1-2 成長しました
気がつくと日が沈んで暗くなっていた。どうやら私は長い間眠っていたようだ。現状を把握しようと周りに意識を集中させると、少し離れたところに家の光が見えた。家の数が少なく畑が多いようなので、どうやらここは村の近くにあるらしい。
それにしても、私の記憶と成長した時の高さがちがう気がする。眠っている間にまた成長したのだろうか?それに上からピンク色の花びらが時折落ちてくる。
(あれ?私って最初草じゃなかったっけ?それから苗木になって、この花びらって桜だよね?)
少々混乱しているみたいだ。眠っている間に苗木からそれなりに立派な木にすぐに成長するわけがない。しかし、どれくらい眠っていたかもわからないから否定もできない。
(でも、草の状態から急に成長もしてたから大して時間が経ってない可能性もあるか)
だけど、よくよく考えたらどれくらい時間が経っていようが特に影響がないことに気がついた。この世界に生まれて仲良くなった人や植物もいないし、そもそも動けないし。
(それにしても桜かー。お花見は大好きだったけど、自分が見られる側になるのはなー)
元々人前に出ることがそんなになかったので見られることに慣れていない。それなのに、桜みたいな注目されるような木は、嫌ではないが好ましくない。
(それ以前に木である時点で嫌なんだよなー。どうにか動けないかなー。急に成長することだってできたんだから人型になるくらいできないかなー)
そんなバカなことを考えた私は一生懸命イメージしてみた。けれど結果は失敗に終わり気がつけば東の空からお日様が昇ってくるところだった。
(うわー。太陽が凄く気持ちいい〜。日光浴がこんなに素晴らしいなんて。これは花が陽の光をできるだけ浴びようとするのもわかるわー)
そんな風に日光浴を楽しんでいると村の方から人が集まってこちらにくるのを感じた。村の人たちは何やら困惑した顔をして近づいてきた。その中の強面の三十代くらいのオジさんが私の体に触れて呟いた。
「昨日まで、こんな綺麗な木なかったよな?誰が植えたんだ?」
その男の声に周りの人たちはみんな自分じゃないと言い出していた。
(なるほど。私がこんなに成長するのにまさかだったの一晩だったとは。それはみんな困惑するは)
そんな他人事みたいに聞いてた私だったけど次の言葉には反応せざるを得なかった。
「こんな不気味な木切って燃やさないか?この木が原因で魔物がやってくるかもしれないだろ?」
(ちょちょちょ!待って待って!!ウェイト!ブリーズジャストアモーメント!!!寿命1日で死んじゃうとか嫌だよ!そんな短い人生私望まないよ!?木だから人生じゃなくて木生かもしれないけど!)
そんな私の焦りが通じたのかそれともいきなり木が揺れ出したのが不気味に思ったのか、村人たちは一旦戻って話し合うことにしたようだ。
(まずい、マズイ、拙い。このままでは殺されてしまう。せめて動けるようにならなければ)
その日は1日中いろんなことを試したが、結局動けるようにはできなかった。