表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TRUE.〜焼かれた僕と、喰われた少女と、怪奇探偵〜  作者: 夕招かるま
一、始まりは炎
22/32

022

 ここは、何処だろう。

 水中に、いるような、感覚。

 目を瞑ったまま、確認する。

 僕は──確か鬼火と──


 ──なにやってんだ、おまえ──

 突然、声が聞こえた。


 その言葉は、僕に向けられたものではなかった。

 二人の子供が──いや、子鬼がいる。

 人で言うなら、小学生、くらいだろうか。

 遥真と……城崎……。

 これは──鬼火の──城崎の記憶、だろうか?


「わたし、みんなと、あそべないから……」

 膝を抱えるようにして座り込む城崎の目線の先に、何人かの子鬼が、和気藹々としている。

「あぁ、そっか。お前がよわい鬼か」

「……そうだよ。……それに、わたしのそばにいると、よわくなっちゃうんだって」

「なんだそれ?」

「……知らないよ。周りの子が、そう言うんだから……」


 城崎は、生まれつき、力が弱かった──そう聞いた。

 角の出せない、鬼。

 角が出せなくても、鬼の子ならば、鬼。

 それ故に、それは──差別へと直結する。

 虐めへと、発展する。

 村長の子供だなどと、子供には、分からないだろう。

 酷く──こう言うと、皮肉っぽいが──人間臭かった。


「ふぅん?そっか」

 そう言って、遥真は、城崎の側に座り込んだ。

「……何、してるの?よわくなるって……」

「お前がどれだけほかのヤツをよわくしようが、オレにはカンケーない!だって、オレはつええからな!」

 ……何も変わらないんだな、アイツは。

 本当に、羨ましい。

「──そう」

「なぁおまえ、いつもなに読んでんだ?」

 城崎の、抱えてる本を指差して、遥真は言った。

「……なんで知ってるの?」

「ん?こんな狭い村で、いつも一人で居たら、目立ってしょうがないし。それで、なんの本なんだ?」

 遥真が本へと伸ばした手から逃げるように、城崎は少し離れ、口を開く。

「……妖怪についての、本……」

「妖怪?そんなの読んで、どうするんだ?」

「……例えば、これ。ザントマン。ここから遠いところの妖怪なんだけど、この妖怪のすなを目に入れると、ねむっちゃうんだって」

 ザントマンの──砂。

 ここでその言葉が聞けるとは思ってなかった。

 遥真が知ってたのは、幼い頃に聞いていたから、だったのかもしれない。

「へー……そんなのがいんのか。おまえものしりだな」

「っ……やることがないだけ……というか、もう帰って」

「え?なんでだよ、もう少し話聞かせろよー!」

「帰って!」

 ずっと小さな声で話していた、城崎が突然大声を出したことに、遥真は目を丸くし、少し虫の居所が悪そうな顔を浮かべた。

「……分かった。でも、また明日来るからな!もっと面白い妖怪のこと調べとけよ!またな!」

「え、ちょっ、待って……いないし……はぁ……」

 城崎は、俯いて、黙り込んだ。

 ──先程、見たばかりだな、この体勢。

「ひさしぶりに、とうさま以外と、話したなぁ……名前ぐらい、聞けばよかった」

 その少女は、ほんのりと赤く染まった頬を手で抑えてから、そそくさと自らの家へと帰っていった。


 そして、時は飛び、少し、大人になった二人。


「ねぇ、遥真──学校楽しい?」

「そう、ですね。まぁ、頑張ってる──ますよ」

「……二人だけなんだし、別にいいんじゃないの?」

「あー……そうかもしれねェけど……でもなぁ……このまんまじゃ、鬼族として、何より、次期村長の旦那としてなぁ……」

「頑張ってるね、ア・ナ・タ」

「や、やめろバカッ!?」

「あははは、ほんと、面白いなぁ遥真は」

 先程とは打って変わり、楽しそうに笑うようになった城崎。

 きっと、あの後も遥真は城崎に話をしに行き、虐める鬼達から城崎を守り抜いたのだろう。

 ──葵の時と、よく似ているから、そうであると分かる。

「ったく……バカにしやがって……」

「……それで最近──日向くんと、神宮寺さんと、どう?」

 僕は、元より、城崎は学校に興味などなかったのではないかと考えた。

 城崎が学校へと来た大きな理由は、僕らなのだ。

「あ?──まァ、相変わらず、仲良くやってるよ。蓮とは良く遊ぶし、葵にはよく勉強の面倒みてもらってるし……ま、何も変わらないわな」

「──そっか」

 そう言った城崎の背後に、黒い靄のようなものが見えた。

 あれは──殺意の種、のようなものだろうか。

 いや、これは殺意というより──嫉妬?

 僕を、僕らを、妬んだのか?

 城崎が知らない、遥真を知る僕らを?


 鬼が、人を、恨んだ。

 鬼が、人を、殺したがった。

 鬼が、人を──妬んだ。


「蓮、聞こえる?」

「──こんなの見せて、どうするんだ?」

 美那の声で、鬼火が語りかけてきた。

「私が蓮に霊纏出来るようになるには、蓮が、私を知ってもらうしかないから……此処は蓮の精神世界。時間も現実世界とは異なるから……もう少し……」

「でも、こんなの……」


 こんなのを見た後、僕はどうすればいいんだ……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ