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罰ゲームは絶対

 更新空いてすいませんでした。今日からまた毎日投稿に戻したいと思います。出来れば毎日2話……。

「普通にトランプしても面白くねぇし、罰ゲームでも付けようぜ。そうだな……今から10戦して、最下位の回数が1番多いやつは1位の回数が1番多いやつの命令に絶対服従とかどうだ?」

「面白そうだね。いいよ、それでやろう」

「我輩もそれで構わないであります!」


 お、なかなかノリがいいな。だがその言葉、後悔することになるぞ?


「じゃあまずは定番のババ抜きから行くか」

「いいね、負けないよ!」

「我輩ババ抜きは得意であります!」


 モヤシくんによってカードが配られた。俺は自分の手札を確認する前に、2人の顔を観察した。


 ……なるほど、ババを持っているのはメカか。


 メカの目が一瞬一枚のカードに固定されたのを、俺は見逃さなかった。

 人を観察して、次にどう動くかを予測するのはイタズラを成功させる上で必須の技能だ。幼い頃からイタズラをし続けてきた俺にとって、ババを見抜く程度は容易いことだった。


 勝負の勝ちはほぼ決まったようなものなので、俺は雑談に興じながらババ抜きをすることにした。


「そういえばさ、スキルのレベルが上がったらスキルが強化されるのはわかったんだが、ジョブのレベルが上がるとどうなるんだ?」


 水晶で見た時には、ジョブレベルについては触れていなかったから気になっていたんだ。


 おっと、右がババだな。よし、1組揃った。


「あがると必ずってわけじゃないけど、新しいスキルが使えるようになるんだ。あ、でも使えるようになった実感はないから、こまめにチェックした方がいいよ」

「チェック? あの水晶でか?」


 あんな大事そうなもの、そう気軽に使えないと思うんだが。


 む、モヤシくんの手札が少なくなってきてるな。ならば、ババを渡すか。メカからわざとババを引いて、モヤシくんがババを引くように誘導……よし、成功っ。


「鑑定石で見た後なら、個人で見ることが出来るでやんす。ステータスと唱えるだけでやんす」

「まじか、お手軽だな。じゃ、試してみるか。『ステータス』」



 ◇◇◇◇◇◇


 ジョブ 悪戯師(レベル2)


『レベルアップ:イタズラにより生まれた感情によってレベルアップ』


 スキル タライ召喚(レベル3)


『効果:タライを召喚する。召喚できる場所は使用者から半径5メートル以内かつ、高度は使用者から2メートル以内。また、タライは30秒で消滅する(任意で消滅させることも出来る)。レベルアップによって延長』

『クールタイム:無し』

『レベルアップ:タライ召喚により生まれた感情によりレベルアップ』


 スキル イタズラボックス(レベル1)


『効果:イタズラに使うアイテムを召喚する。召喚したアイテムはイタズラにしか使えない。また、召喚できるものには制限がある(レベルアップによって緩和)』

『クールタイム:無し』

『レベルアップ:召喚したアイテムを使った行動により生まれた感情によりレベルアップ』



 ◇◇◇◇◇◇


「おぉ、ジョブレベルが1つ、スキルレベルが2つ上がってるな。新しいスキルも使えるみたいだ」


 またもや素晴らしすぎるスキルが手に入ったな。イタズラの小道具が簡単に手に入るってことだろ?


「えっ、ジョブレベルって1日で上がるものじゃ無いはずなんだけど……」

「凄いでありますな! あ、そういえばコタロウのジョブはなんなのでありま――」

「よし! 上がりだ!」


 ふぅ、ちゃんと勝てたな。残るはモヤシくんとメカの一騎打ちだ。


 最終的には、1位俺、2位メカ、3位モヤシくんとなった。


「くっ、次は神経衰弱で勝負だ! これでも僕は記憶力には自信があるんだよ」

「ふははははは! 受けて立とうじゃないか! 何度やっても勝つのは俺だがな!」

「我輩も負けないでありますよ!」


 盛り上がってきたな! 確かに神経衰弱なら記憶力だけの勝負になり、俺の観察眼もほぼ無意味になるだろう。


 ルールはオーソドックスな、数字が揃えばカードを取れるというものだった。


 勝負は中盤まで進み、残ったカードの5割ほどが既にめくられている。まさに一番記憶力が試される場面だ。


 ――仕掛けるならここだな。


 俺はカードを1枚めくる。スペードの3だ。3はさっきペアができたところで、もう1枚の3はまだめくられていない。

 だが、俺は2人の顔を見て不敵に笑った。


「ふはははは、見える、見えるぞ! もう1枚の3はここだぁ!!!」


 俺は右手を高く掲げると、叩きつけるようにして中央のカードをめくった。


 そのカードに描かれていた数字は――――クイーンだった。


「ぷっ! 何が見えるだよ、盛大に間違えてるじゃないか」

「コタロウ、それはちょっと恥ずかしいであります」

「ば、馬鹿な……!」


 この俺の心眼が間違っていただと……!? 


 ……なんてな。これはあくまでも注意をそらすための演技だ。とある仕込みをするためのな。


「さてと、次は我輩の番でありますな。えーと、1枚目は……お、5でありますか。これはさっき出たであります。確か、このカードだったはず!」


 メカは自信満々に俺の近くにあるカードをめくった。だが、現れたのは7だった。


「あれ? おかしいであります……確かにここだったはずなのに……」

「残念だったね。じゃあ次は僕の番だ。おっ、4か。これは覚えてるよ。そこのカードだ」


 モヤシくんは迷いなく俺の近くのカードを手に取った。しかし、それは4のカードではなく、キングのカードだった。


「あれ? そんなはずは……それに、このクローバーのキングはこっちだったような……?」


 戸惑っているモヤシくんを無視し、俺はさっきメカが引いた5を揃え、次にモヤシくんが引いた4を揃えた。


「ふっ、2人とも、記憶力でも俺に及ばないようだな!」

「なんでクローバーのキングがあった場所に4が……?」


 俺の挑発を気にもとめず、モヤシくんは顎に手を当てて考え込んでいる。……これは流石にバレたか。


「もしかして! コタロウ! 君、カードを入れ替えたね!」

「ご明察! さっき2人が目を逸らした隙に左手でちょこちょこっとな」

「なっ、卑怯でありますよ!」

「なんとで言うがいいさ! どんな手を使っても、勝てばよかろうなのだぁ!」


 神経衰弱のルールに、カードの移動禁止なんてものは存在しないからな! ルール違反じゃないんだぜ!


「……コタロウ、次やったら問答無用でお仕置きだからね」

「は、はいっ! 二度と致しません!」


 やべぇ、また光の消えた目だった……。モヤシくんを怒らせるのはホントに怖ぇよ。今度は何されるか……。


 勝負はカードをシャッフルして再開されたが、またもや1位は俺だった。……2人からは凄いジト目で睨まれたけど。


 その後も七並べ、革命、ブラックジャックや変則的な3人スピードなんかを行い、10戦が終わった。


 結果は、俺が全勝、メカが最下位5回、モヤシくんも最下位5回となった。


「っしゃあ! 俺の勝ちだな! 2人とも俺の言うことを聞いてもらおうか!」

「くっ、コタロウ、トランプ強すぎだよ……」

「最下位が同数とは、これまたコタロウに都合のいい結果になったでありますな……」


 そう、最下位の回数は同数なため、2人ともが罰ゲームを受けなくてはならない。俺にとっては最高の結果だが、これは偶然ではない。こうなるように俺が誘導したのだ。

 なるべく運が絡むゲームを避け、負ける回数が同じになるように立ち回るのはかなり骨が折れたが、これからすることには必要不可欠だからな。


「それで、命令って何をするつもり?」

「あんまり無茶なことだと、無理でありますよ?」

「なに、大したことじゃねぇよ」


 俺は立ち上がって深く息を吸い込むと、手を大きく広げた。


「女子寮に忍び込む手伝いをして欲しい!」

「ロボト、コタロウを抑えといて。寮長呼んでくるから」

「了解であります!」


 モヤシくんはそそくさと部屋から出ていこうとし、メカは何やら怪しげな道具を取り出した。


「待て待て待て待て、まずは俺の話を聞いてくれ!」

「何? 言っとくけど、僕は犯罪の幇助をするつもりは無いよ」

「我輩もであります」


 くっ、コイツら、ゴミを見るような目しやがって! 仮にもルームメイトで、男同士の熱い戦いをしたばっかりじゃないか!


「異世界からの訪問者が俺だけじゃなくて、もう1人いるのは多分聞いてるだろ?」

「あぁ、聞いてるよ。確か僕達と同じ年の女の子だったよね」

「そうだ。見知らぬ場所に女の子が1人放り出されてみろ。物凄く不安になるはずだ。だから俺は後で会いに行くって約束したんだよ。幼馴染みだしな」


 召喚されてすぐはかなり取り乱していた。その後多少は落ち着いたみたいだが、まだまだ心配だ。知り合いが誰一人いない土地に連れてこられ、なおかつ二度と戻れないと言われたのだ。

 精神的ショックは並大抵のものではないはず。1人にしておくのはあまりにも不安だ。


「だが、聞けば女子寮は男子禁制らしいじゃないか。だから、忍び込むしかないんだ」


 俺は真剣な目で2人に深く頭を下げた。俺は頭を下げたまま、地面を見て続けた。


「頼む。力を貸してくれ。あいつ一人じゃ心配なんだ」


 2人はしばらく無言だった。俺はその間も頭を下げ続けた。女子寮に忍び込むのは、俺一人ではまず不可能だ。なにせ情報が足りなさすぎる。

 この2人の協力が絶対に必要だ。


「……はぁ、そういう事情なら仕方ないね」

「そうでありますな。それに、絶対服従、でありますからな!」

「ははは、そうだった。うん、罰ゲームだもんね」

「2人とも……恩に着るぜ!」


 俺は目元を乱暴に拭い、覚えたばかりのスキルを使った。


「じゃあ、モヤシくんはこれを着てくれ!」


 そう言って手渡したのは、スキルで召喚した女性物のワンピースだ。ウィッグに化粧品のおまけ付き。

 まぁ、要するに、女装グッズだ(・・・・・・)


「な、何を言ってるんだ!?」

「いやな、忍び込むったって、壁をよじ登るわけにもいかねぇし、玄関にはあの魔道具がある。だったら、正面から堂々と行くしかねぇだろ? じゃあ女装するしかない」


 モヤシくんなら、華奢だし色は細いし、しっかり女装すれば早々バレないはずだ。


「その発想はおかしいと思うな! 僕!」

「心配するなって、俺も女装するから」

「だったら君一人でやればいいだろ!?」

「一人で侵入するより、二人いた方が怪しまれにくいんだよ」


 見知らぬ少女が一人歩いているよりも、見知らぬ少女が2人で楽しそうに話している方が怪しまれにくいはず……というのは建前で、モヤシくんに女装をさせてみたいんだ。


「手伝ってくれるって、言ったよな? 言質はとってるんだぞ?」

「………………わかったよ! やればいいんだろ! やれば!」


 吹っ切れてくれたようで何よりだ。さて、モヤシくんの化粧をしながら作戦会議と行こうか。

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