トン吉の巻
この迷宮に来てこんなにおいしいものが食べられるとは…
トリトンの余韻に浸っていると、
ふと、トン吉が膝に乗ってきた。
「トン吉は本当にかわいいなー」
突然だが、雹は動物が大好きなのである。
動物と言っても哺乳類だけではあるが、
勿論、捨て犬を拾った数は数え切れないが家にはいない。
親が動物アレルギーなので飼うことが出来ないのである。
そんな雹だからこそ問題を抱えていた。
それはトン吉が魔物なのかどうかである。
まず、この世界に動物という概念はあるのか?
考えても答えが出ない…
鑑定してみればきっと全ての謎がとけるはず、
トン吉をじっと見つめながら念じる。
(鑑定!)
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トン吉(仮)
Lv124
NEXT
347800/720000
魔力
300000/300000
スキル
回復魔法
氷魔法
隠蔽
獣化
種族
獣人(兎族)
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隠蔽(持続)…ステータスを偽装することが可能。Lv差によっては鑑定で見破られる。
魔量消費量 0
氷魔法…ユニーク魔法(四大魔法ではない魔法)、氷を操る。
回復魔法…ユニーク魔法、回復を早める。
獣化…5分間、身体能力が格段にあがる。魔力量も増え、魔法の威力も上がる。その後、全能力値が格段に下がる。
魔力消費量 0
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四大魔法…火、水、土、風、の魔法で全ての魔法の基礎となる。
ユニーク魔法…四大魔法でない、希少な魔法。
魔法…初級、中級、上級、極級のランクごとに分かれていて、極級に近づくにつれて魔力消費量と威力が上がっていく。
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だが、隠蔽により、雹にはこう見えていない。
≪雹からみたトン吉のステータス≫
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トン吉
Lv1
NEXT
0/100
魔力
スキル
種族
動物
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トン吉は魔物じゃないのか。良かった。
安堵する。
これから、どうするかを考える。
……
…
まず、出口を探す!
だが、右か左かどちらに行けばいいのかすら分からない。
えっ!いきなり詰んだじゃん。
悩んでいると、隣から光が溢れてくる。
「!?」
驚き過ぎて声にならない。
段々、光が収まってくる。
そこには人型の何かがいた。
「誰だ!」
「何をおっしゃいますか」
うさ耳メイドがそこにいた。
「・・・」
キタッーーーーーーー!!!!!
うさ耳でメイドとかマジでキターーーーーーー
男のロマンじゃないか!
うおーーーー
…………
……
…
ごめん…
熱くなった。反省します。
「なんでメイドさんが!?」
「気づくのが遅いのですよ!」
とりあえず、詳細を確認するために念じる。
(鑑定)
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トン吉(仮)
Lv124
NEXT
347800/720000
魔力
300000/300000
スキル
回復魔法
氷魔法
隠蔽
獣化
種族
獣人(兎族)
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と、と、トン吉ーーーーーーー!
え?え?え?
もふもふもふ・・・・・・・・もふもふ・・・
動揺して、うさ耳を撫でまくってしまう。
や、やってしまった。
動物を見た時の癖で…つい…
「ご、ごめん!ついっ!」
慌てて手をどかす。
「よろしいのですよ。気持ち良かったですし、
それに、ご主人様にならいつでも…」
予想外の返しがきたので、何も言えなくなる。
二人の間の空気が重くなる。
空気がお、おめぇぇぇーー
どうしよ、どうしよ、どうしよ…
とりあえず確認を。
「ホントにトン吉なのか?」
「えぇ、その通りで御座いますよ、ご主人様」
「そのご主人様ってのはやめてくれないか?」
「それはできません」
「そっか…じゃあいいや」
き、気まずーーーーーー
てか、何でダメなの?
でも、今は置いといて
……
…
まず、状況を整理する。
隣から光が溢れてきて、
うさ耳メイドで、それもトン吉で、
トン吉がトン吉じゃなくて、でもトン吉でしかも人で…
って、もう訳が分からん!
気絶してしまった。
俺の頭のスペックでは処理落ちです。
…………
……
…
目を覚ますとそこには二つの山脈が…
お、おぉー眼福ですなー
「そうじゃなくて、なんでこんな状況になってんの?」
「あぁ、それはご主人様が気を失ったので膝枕させて頂いたしだいです」
「俺はどのくらい寝ていたんだ?」
「十分程で御座いますよ」
「最後にもう一度聞くけど、トン吉か?」
無言でうなずく。
これは、もう納得するしかないのか…
ステータスを確認する。
(鑑定)
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トン吉(仮)
Lv124
NEXT
347800/720000
魔力
300000/300000
スキル
回復魔法
氷魔法
隠蔽
獣化
種族
獣人(兎族)
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なにこのチート、
怖いんだけど…
種族は…
獣人って、人じゃないの?
聞いてみるか。
「人ではないのか」
「種族のことですね。獣人と人間は違いますよ。」
それから、種族についてトン吉に教えてもらった。
この世界には7つの種族があり、
精霊、エルフ、獣人、人、ドワーフ、魔人、魔物、
に分かれているという。
それから、ついでに現在地のことも教えてもらった。
ここは迷宮大陸のどこかであることは分かるらしい。
この世界の大陸は5つあって、
人間の治める アルフロイド
魔人の治める 暗黒大陸
精霊とエルフが共存する ユグドラシル
獣人とドワーフが共存する グルグレット
龍達が治め最も魔物が多く存在する 迷宮大陸
に分かれている。
人間の治めるアルフロイドか…
あいつらも居るかもな。
行ってみる価値はあるかもしれない。
常々思っていたんだが、ウサギじゃないトン吉に
トン吉って呼ぶのは違和感があるな。
やっぱり、変えるべきじゃないのだろうか?
「トン吉ってのは変えないか?」
「嫌です!!
この名前は、この名前だけは、変えたくないんです。
ご主人様から貰った、この名前だけは…」
と言って泣いてしまった。
女の子を泣かしてしまった。
どうしよ、どうしよ、どうしよ……………
こんな大粒の涙を見ているとトン吉と出会った雨の夜を思い出す。
…………
……
…
ザアーーーザアーーー
中学の頃のある日
「今日雨降るなんて聞いてないぞ」
「雹、傘忘れたの?」
「美優か、そうなんだよ。降るなんて思ってなくてな」
「天気予報で午後から降るって言ってたのに」
いつもなら朝に天気予報を確認するのだが、
今日は寝坊したため見れていなかったのである。
「しゃあねーな、走って帰るわ。じゃあな」
「私の傘に入れば良かったのに…」
そんな乙女心をスルー帰っていると、
道で倒れている一匹のウサギが目に入った。
この頃から動物が大好きだった雹は家に連れて帰ったのである。
まず、濡れた体を拭いて、乾かして、
部屋を暖かくして、水とレタスをあげる。
すると、生き返ったようにウサギはレタスを食べまくる。
1玉ほど食べた後に寝てしまった。
ウサギが寝てくれて安心していると、
このウサギは雪のように白い毛でとても美しかった。
ウサギが寝ている間に今日の晩飯を一人分作る。
いつも通り親は出張で海外だ。
今日のご飯は豚カツにしよう!
ジャカジャン・・・ジャカジャンジャン・・・・
はい!出来ました!
いただきます。
すると、ウサギが寄ってきた。
まだ食うの?
まぁ、あげるけど…ってダメダメーーー
豚カツも食おうとするなんて…なんてやつだ。
そうだな、トン吉ってのはいい名前かもしれないな。
「お前の名前はトン吉だ、どうだ?」
「・・・」
トン吉がすり寄ってくる。
いいってことなのかな。
…………
……
…
そういえば、あの日もずっと俺の側にいたな。
そっと、トン吉の頭を撫でる。
「ご、ご主人様ぁ?」
「ごめんな、ずっと側にいるよ。約束する。ごめんな・・・」
トン吉は俺に抱き付いてくる。
それから、少しの時間が経った。
……
…
「落ち着いたか?」
「はい、お見苦しいところを申し上げございません。」
「それで、本題なんだがやっぱり変えようと思う」
「それじゃあ、やっぱり…」
また、トン吉の顔が暗くなる。
「勘違いするな。新しい名前をつけてやる」
「やっぱり…ってえっ?」
「お前はハクだ。
お前は俺が守る絶対にな」
「はい、ご主人様。一生お仕え申し上げます」
と言ってハクはまた俺に抱き付いてきた。
俺はハクを優しく抱きしめる。
抱きしめあっている間、
時がただ、漠然と流れる。
「よし、これからもよろしくな!ハク」
「はい、ご主人様」
これからのことをハクと話し合う。
それに、美優達とも合流しなければいけない。
よし、決めた!
「当面の目標として、アルフロイドに行こうと思う」
「はい」
「前から思っていたんだが、なぜここまでこの世界に詳しいんだ?」
「それは元々、この世界ユリフォールの住人ですから」
「えーーーーーーーーーー」
それから、話を聞くととある迷宮を探索していると、
魔法陣が急に出てきてあっちの世界にウサギの姿で飛ばされたらしい。
でも、何もわからず、お腹も減ってきて、
倒れてしまったところに俺がきたという。
「じゃあ、こっちの世界のことは結構わかるのか?」
「もちろんでございます。
ですが、こっちの世界にいなかった時のことは分かりません」
「あぁ、充分だ。まず、魔力の使い方を教えてくれ」
「分かりました。
では、魔力とはざっくり説明すると水分のようなもので体内外にあります。
基本的には体内の魔力しか扱えないんです。
扱うコツは体内の血液を動かす感じですね。
魔法とはその体内にある魔力を使って行使します。魔力消費量はその魔法を行使するための目安の魔力量です。よって、魔力を扱うことは魔法の精度そのものに直結します。まずは、魔力を感じるところから始めて下さい。」
「なるほど、魔力は血液を動かす感じか。」
手に力を集中させる。
魔力が循環し手に集まってくるのが分かる。
そうなると、体の周りの魔力も感じられるようになる。
魔力を動かす練習をする。
練習していると、急にハクの顔に緊張が走る。
「何か、来ます」
壁の向こう側から、
日本のおとぎ話に出てくるような鬼が顔を出す。
大きさとしては3m越えくらいだった。
1週間程空いてしまいましたが、次は頑張ります。