伝えるべき事
ーーーカケル視点ーーー
遺跡の火が燃え尽きるのを少し離れた場所で待つ
俺が遺跡にいる間にシルバとリーフは仲良くなったみたいだ
ねえちゃんとか呼んでるし
「かなり仲良くなってるな?」
「うん!ねえちゃんといっぱい話した!」
シルバが元気良く答える
「カケルさん、この子は?」
ルナがシルバの頭を撫でながらきいてくる
「コイツはシルバと言って、俺の弟だ」
俺はシルバを抱き上げる
「シルバです!」
シルバが手を挙げて挨拶をする
「初めまして、僕はルナと言います」
パチッ
ルナはシルバの挙げられた手にハイタッチをする
「ルナちゃんだね!!」
にいちゃんみたいな呼び方をするな……
これから知り合いが増えたら何々(なになに)ちゃんって呼ぶ気か?
「カケル、もう大丈夫なの?」
リーフが遺跡を見ながら聞いてくる
「正直わからん……花粉が止まってるから倒せたと思いたいが……」
核を破壊できたかはわからないんだよな……
「火が消えたら確認しますか?」
ルナが言う
「そうだな……」
俺はルナを見る
そしてリーフとシルバを見る
「……リーフ」
「なに?」
「シルバと一緒に村に戻っててくれないか?」
「えっ?」
「にいちゃん?」
「カケルさん?」
三人が俺を見る
「もうすぐ夜だからな、リーフは村の皆にこの事を報告してほしい、シルバは宿でご飯を食べてから休むこと」
「でも……」
リーフが俺を見る
「頼む……」
「……わかった」
リーフは察してくれたようだ
「ねえちゃん?」
リーフはシルバを俺から受けとる
「シルバ君、二人は大丈夫だから戻ろうね?美味しいご飯を作るから!」
「でも……にいちゃん……」
「俺達も確認したら戻るから、良い子にしてるんだぞ?」
俺はシルバの頭を撫でる
「んっ……わかった!」
「よし!」
グシャグシャ!っと力いっぱいシルバの頭を撫でる
二人が村に戻るのを俺とルナは見送った
さてと…………ルナに何て言うかな……
サナ、メア、メリー……三人の死を伝えないといけない……
ザワッ
胸の奥で何かが動く
これは不安感か……
ルナに伝えたらどんな反応をするのか
軽蔑か
罵倒か
「…………」
そう考えたら言うのを戸惑ってしまう……
あぁ、俺……ルナに嫌われるのが怖いんだな
ルナだけじゃない……リーフやシルバ……誰かに嫌われるかもしれないって事が怖いんだな
だがルナには絶対に伝えないといけない……
三人の最後の言葉を!!
『あの!/ルナ!』
俺とルナの声が重なった
『…………』
同時に黙る
「カケルさんからどうぞ……」
「いや、ルナから先に……」
…………
「あの、そこの森に川が有るんですよ……鎮火するまでまだ時間がかかりそうですし……そこで少し休みませんか?」
「……そうだな」
思えばルナと合流した直後に少しだけ休んだだけだ
身体はヘトヘト……油断したら倒れそうだ
俺とルナは森に入る
・・・・・・・
川が見えた、周りの木には花粉がこびりついている
「よっ!どうぞ」
ルナが水の魔法で丸太の花粉を落とす
他にも何かしたのか洗われた丸太は既に乾いていた
「わるいな……」
俺とルナは並んで丸太に座る
座って気付く……足が痛い……明日は筋肉痛かもな……
「カケルさん……」
「んっ?」
俺が脹ら脛を揉んでいたらルナが声をかけてきた
「…………」
ルナは迷っている表情だ……思案して……思案して……覚悟を決めた顔をして
俺に言った
「僕の覚悟は出来ています……だから本当の事を言ってください」
…………
「何の事だ?」
一応聞いてみる
「サナ達の事です」
声が若干震えている
しかし目はしっかりと俺を見ていた
「……気付いていたのか?」
俺が問う
「はい」
ルナが頷く
「いつからだ?」
「遺跡で会ったときから薄々と……遺跡から出て……三人が居ないからそれで確信しました……」
「そっか……」
「だってカケルさん……サナ達の話の時だけ目を合わせないんですよ?察しますよ……」
俺に嘘は向いてないみたいだ
「お願いします……話してください」
「わかった……」
ルナの真っ直ぐ向けられた視線を浴びながら俺は答えた
「サナ、メア、メリーの三人は死んだ」
「…………」
「俺が……殺した」
「!?」
ルナが驚く
「そう……ですか……」
ルナは予想外にも俺を責めようとはしなかった
「俺を責めないのか?人殺しとか」
「貴方が理由もなく人を殺すとは思えませんよ……何かあったんですよね?」
……信用されてるなぁ
「あぁ……」
俺は話した……三人が捕食されていた事
もう助けられなかった事
三人に頼まれて殺したこと
すべてを話した
・・・・・・・
「そう、でしたか……」
ルナは俯く
身体が震えている
「助けられなくて……悪かった……」
俺はルナに頭を下げる
「カケルさんは悪くありません……僕が弱いのが悪いんです…………彼女達は僕を庇って捕まったんですよ……僕がもっと強ければ……」
「ルナ……」
なんと言えばいいのかわからない
お前は悪くないと言うべきなのか
仕方ないことだと言うべきなのか
何を言ってもルナを傷つける気がした
「三人とも……僕の事を恨んでるかな……」
「それはない!」
「!?」
「あっ、悪い……」
つい怒鳴ってしまった
「でもなルナ、三人ともお前の心配をしてたぞ?」
「皆ですか?」
「あぁ、メアは『最後まで一緒にいれなくてすみません』と謝っていた」
「メアは謝る必要ないのに……」
「メリーは俺に『ルナをよろしく』と言っていた」
「彼女らしいですね……」
「サナは『前だけを見ろ』と言っていた」
「っ!!」
ルナは顔を上げて俺を見てからまた俯く
一瞬だけ見たルナの顔は泣くのを必死に我慢している子供みたいだった
「…………」
ギュウ
俺はルナの頭を抱き寄せて胸元に埋めされる
「カケル……さん?」
震えているルナの声
「泣いていいんだぞ?辛いときは泣いていいんだ……」
「そんな……訳には……いきませんよ……」
ルナは震えている
「僕は、勇者です……勇者は強くないと……弱いところなんて……見せたらダメなんです……」
「勇者とかそんなの関係ないな、ここには俺とお前だけだし……俺はお前を今は勇者としては見てねえよ……強がってる子供だ……必死に我慢してる子供だ」
「…………」
「子供は大人に甘えろ、辛いときは思いっきり泣け、それで……スッキリしてから前を見ろ」
「カケルざぁん……う、うぁぁ……」
「…………」
俺はルナの頭を撫でる
それで限界を迎えたようだ
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!ひっく!うっ……うあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ルナは泣く……大きな声で泣く
「みんな、凄くやざじぐでぇ……たずけでぐれでぇ……僕は、僕はぁ!!」
「あぁ、わかるよ……」
俺はルナの頭を撫で続ける
泣きじゃくる子供が落ち着くまで撫で続けた
・・・・・・・・
どれくらい時間が経ったのか
「もう大丈夫か?」
「はい……」
ルナは顔を赤くしながら川に向かい、川の水で顔を洗う
「泣いたら……だいぶ楽になりました……」
そう言って微笑むルナ
三人の想いを背負って前に進むことを決めたルナ
その笑顔はとても頼もしかった
・・・・・・・
遺跡に戻ったら火は鎮火していた
少し様子を見てから中に入る
「核は燃え尽きてますね」
「そうだな」
俺とルナは核が燃えたのを確認した
「灰や燃えかすが酷いですね……王都に戻ったら騎士団の方達を派遣してもらいましょう……僅かに残ってる触手もそのときに回収してもらって……」
「そこらへんは任せるよ」
俺はただの旅人だからな、よくわからん
「こっちだルナ」
「はい」
そして確認を終えた俺はルナを三人が居た場所に連れてきた
「ここだな……全部燃えたみたいだな」
あんなにあった死体が燃えて無くなっていた……有るのは灰だけだ
「皆……」
ルナが周りを見渡す
「ここらへんだな……あった!」
俺は三人の頭を包んでいたマントの痕跡を見つけた
場所も合っている
「ここに三人の死体が有ったんですね……」
ルナはそう言うとしゃがみこみ手を合わせ……
「サナ、メア、メリー……僕のせいで……助けられなくてゴメン……」
謝る……
「それと、今までありがとう……まだ弱い僕だけど……もっと強くなるよ……立派な勇者になってみせる……だから……見守っていて下さい」
そして黙祷…………
「行きましょうカケルさん」
「もういいのか?」
「はい、三人の意志は僕の中にありますから!」
「そうか!」
ルナ……お前はたいした奴だよ
・・・・・・・
フイル村に戻る
村に着いたのは深夜だった
「すっかり遅くなったな」
「そうですね、もう村長さんも休んでるでしょうし……挨拶は明日にして今日はもう休もうかな」
「そうしろ」
正直フラフラだ
宿に行くと
「カケル!ルナ!」
リーフが俺達を待っていた
「待ってたのか?」
「だって……」
「リーフ、大丈夫ですよ、もうあの魔物は活動しませんから」
ルナが答える
「魔物より二人の体調が心配だよ……フラフラだよ?スープ作ってるけど食べる?それとも休む?」
『食べる!』
俺とルナは同時に答えた
いや腹減ってたしね!
仕方ないよね!
・・・・・・・・
スープを飲んでから俺とルナはそれぞれの部屋に戻った
リーフは着替えを部屋に置いていた……白いバスローブみたいな服だな
まあ、今着てる服も泥まみれで油まみれで花粉まみれの灰まみれのまみれだらけだからありがたい
「シルバは……寝てるな」
「すぅ……すぅ……」
俺はシルバが寝てるのを確認してからシャワーを浴びて服を着替えた
「ふぅ……」
ベッドに横たわる……あー眠気が凄い来た……寝よ寝よ
・・・・・・・・
「………いやキツくね?」
俺はさっきから寝ては起きるのを繰り返している
寝ると夢を見るのだ……サナとメアとメリーを殺したあの瞬間を
「…………トラウマになったか?」
いつまでも気にしてたらいけない……
この世界では人を殺すことなんてよく有ることなんだ
だから……気にするな
・・・・・・
「それで解決したら苦労しないわな……」
結局マトモに眠れなかった
「にいちゃん……おふぁよう」
欠伸をしながら起きるシルバ
「おはよう、眠れたか?」
「うーん……」
「まだ寝てて良いぞ?」
「うーん、起きる……」
「そっか、ほら」
「へへ!」
俺はシルバを抱っこする
シルバはギュウっと俺の首に腕を回して抱きついて甘える
そのまま食堂……でいいのか?昨日スープを食べた部屋に向かう
ギィ
部屋を出たら
「あ、カケルおはよう!」
リーフが部屋の前に居た
手にはサンドイッチが乗った皿とお茶が入っているであろうポットがあった
「なんだ?持ってきてくれたのか?」
「うん、疲れてるだろうから部屋のテーブルに置いとこうと思ったんだけど……下で食べる?」
「あぁ、俺もシルバも起きたからな」
「おはようねえちゃん!」
「おはようシルバ君!」
・・・・・・・
食堂でシルバとサンドイッチを食べていたら
「皆さん早いですね?」
ルナがやってきた
洗濯したのか同じ服が有るのかいつもの服を着ていた
つまり装備をしっかりしていたのだ
「?……ルナ、もう出発するのか?」
「村長に挨拶してから出発するつもりです、昨日から馬車の手配をしていたので王都に戻って色々と報告するつもりです」
「そっか……まあ飯は食っていけよ、それくらいの余裕はあるだろ?」
「良いんですか?」
ルナはリーフを見る
「ルナの分もちゃんと作ってるよ?」
リーフはルナの分のサンドイッチと紅茶を持って来ていた
「ありがとうございます」
ルナはリーフから受け取るとテーブルに置いてイスに座り食べ始めた
「カケルさんは何日か滞在するんですか?」
「んっ?そうだな……早くても明日には出発するな」
「えっ!?」
リーフが驚く
いや、村も復興で忙しいだろ?邪魔になりたくないんだよな
「そうですか……」
ルナはそう言うと食事を再開した
・・・・・・・
ーーールナ視点ーーー
僕は村長に挨拶を済ませる
そしてフイル村の広場で持ち物の確認をする
「…………」
そして考えるのはカケルさんの事だ
彼には今回、色々と助けられた
彼の言葉があったから僕は三人の死を受け入れられた
「カケルさん……」
出来ればカケルさん達を仲間に誘いたい
カケルさんは多分誘ったら一緒に来てくれる……そんな気がした
「でも、そんなわけにはいかないよね」
カケルさんは旅人だ
僕の我が儘で仲間にするわけにはいかない
それに今の弱い僕じゃ……また繰り返すだけだ
だから王都に戻ったら鍛えてもらおうと思ってる
剣術も鍛えたいし魔法も習得したい
そして強くなって……もう誰も失わないようになりたい
そうなってやっとカケルさんを仲間に誘える気がする
「よし!」
持ち物の確認を終えた僕は馬車のある村の出口に向かう
・・・・・・・
ーーーカケル視点ーーー
「よっ!」
「カケルさん?」
村の出口にルナが来た
「どうしたんですか?」
「見送りだよ」
次はいつ会えるかわからないからな
「そうですか、ありがとうございます!」
ルナが元気良く答えた
これなら心配無さそうだ
「…………」
ルナが馬車に乗ろうとして止まる
「ルナ?」
「カケルさん」
ルナは俺の前に立つ
「僕はもっと強くなります!皆を守れるように!だから……その時は僕を……貴方の仲間にしてください!」
ルナがそう言って俺を見つめる
「断る!」
俺は即答した
「そ、そうですよね……僕みたいな頼りない勇者なんて」
おーい?何凹んでんだ?
「なんか勘違いしてないか?」
「勘違い?」
俺はルナの肩を掴む
「お前は勇者だろ?その勇者がただの旅人のパーティーに入るなんておかしいだろ?」
「そ、そうですか?」
「そうだ、だから」
俺はルナの目をしっかりと見て答える
「その時は俺達がルナの仲間になる」
「!!……はい!」
ルナは嬉しそうに微笑み、馬車に乗った
「また会いましょう!!」
元気に手を振るルナが見えなくなるまで俺は見送った
・・・・・・・
更に翌日
「シルバ、準備は良いか?」
「うん!」
旅支度を終えた俺とシルバはチョコを連れて村の出口に向かう
「もう出発するんだね?」
リーフが俺の隣を歩く
「あぁ、カーリスに行く準備は出来たからな」
俺は答える
出口に着く
「よっ!ほら!」
「えい!」
俺がチョコに乗り、シルバを乗せる
「よいしょ!」
「うおっ!?」
リーフが俺の後ろに乗った
「……リーフ?」
俺はリーフを見る
「私も一緒に行く♪」
笑顔で言うリーフ
「はっ?いや村の事は解決したんだろ?」
だからもう旅をする理由は……
「村の為の旅は終わったよ?だから次は私が旅をしたいからだよ!」
「親は許したのか?」
リーフの両親がそう簡単に認めるとは……
「一昨日から説得して許可はとったよ!」
認めさせたか……
「言っておくが……危険だぞ?」
今までが奇跡的に安全だっただけでな
「わかってる、準備はちゃんとしてきたし……メリーさんから魔法を教えてもらったから戦力にもなれるよ!」
「そっか……」
ここまでしっかりと準備されてたらもう断れないな……
「チョコ、三人も乗せて大丈夫か?」
「クェ!」
大丈夫だぜ旦那!って感じの表情だ
「よし、なら出発だ!!」
俺は手綱を握りながらシルバを抱き締める
リーフが俺に抱き付く
チョコが走り出す
「…………」
「どうしたシルバ?」
シルバが俺の顔を見る
「にいちゃん嬉しそうだね!」
「……シルバ、そういうことは言わなくていいからな?」
腰に回された腕に力が入るのを感じながら俺達はカーリスを目指すのだった




