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こうこうせい。  作者: 理衣田
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4

桃色に色づいていた旧月高校の裏山も緑色に色を変え、このヤンキー校でもとりあえず、いじめられる心配がなくなる程度には友人関係も作り上げることが出来き、一安心した頃。


パァーン


グラウンドに鳴り響くスターターピストル。面倒な体育の時間だ。8組と合同でやる体育は、男臭半端無く、直ぐにでも逃げ出したい。グラウンドの端に体育座りしたまま空を見上げると、清々しいほどの青空。


「なーに空見上げて黄昏てんだよ。ほら、もう直ぐ俺たちが走る順番だぞ!」


グッ!そう音が聞こえそうな位の力で後ろから肩を掴まれた。えっ?ちょっ、万力で締め付けられたような痛みがあるんですけどぉ!


「痛ててててっ!離せ、離せって!勇、コラ!肩もげる!」


「相変わらず貧弱だな!そんなんじゃディ○を倒せないぞ!」


ニヤニヤと笑いながら俺の肩を離す筋肉馬鹿。こいつは町下勇。入学直後の体力テストで、握力90㎏を出したホンマもんの筋肉馬鹿だ。ちなみに脳みそまで筋肉だ。今も解りづらくジョ○ョのキャラ出してきやがる。俺はジョジ○読んだこと無いって言ってるだろ!


「お前から見たら、多分世間一般の大半が貧弱だよ。つーか、俺はデリケートなの!繊細なの!筋肉馬鹿に掴まれたら、潰れるの!解れ脳筋馬鹿!」


「ほほぅ!この俺にまだそんな口調で面と向かって言えるのは海田と龍、後はナヨ位しかいないなぁ。その辺は割りと好感持てるんだが…流石に脳筋呼ばわりされると、俺の熱いハートと筋肉が海田を潰せと叫びだすなぁ!」


再度肩を掴んできやがった!だから脳筋だって言われるのが解んねぇーのか!つーか、痛てーんだよ、このアホ!


「解りました町下さん、止めて下さい。もう逆らいませんし、近づきませんので。」


「いや、ごめん。やりすぎた。謝るからその口調止めてくれ!」


この筋肉馬鹿は中学の頃、色々と横暴な態度と筋肉に物を言わせてやりたい放題していた様で、友達がいなかったらしい。だから敢えて俺やナヨが敬語で喋ると、すぐに心が折れる。頑丈なのは身体だけか!精神も鍛えないとは空手3段が泣くぞ!


「ったく!お前とナヨは扱いづらい!直ぐに俺の良心に訴えかけて来るような事を言いやがる!」


「そのナヨは今日は来てないみたいだが?勇は何か聞いてるのか?」


「いや、知らね。そろそろアイツも学校来るのタルくなったんじゃね?」


まっ、アイツもヤンキー性はまだまだあるからな。まじめに登校してきてた今までが珍しいか。あの後も朝美ちゃんと連絡は取り合ってるようだけど、前回の件がある所為かお互いに遊びに行こうって話しにはならないって言ってたな。まっ、時間が解決するだろ。ナヨが他の女の子をナンパしてさえいなければな。多分、ナンパしてるけど。


「そういえば海田、3組の高橋さんと同じ中学なんだって?高橋さん紹介してくれよ。」


「脈略なく何言ってんだこの筋肉馬鹿は。3組の高橋?高橋真夏の事か?同じ中学だけど、殆どつながり無いから紹介できないぞ。」


「…3組の知り合いから聞いたけど、高橋さんの口からは結構海田の名前が出てるらしいぞ。」


真夏ちゃんが俺の話をしてる?なんで?俺なんか入学式の時くらいしかつながり無かっただろうが。


「高橋さん、俺のどんな話してるんだ?本当に中学の頃は高橋さんと喋った事もなかったぞ?」


「そんなに詳しくは聞いてないけど、海田の幼馴染にコーヒーの空家の社長の息子がいるとか。そんな海田からも聞いたような話だね。」


空家の社長の息子は確かに幼馴染だ。空家金平といって、今は星光高校っていう偏差値70以上の奴等が行く男子高に通ってる。


「それは俺の話じゃなく金平の話をしてるんだろうが。それにこの前金平にあった時に聞いたけど、高橋さんと金平は中学の3年間同じクラスだったらしいし。」


「そーか。そう言われればそうだよな。旧月1年可愛い子トップ3に入る子が海田の話なんかするわけ無いよな。特に海田は中学の頃は女子に嫌われてたらしいし。」


「男子にも嫌われてた勇に言われたくないけどな。」


「ぐっ!そういう事言うなよな。」


ぐっって…現実で言う奴いたんだな。ラピュタが本当にあった時並みの衝撃だわ!さすがオタク筋肉馬鹿。略してオキバ。アキバみたいでいいな!前述でもあるように、勇はジョジ○等のネタでボケてくる奴だ。結構なオタクで、特にゲームに欠ける情熱は凄い。ドラ○エやF○が発売したら、発売日から3日は学校に登校してこない。そして登校してきた時の一言目が必ず他のゲーマー達に向って、


「お前等まだクリアしてないのか?俺は昨日クリアしたぞ!遅いな!」


と嫌らしい笑顔で言ってくる。基本的に負けず嫌いなのだが、なんと言うか、間違った方向性の負けず嫌いなんだ。


「次!海田!町下!」


「ほら海田、俺等の番だぜ。」


勇に促され、スタートラインに付く。クラウチングスタートの格好でスターターピストルを待つ。どうでもいいけど、クラウチングスタートとウンチングスタイルってちょっと似てるよね!


パァーン


勇と一斉に走り出す。徐々に勇が俺の前に出て行く。このオキバ、中学の頃は陸上部でかなり速かったらしいが…マジで速ぇ!


「町下、11.9!海田13.4!」


何だよ、100mで11秒台ってありえなくね?お前もう一度陸上部入れよ。


「海田遅せぇな!」


でたよ、この嫌らしい笑顔。だから中学の時に友達できなかったんだぞ!


「俺はお前みたいに陸上部でもなんでもなかったんだ。帰宅部で13秒台ならぜんぜん問題ねぇだろ。」


「まっ、コレに懲りたら…」


「はい、町下さん。これからは敬語でお話させていただきますね!」


「本当にやめてくれ。調子に乗った俺が悪かったから。」


まっ、体育の授業もそろそろ終わりだし、オキバいじりもこんなもんにしておいてやるか!


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