勇者と魔王、そして波乱
「なんで?」
ある朝、俺はアランに聞く
「ダメったらダメっす!」
頑として譲らないアラン
「いや、俺も狩りに行くよ?薪割り終わって暇だし」
そう、俺はいつものようにアランと狩りに出るつもりだったのだが
「暫く狩りはアッシ一人でいきやす!」
っと言うのだ
「急にどうしたんだよ?少し前までは普通に一緒に行ったじゃないか?」
「前は前!今は今っす!」
「あ、おい!アラン!!」
アランは走っていってしまった
「・・・なんだっていうんだ?」
俺は家に帰ることにした
・・・・・・
「あれ?リュードさん戻ってないのか?」
家には誰もいなかった・・・
「はぁ・・・・んっ?」
俺は椅子に座るとテーブルの上にあった本が眼に入る
「『光の勇者』?」
俺は本を開く・・・どうやら昔話を書いた本らしい
「なになに・・・今から数百年前
魔王が現れた、魔王は人を殺し大地を削り、海を干上がらせた
世界の生命が『死』を覚悟したとき、光の勇者が現れた
光の勇者は人を助け、大地に恵みを与えて海を満たした
そして光の勇者は魔王と戦い、魔王を滅ぼした
こうして世界は救われ、光の勇者は皆から頼りにされたという
「・・・・・よくある勇者と魔王の話だな」
まあ、こんなファンタジーな世界では本当に有った事なんだろうな・・・一応覚えておくか
ガチャ!
「カケル!居るか!?」
家にリュードさんが飛び込んできた
「どうしたんですか?」
「今から教会に来い!大変なことになったぞ!」
「大変なこと?」
俺はリュードさんに付いていった
・・・・・・
「ふむ・・・そうか」
教会に着いたら村長がアランと話をしていた
「村長!これで全員だ!」
リュードさんが村長に言う
辺りを見るとフーラ村の村人が全員集まっていた
「な、何があったんですか?」
俺はリュードさんに聞く
「ウルフの群れだ、この村を囲んでいる」
「えっ?ウルフ?」
狼だよな?そんなに慌てることなのか?
「・・・カケルさん、状況がわかっていないみたいですね?」
困惑する俺にステラさんが話し掛ける
「えっと・・・まあ、はい」
「いいですか?フーラ村は主に狩りと農業で生計を立ててます、しかしウルフの群れに遭遇したら狩りは不可能になります」
「そんなに危険なんですか?」
「個体の危険度は少ないです、厄介なのは群れで行動すること・・・襲われたらひとたまりもありませんし」
「村の周りにいる獲物も喰われるっす!壊滅っす!!」
ステラさんの説明にアランが続ける
「ってことは村としても狩りの獲物が無くなるから・・・」
「死活問題っす!!アッシの仕事がぁ!!」
「落ち着け!」
取り乱すアランをリュードさんが落ち着かせる
「取り敢えず女性と子供と年寄りは教会の中に!」
リュードさんの指示で村人が教会の中に入っていく
「結界があるのに避難するんですか?」
「賊対策だ・・・奴等は混乱してる時に襲撃してくるからな、村人を集めて被害を少なくするんだ・・・結界は魔物にしか効かないからな」
人間の賊は結界を抜けてくると・・・
「普段は騒ぎが起これば直ぐにわかるっすけど・・・今回みたいな時はそれどころじゃないっすからね」
「成る程・・・それで今から俺達は何を?」
「カケルはこの教会を見ててくれ、俺達がウルフを討伐してくる」
「俺は留守番ですか?」
「まだお前にウルフの相手は早い、ここで待ってろ」
「わかりました・・・」
「一応斧は持ってるんだぞ?」
リュードさんから斧を渡される
「わかりました!」
俺は斧を受け取って皆を見送った