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あとみよそわか ♡

あいちゃんは、今日もわすれものをしました。

一番目は赤えんぴつでした。

それをわすれては、ミニテストの丸つけができません。

先生のところにいって「赤えんぴつをわすれました」というのはつらいことでした。

だってほかのみんなに、わすれものをしたことがわかってしまうから。

はずかしい、わらわれる……そして先生から「またですか」といわれるのです。

先生はあいちゃんに赤えんぴつをかしてくれました。

「あなたは、毎日のようにわすれものをします。注意しましょう」

先生がそういうと、一番前の席にいた、おともだちがくすくす笑いました。

あいちゃんは背中を丸めて赤えんぴつを両手でもって自分の席にもどりました。


その次のわすれものは、音楽の時間に使う「リコーダー」でした。

音楽室のすみに転がっていただれのものかわからない古いリコーダーをかりて使いました。

下には、小さなひびわれがありました。そのせいか音が悪かったのです。

あいちゃんはそれを使いながら、いまごろおへやでころがっているだろうリコーダーに

ごめんなさい、あしたになったら必ず持っていくからとつぶやきました。


その次のわすれものは午後の図工の時間でわかりました。

ボンドをもってくることをわすれたのです。

とうとう先生は、今日で三回目の忘れ物です。前の晩に忘れ物がないかチェックしなさいと怒りました。

あいちゃんはなみだをうかべながら、先生に何度もあたまをさげました。

「ごめんなさい、わすれものをしてごめんなさい」


その夜、先生はあいちゃんのママに電話しました。

「あいちゃんは、忘れ物がとても多いです。お母さん、前の挽か朝起きたら学校に行く前に

忘れ物がないかチェックしてあげてください」

あいちゃんのパパもママも先生のことばを聞いてあいちゃんにおこりました。

「小学生になったのだから、忘れ物はしないように」

あいちゃんはしくしくとないていました。


そのばん、あいちゃんのあばあちゃんがゆめの中に出てきました。

「あいちゃん、忘れ物をしないように、おまじないを教えてあげよう」

「おばあちゃん、どうしてしんじゃったの。いきかえってよ。私と一緒にいてよ

幼稚園のときは私の持ち物ぜんぶ見てくれたのに、今はあいちゃん一人だよどうしたらいいの?」

あいちゃんはおばあちゃんのおひざにのって泣きました。

おばあちゃんはあいちゃんをだっこしてあたまをなんどもなでました。

「毎朝おきたら、あとみよそわかっていいなさい。学校へ行く前にげんかんをふりかえってあとみよそわかって言いなさい。夜に寝る前にあとみよそわかって言いなさい。うしろをみよ、そわか。というの。覚えたかな?」


「あとみよ」

「あとみよそわか、よ。あとみよそわか」

「あとみよそわか」

「そうそう、おぼえられたねえ、よかったね」

「あとみよそわかって言えば、わすれものがなくなるのね?」

「そうよ、やってみてね」

「わかったわ、おばあちゃん」

おばあちゃんはあいちゃんをやさしくだきしめるとぱっと消えてしまいました。


あいちゃんは、朝起きるとまずランドセルを見ました。

「赤えんぴつ、あとみよそわか」

「リコーダー、あとみよそわか」

「ボンド、あとみよそわか」

全部そろっています、あいちゃんは安心しました。

ついでに、テイッシュとハンカチにもあとみよそわか、と話しかけました。

これでだいじょうぶでしょう。

ママがどうしたの、って聞きにきました。

あとみよそわかの話をすると、ママはおどろきました。

「そういえば私がお嫁に来たときによく言ってたわ」

パパも言いました。

「ぼくは小さい時からそう教えてもらっていたんだ、そうか、なつかしいな」

あいちゃんはうれしくなりました。

「パパもそうだったの?」

パパはあいちゃんを抱っこしてくれました。

「そうだよ、でも、いつのまにかいわなくなっちゃったなあ」

ママがすまなさそうな顔をしました。

「多分、それ、私のせいよ。私がお嫁にきたとき、なんでもあとみよそわかというので

食べ物屋さんやまわりに人がいるときは、みっともないからやめてくださいっていったのよ

だから死んでから夢の中でまごに教えにきたんだわ、きっと」

パパはあいちゃんをぎゅっと抱きしめました。

「だいじょうぶ、声をだしてもだいじょうぶ。それはなんの言葉? って聞かれたら

わすれものをしないおまじないだと教えてあげなさい。おばあちゃんもよろこぶよ」

ママがあいちゃんの頭をなでてくれました。

「パパのいうとおりだわ……おばあちゃんに悪いことをしたわ。

それに私たちがいそがしくてほったらかしだったから心配して出てきたんだ。ごめんね。あいちゃん」

パパが言いました。

「こんど、ぼくの休みがとれたらみんなでおはかまいりに行こう。

おばあちゃんの好きだったおまんじゅうを持って」

パパとママとあいちゃんはにっこりしました。

「行ってきまーす」

「わすれものはもうないね?」

「あとみよそわか、もうないよ」

「私たちもあとみよそわか」

「あとみよそわか」



「あいちゃん、今日は忘れ物ゼロですね、がんばりましたね」

先生がほめてくれました。

あいちゃんはうれしくなって、おばあちゃんが夢の中で教えてくれた言葉を言いました。

「あとみよそわか」っていうのよ。

すると先生はぱっと顔を輝かせました。

「それ、忘れ物をしないおまじないね。私も小さいころ聞いたことがあるわ」

「わあ、先生も?」

先生も笑ってあいちゃんの頭をなでてくれました。

そしてクラスのみなにこの話を教えました。

あいちゃんのクラスでは「あとみよそわか」のじゅもんが流行しました。

おかげでわすれものをする人がぐっとへりました

そして、わすれものちょうさでは学年で一番良いせいせきをあげたのです。






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