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TRUE.〜焼かれた僕と、喰われた少女と、怪奇探偵〜  作者: 夕招かるま
一、始まりは炎
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002

 僕は灼熱地獄後の二度目の目覚め(この場合、目覚めと言っていいのだろうか)を迎えた。


 普段であれば、二度目の目覚め、つまるところ二度寝からの覚醒、とも言えるわけだが、それは本来とても心地良いものである、筈だ。


 こんな状況でなければ、だが。


 目が醒めると、先程と同じ、玄関の前だった。

 夢オチというやつに期待してたんだけどなぁ……

 これが現実らしい。 どこかふわふわとした感覚の中、寝転んだまま部屋を見やる。やはり僕を焼いた存在は見当たらないし、部屋が荒らされたような形跡も、これといって侵入してきたような痕跡もないように見える。


 しかし、何かが違う。何かが、先程とは。


 すぐに分かった。嫌でも分かってしまった。


 ()()のだ。

 僕が、そこにあった僕の焼死体が、無くなっていた。


 ここで、再び、夢であったのでは無いか、という考えが浮上する。


 そうだ。きっと夢を見ていたのだ。

 きっと、ゆめうつつのまま身だしなみを整え、制服を着て、ゴミを持って、玄関の鍵を開けて、さぁ行こう!というタイミングでそのまま、寝てしまったんだな。なんだか今までに経験したことがない程にすっごく痛かったけど焦げ焦げな僕も何もないんだからきっと──


 ──いやそんな事はないだろう。


 流石に分かる。そんな事が有り得ない、なんてこと。


 認めたくないけど。

 ……いや、でも、そもそも、人体自然発火現象、なんてことが有り得ないじゃないか。


 ならきっと、そんな有り得ないことが有り得るって事も有り得る──うん、『有り得』ばかりで変になりそう。

 それに、これが俗に言う魂だけの姿なのだとしたら目覚めるも何もないだろう。成仏とやらはそんなに時間がかかるものなのだろうか。


 そんなことを考えていた。


 そんな時だった。


 突然に、玄関のドアが開いた。

「──え?」

 確かに、ゴミ捨ての為に鍵を開けたような気もするけれど、この家(といってもボロのアパートの一室だが)は僕だけの一人暮らしだし、何より、インターフォンも鳴らさずに不躾に部屋に入ってくるような友人はそういないはずだ。


 目をやると、ドアの向こうには、三人の黒い服装(といっても全員デザインもバラバラなカジュアルな服を着てる)に身を包んだ人達が立っていた。


 一人は長身で、金髪が目にかかる程伸ばし、外の暖かな気温に反するかのような厚手のジャケットを着た男。もう一人の男は少し背が低く、赤髪で、少し毳毳しい、平たくいえばチャラついているような印象で、最後の一人は胸と肌を大きく露出した服(ベアトップ、と言った気がする)を着た桃色髪の女だった。


 勿論、僕はそんな知り合いに心覚えなどない。


「……あ、あの、すみません、どなた……ですか?」

 足腰に力を入れて意を決して声をかけた。情けない、ふにゃふにゃとしたものではあったけれど、一応、今の現状がなんであれ、声は出る、らしい。


 しかし、そんな僕の声を意にも介さず、さも当然のように、僕の部屋へとずかずかと入ってきた。



 ──ゾクリ、悪寒がした。

 


 この人達には、僕が認識できていないのでは、僕の声が届いていないのではないか。

そう、思ってしまった。


 そんなわけがない。


「ちょ、ちょっと!ここ他人の家ですよ?なんか、もっとこう、態度だったり、あるんじゃないですか?」


 僕は死んでなんかない。

 

「と、というか、あなた達なんなんですか?警察?僕は何もしてないですよ?」


 ただ、少し、ほんの少しだけでもいい。


 聞こえているのなら、無視をしないでほしい。


「なんでも

 僕の声が聞こえて欲しい。

 僕を認識して欲しい。

 そこにいるんだと。死んでいないのだと。

 確認させてほしい。


「だから、こっちを見てください」


 頼む。


「ほら、そこの背の高い金髪の人。こっち

 を……見てくれよ……」


 頼む。


 お願いだから。


「僕を、見てくれ」




「──ふ、ふふ……あははっ、ははは」

 ふいに、黒服三人組の一人が、桃色の髪を揺らしながら笑った。


 その女の目線の先には、僕がいた。

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