夢である、幼稚園の先生を諦めました。けれど、僕には幼稚園実習で多くの園児たちとたくさんの思い出があるから、夢を失ってからでもここまで生きてこれたのだと思います。

 幼稚園ではいろいろ遊びましたね。鬼ごっこをしたり、泥団子を作ったり、絵本を読んだり、数え切れないくらい遊びました。

 沙織さんは、ずっと僕に寄り添っていたんですよ。涼子さんは、実習生である僕に真先生と言ってくれまたね。とても嬉しかったです。僕はずっと忘れません。みんな優しい園児だったからです。今でもあの時の事を思い出すと、嬉しくなって胸が熱くなります。

 もうみんなとは生きて出会う事は、おそらくありません。僕は、僕の夢を支えてくれたみんなに感謝をしたかったのです。

最後になりますが僕から沙織さん、涼子さんにメッセージがあります。

 僕は「幼稚園の先生」になるという夢は叶えられませんでした、けれども悔いの残る人生だったとは感じていません。だから、自分の夢に向かってがんばって進んでいって下さい。そして、悔いの残らない人生を送って下さい。

 また沙織さんや涼子さんの友達で、あの時の園児だったみんなに会った時、僕が感謝していた事を伝えて下さい。


 あの時の園児、沙織さんと涼子さんに会える事が出来て本当に嬉しかったです。ありがとう。


 そして、さようなら。


                                      大畑真





 〜大畑真さんへ〜


真さん、私はあなたの事をしっかり思い出しましたよ。涼子が思い出して私に教えてくれたんです。でも、思い出すのが遅すぎました。私にも真さんに伝えたい事がいっぱいあります。こういう形でしか伝えられませんが、ぜひ聞いて下さい。

 その前に、まずあなたに謝りたいです。真さんは優しい人です。「謝らなくていい」と、もしかしたら、そう思うかもしれません。けれど謝らして下さい。私は真さんの事を思い出せませんでした。話しかけてくれた時、「真お兄ちゃん」だと気付けなかった事、後悔しました。私は話しの途中にあなたから逃げてしまいました。真さんが幼稚園の事を話す前に立ち去りました。とても酷い事をし傷つけてしまいました。申し訳ない気持ちでいっぱいです。本当にごめんなさい。

 真さんの事を思い出してから、私はあなたがいた幼稚園の記憶を辿ってみました。すごく楽しかった事ばかりです。初めて真さんが幼稚園にきたのを見て、私は運命の出会いなのではないかと感じました。そして私のクラスと知った時は、すごく嬉しくて仕方がなかったんです。

 私や涼子へ書いてくれた手紙にも書いてありましたが、私はずっと真さんのそばにいました。ほとんど独り占めのような感じになっていましたね。真さんを取り合うケンカもしばしばありました。おままごともしたし、外で追いかけっこもしました。真さんと一緒に唄った事も憶えています。たまには、わがままを言って困らした事もありました。しかしどんな時でも、あなたは優しく接してくれました。毎日、真さんに会うために幼稚園に行くのが楽しみで仕方がなかったんです。

 真さん、憶えていますか?

 私、ずっとあなたに伝えていた事がありました。真さんはどういう風に思っていたのかは分かりませんが、あの時の私は真剣でした。それだけ真さんだけに夢中だったんです。でも実習が終わり、私の記憶からあなたの存在がなくなっていきました。そして私は完全に忘れていました。

 そして再び会って、私の忘れていた想いがあの時と変わらずに甦りました。それから私は、あなたにその事をしっかり伝えたかったので、必死にあの公園であなたを捜したんです。

 けれど、真さんは私が想いを伝える前にもう会えなくなってしまいました。だからこそ、この手紙では伝えたいと思います。可笑しな事だと感じると思います。今まで忘れていたものを思い出して、いきなり前のような想いが込み上げてくるなんて。

 でも私は真剣です。真さんがいなくなって、悲しくてずっと泣いていたのですから。伝えたい事も伝えられずに、いなくなってしまったのだから。この想いに偽りはありません。

 けれど、私はもう悲しみません。たまには涙を流すことがあるかもしれませんが、少しでも真さんが安心して安心していられるように生きていきたいです。あなたの手紙にも書いてあったように、「夢に向かって悔いのないよう」私は前を向いて歩んで生きたい。

 あなたは私の「憧れの人」です。だから、私もあなたのように「夢に向かって悔いのないよう」努力します。どうか、私たちをいつまでも見守っていてください。

 真さん、楽しい思い出をありがとう。あなたの事を、もう二度と忘れる事はありません。真さんは私の中で、いつまでも存在します。

 最後に、一番伝えたかった事を伝えます。


 好きです。


                                      中村沙織







 数年後


 私は、高校を卒業して地元を離れ短期大学に入学した。入学して三ヶ月、やっと新しい学園生活や一人暮らしにも慣れてきたところである。もちろん、サークルではテニスをやっている。今では多くの人と友達になれて、新しい学校生活を満喫している。

 親友の涼子は、美容師になるために高校を卒業してから美容師の専門学校に進学した。彼女とは高校までずっと一緒だったので初めて別れ離れになってしまった。しかし、月に一日くらいだけど会って一緒に遊んでいる。涼子も私と同じで、一人暮らしや新しい生活を楽しんでいるみたいだ。

 ちなみに私は将来、保育園や幼稚園の先生になろうと考えている。なぜ子どもに関する仕事をやりたくなったかはよく分からない。でも子どもは大好き、とにかく私は子どもに関わる仕事をしたい。そのために今、学校でがんばっている。勉強は難しいけど、一生懸命やろうと思って毎日を生活しているのだ。もちろんこれから保育園や幼稚園の実習が入ってきて、大変になると思うが楽しみである。もしかしたら、私の憧れの人もこんな気持ちだったのかな。私の憧れの人は生きてはいないけど、心の中ではいつまでも存在している。

 いつか、憧れの人が私たちに残してくれたメッセージ。自分の夢に向かって悔いの残らない人生を・・・。私は今、一生懸命に生きていこうとしている。きっとあの人は、どこかで私たちを見ていてくれているはず。だから私は、どんな事にもがんばれる。自信を持って進もう。 そして最高の人生を築いて行こう。


 憧れの人、ありがとう。


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