1
異世界からのお呼ばれも当たり前になく、ビクビクしながら通い始めた学校も、1ヶ月も通えば慣れるもので…。ある週末の朝の事。
「なぁ海田さ、今日暇?この前街でナンパした女がさ、女友達と二人で居るから会おうって言ってきてるわけよ。で、海田も一緒にどうかなと思ってよ!脱童貞を目指してる同士として、チャンスは平等にあるべきだからよ!おこぼれをやろうかとな!」
この盛った猫みたいな男は名寄。あだ名はナヨ。普通に見た目はさわやかイケメンなんだが、ヤンキー思考が強く中学の頃も暴れており、ヤンキー界では有名人なんだが普通に接してる分にはいい奴である。
「マジでか!でも、ナヨ、ルックスはどうなんだ?ドラム缶で脱童貞はしたくないぞ、俺。」
「まかせろ、この前一緒にプリクラ撮ってきたから見てみ!まぁまぁの奴だろ?」
「うん。確かにレベルの高い容姿の子だね。この左の子はね。右の子これはなに?ドラ○もん?ナヨさ、さっきも言ったように俺はドラム缶は…」
「俺がこんなのに声掛けるか!大丈夫、大丈夫。この左の子がナンパした子。勿論、今日つれてくる子は右の子じゃない。」
「俺とナヨは女の好みが近いぞ。同じ子を狙うことになったらどうするんだ?」
「その時は諦めてくれな!」
「ざけんな!」
「じゃ、来ないのか?」
「…行くけど。」
「なら文句言うな。同じ子狙いになってもその時に考えればいいだろ。」
「…だな。」
「じゃ、放課後な!」
ちっ。ナヨの奴、俺よりルックスがいいのが自分で解ってるから敢えて俺を選んだな。イケメン爆ぜろ!男は顔じゃないよ、性○だよ!そこの君、この○の中に何の文字を入れたかな(笑)
自分の席に戻って行くナヨを半眼で見た後、何気なくクラス全体を見てみる。日を追う毎に出席者が少なくなっていくな。まだ入学からたかが1ヶ月で、全体の5分の1は休んでるぞ。この中の何人が本当の病欠なんだろうな。まっ、ナヨみたいにヤンキーしてますが、特に逆鱗に触れなければ大人しく学校に来ますよって奴も少なくは無いみたいだけどね。
おっと、1限目の社会科の教師、海原がきやがったか。コイツ、この学校の教師4天王って呼ばれてるから、ヤンキーも海原には逆らわないんだよな。この前の授業は謎に女を守りながら喧嘩するのは、守りきることが難しいから先に女を逃がせとか言ってたけどな。社会科と関係なくね?
「ほー、このクラスの生徒はもうこんなに休んでるのか。今夜あたりは街に巡回に行かないとダメかねぇ。それはそれとて、授業始めるぞ。日直、号令!」
海原の授業は話が脱線するから、授業外の話は聞いてて面白かったりする。だけど、まともな授業は面白くないし、寝てたら普通に殴られるし。
「…おい、日直は?号令しろ。誰だ?野柿か。野柿、号令しろ!」
「えっ?俺?何で?」
「何でって、お前が日直だろう。何故号令しない?」
「はぁ?俺が日直だけど、何でお前の言うことを聞かないといけないんだ?」
「ほう。」
ありゃ。野柿の御調子者、また意気がってるよ。アイツ、海原がこの学校でなんて呼ばれているか知らないのか?まっ、助けてやる義理もないから見守ってるけど。
「もういい。野柿、授業終わったら職員室に来い。来ないって手は取れないからな。俺と一緒に職員室に行くから。昨日日直したのは…西野、号令してくれ。」
「えっ、えっ?ちょっと待って、すみませんごめんなさい俺が日直です俺がやります起立。」
「野柿。やるなら最初からやるべきだったな。でも今はもうお前には号令頼んでないんだわ。お前は授業の後に職員室へ俺と一緒に行けばいいだけだ。楽しみだな。じゃあもう一度西野、号令。」
「起立。」
西野の号令で全員が立ち上がる。野柿は既に泣きそうになってる。バカな奴だよ。もうこのクラスの全員が野柿はただの調子に乗りたがりだと解っている。勿論、教師の海原も。野柿は体が小さい。身長も150cm程度しかない。この学校に入ってしまったせいなのか、とりあえず口先で戦おうとする。相手も考えずに。解りやすく言うとただのバカ。
まっ、本気で不良出来るなら今日休んでる奴等とツルんで、学校サボってどっかに遊びに行ってるはずだ。そんなこんなで、授業終了後に野柿は海原に連れられて職員室に消えていった。