結界の仕組み
討伐班が村を出て一時間経った
「・・・・・ふぅ」
俺は辺りを見回しながら溜め息を吐く
夜になったからか辺りは真っ暗だ
「皆大丈夫か?・・・」
討伐班の様子が気になる、一応怪我をした人は教会に来てステラさんの治療を受けているが
「・・・・暇だ」
ウルフも賊も現れないからやることがない・・・かといって油断はできないから辺りを警戒している
「カケルさん?大丈夫ですか?」
教会からステラさんが出てきた
「今のところ異常なしです」
俺は振り返りながら答える
「そうですか、それなら良かったです」
ステラさんが俺の隣に立つ
「・・・あの、ステラさん・・」
「どうしました?」
「結界って動かせないんですか?結界石を運んで少しずつ活動範囲を動かしたらもっといい場所に行けるんじゃ?」
「・・・以前結界石の話をしましたよね?」
「はい」
「あの説明に補足しましょう、結界石はそれだけじゃ結界を作れないのです」
「そうなんですか?」
「王都の教会本部で造られる専用の台座に嵌め込むことで結界を作るんです・・・う~んわかりやすくイメージしてもらうには・・・」
ステラさんが少し考える
「う~ん、大砲の弾が有りますよね?」
「はい、有りますね」
「弾だけではあまり使えませんが大砲という道具を使えば真価を発揮しますよね?」
「結界石が弾で台座が大砲・・・台座が有るからこそ結界石は真価を発揮するって事ですね」
「上手く伝わったみたいで安心しました♪」
ステラさんが微笑む
「ついでにフーラ村の台座はあれですよ」
ステラさんが教会の十字架を指す
十字架の真ん中に少し光っている玉が有った
「あれが結界石だったんですね・・・あまり気にしてなかったです」
「あれがある限りは結界が有るから安心ですね♪」
「そうですね」
・・・・・・?
今、嫌な予感がしたんだけど・・・
ズズズ・・・
「んっ?」
「どうしました?」
「今、変な音がしませんでした?」
「音?」
ステラさんが耳を済ませる
ズズズ・・・
「聞こえますね・・・上から?」
ステラさんが上を見る
俺も上を見る
ズズズ・・・
「・・・ステラさん、十字架・・・今動きませんでした?」
「き、気のせいでは・・・」
ズズズ
パキッ!
「ないですね!!」
「ステラさん危ない!!」
俺はステラさんに飛びつく
ヒュウウ
ズン!
さっきまでステラが居たところに十字架が落ちてきた
「なんで十字架が落ちるんですか!?」
ステラさんが言う
「留め具が外れたとか?」
俺が十字架に近付く
「グルルル!」
「えっ?」
上から呻き声が聞こえた
「ウォォォォン!!」
「どわっ!?」
「ウルフ!?」
教会の屋根からウルフが1匹降りてきた
「なんでウルフが!?結界は機能してるよな!?」
「何処かから入ってきたのでしょうか?」
「そんな事有るんですか?」
「いえ、私は聞いたことないです!」
「グルルル・・・」
ウルフが十字架に近付く
そして・・・
パクッ、カチッ、ガリッ!
結界石を十字架から外した
「おいおいおい!?なんだよ!その行動!?」
「結界が!?」
ステラさんが空を見る、俺も空を見ると結界が消えていったのが見えた
「ヤバイヤバイ!おい返せ!」
俺はウルフに斧を振る
「グルルル!」
ウルフは斧を避けて走っていった
「待て!ステラさんは教会の中に!」
「カケルさんは?」
「あのウルフから結界石を取り戻します!」
このままじゃウルフが村に入ってくる!
「気を付けてくださいね!」
「ステラさんも!」
俺はウルフの走った方に走る
絶対に取り戻さないと!