表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/27

第9話

フィルミナとエドワルドの出会いとは?

 フィルミナがエドワルドと初めて出会ったのは3歳の時だった。3歳で既に本好きだったフィルミナは王宮内にある図書室に連れていってほしいと、父であるヴィルシュタイン公爵におねだりをしたのだ。


 娘を溺愛するヴィルシュタイン公爵は「まだ早いです」という妻の反対を押し切って、フィルミナを王宮の図書室に連れて行った。そこでエドワルドに出会ったのだ。


 4歳のエドワルドは物心がついた時から優秀だったので、王太子として次期国王の座が約束されていた。将来国王となるべく日々王宮専属の教師につき勉強に励んでいたのである。


 図書室で教師について勉強をしているエドワルドに興味を持ったフィルミナは……いや正確には勉強の内容の本に興味を持った彼女はエドワルドの隣にちょこんと座り、ともに教師の話を聴いていた。


 慌てたヴィルシュタイン公爵は娘を椅子から抱き上げようとしたが、エドワルドに止められた。


「彼女はこの本に興味があるようです。このままで構いませんよ」


 エドワルドはフィルミナに笑顔を向けると自分から名乗る。


「僕はエドワルドだよ。君は?」


「フィルミナです」


 フィルミナは教師が開いている本をじっと見つめながら座ったままだ。教えてもらったばかりの淑女の礼は忘れて……。王族に対して不敬であるのだが、子供のことだからと教師も見逃した。


 


 それからフィルミナは度々王宮の図書室に訪れ、エドワルドとともに勉強するようになった。自分の読みたい本があると隣に座ってるだけというのが大半だったが。


 勉強が終わるとエドワルドはフィルミナをお茶に誘ったり、一緒に遊んだりした。といってもフィルミナはほとんど本から目を離さなかった。それでもエドワルドは笑顔でフィルミナを見守っていた。


 エドワルドが7歳、フィルミナが6歳の時に当然のように婚約が決まった。王太子妃候補の令嬢は他にもいたのだが、エドワルドは迷うことなくフィルミナを選んだ。



「ちょっと待て。今のくだりのどこに恋愛要素があったんだ?」


 トームスの頭上に疑問符が浮かんでいる。


 ヴィルシュタイン公爵家のお茶会に招待されたエドワルド、トームス、エレナの3人と主催のフィルミナが庭園でお茶をしながら、エドワルドとフィルミナの幼い頃の話を聴いていた。フィルミナは初めて会った時からエドワルドを慕っていたと言っていた。話を聴く限り本にしか興味がないように思うのだが?


「最初にフィーを見た時に天使が舞い降りてきたのかと思った。一目惚れというやつだな」


「わたくしも初めてお会いした時、エドは天使だと思いました(つむじが天使の輪に見えました)」


 エドワルドはフィルミナを膝の上にのせ、互いの瞳を見つめ合っている。要するに互いに一目惚れだったということだろう。


「それはそうと、人前でいちゃつくなって言ってんだろ。バカップル」


「今日はフィーを堪能するのだ。お前もいい加減慣れろ」


「今日はお茶会と言っても、いつもの4人だけですもの(適応力のない男ですわね)」


「…………」


 言い返す気力がなくなったトームスは庭園を見渡す。綺麗に手入れされたヴィルシュタイン公爵家の庭園は見事だ。今の時期はバラが大輪の花を咲かせ庭園の主役となっている。


「それにしても見事な庭園だな。いい庭師がいるんだろうな」


「肥料の改良をフィルミナ様がされたおかげで、ここの庭園では年中花が咲き誇っているのですよ」


 エレナが紅茶を飲みながら説明する。フィルミナは庭師からここは土が悪くて花が育たないと聴いて、園芸に関する本を読み漁った。痩せた土でも良質な肥料を加えれば花が育つと本に書いてあったので、フィルミナはまずは肥沃な地の土を手に入れ、似た土質の肥料を研究し改良した。結果、ヴィルシュタイン公爵家の庭園は美しいと貴族たちの間で評判だ。


「肥料の改良!? 貴族令嬢が肥料とか気にするか?」


「フィルミナ様はいい意味で規格外の令嬢なのです。他の者にはない観察眼をお持ちだからこそ王妃の素養があると認められたのです」


「未来の王妃様は今つむじに夢中だけどな」


「ところで少し話をしませんか? トームス」


「はい?」


紅茶を飲み干すと、すっと立ち上がったエレナはエドワルドとフィルミナに視線をうつす。


「エドワルド様。フィルミナ様。トームスが庭園を案内してほしいそうなので行ってまいりますわね」


「ええ。戻ったら書斎に案内するわ。おすすめの本がいっぱいあるの」


「ゆっくり回ってくると良い」


 エレナは強引にトームスを立たせるとエスコートしろと手を差し出す。訳が分からないトームスだが、エレナの手をとるとエスコートをする。


「なんでお前が案内するんだ? ここの屋敷の人間が案内するもんじゃないのか?」


「わたくしはよくここへ遊びにきますので、詳しいんですのよ」


 エレナはにこりと微笑むが目が笑っていない。「いいから黙ってついてこい」と語っている。トームスは大人しく付き従った。


(顔は可愛いのに、怖い女だ。こいつもただ者じゃないよな)

ここまでお読みいただきありがとうございました(*^▽^*)



今週末は少しまとめて投稿する予定です。よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ