異世界の巻
「どこだここ?」
「…」
目を開けるとそこは大きな洞窟のような場所だった。
左右を見ると岩の壁になっていた、どこまでも、どこまでも…
その岩はよく見ると、薄く橙色に光っていた。今まで見たことのない岩だった。
少しその岩を恐ろしく感じた。
「これ、ホントに地球なのか?」
彼の数少ない趣味の1つは読書だった。
時間が空いた時にはよく読書をしていて、ジャンルは問わなかった。
ミステリー、ホラー、恋愛、SF、推理、ファンタジー、ライトノベルなどを読んでいた。
その読んだライトノベルの中に、いきなり異世界に転移させられて魔法などを使えるようになって無双するものもあって、興味もあったのだ。
もしかすると、本当に異世界に来てしまったのか?
いやいや、ないないない………有り得ない。
少し、非日常過ぎて動揺してるんだ。きっと…
もふもふもふもふ・・・・・・・もふもふ・・・
(シャー、シャー)
トン吉が毛を逆立てて怒ってくる。
動揺してトン吉をもふり過ぎてしまった。
…ごめん。許して…
まぁ、気を取り直して行こう!
こういう時にテンプレでステータスが見れるという展開は読んだことがある。
とりあえず、今はできることがないのでやれることはやるしかない。
1%の希望でもあるならやるしかないのだ。
「ステータス!!!!!!」
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獅子部 雹
Lv1
NEXT
0/100
魔力
500/500
スキル
生活魔法
魔力拡散
魔力操作
鑑定
剣才
種族
人
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「やった!できた!」
ゲームみたいだな。
というか、種族って…人以外にあんの?見てみたいなぁー
違う違う違う………
そうじゃなくて、これからどうやって生きてくかな?
じゃあ、俺が転移させられてこの異世界にきてしまったとしよう。
あの魔法陣によってここまで連れてこられたとすると…
あれ?4人で転移された…た…よな?
慌てて周り見渡す。
でも、やっぱり、トン吉以外何もいない。
本当に来ちまったんだな、あいつら大丈夫かな?
まぁ、茜がいても大丈夫だろ。美優も健吾もしっかりしてるからな
そうして3人のことを心配しているが、実際は3人の方が正規で雹が誤転移だということを彼はまだ知る由もなかった。
…………
……
…
「タッタッタッ」
何かが近づいてくる、足音の方に意識を向ける。
健吾か美優か茜だと思いたい。
「キッシャァァァァァァ」
今にも、トン吉を食べようとする化け物が居た。
全然違ったーーーー
咄嗟のことで、考えるよりも早く体が動く、手を平手の状態にして化物に一撃を与える。
(押)
皮膚に触れた瞬間、塊のようなものが解けて無くなっていく感覚があった。
そして、化物は衝撃により、後ろに引く。だが、内から衝撃が響く。
化物が怯んでいる時に、更に追撃を加える。
手を強く握り、腕全体に力をかける。
(破)
全体重をかけて殴る。
ボゴッ!
化物は2m程飛んで、行った。
「キェエェェェ」
化け物は動かなくなり、絶命した。
よくよくみるとその化け物はサイのようなシルエットで口が4つに裂けていた。
大きさは大人のゴールデン・レトリバーぐらいだった。
気持ち悪っ!どうなってるんだろ?
まず、俺のステータスをちゃんと確認する。
なんか使えそうなものを探すしかない!生きるために!!
(ステータス)
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獅子部 雹
Lv1
NEXT
26800/100
魔力
500/500
スキル
生活魔法
魔力拡散
魔力操作
鑑定
剣才
種族
人
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このスキル欄にある鑑定ってのは定番のやつじゃん。
異世界に転移された人が何もわからない状態だけど、このスキルがあれば、
何でも分かるっていう超便利スキルだったはず…
使ってみるか、たぶん、ステータスと同じ感じでいける!
「ぐううぅぅぅぅぅぅぅぅ」
確認する前にお腹が鳴った。
どんな時でも腹が減るのはしょうがない。
あー、腹減ったー
トリトンってうまそうじゃね?食えるよ、絶対!
…………
……
…
ごめん、やっぱ嘘です。
あれは、ちょっときついです。
でもなー
腹ももう限界だ!何か食わんと!
ちょうどいいや。
鑑定使おう!
鑑定で食えそうだったら食う!…たぶん…
「鑑定」
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トリトン
Lv50
魔力
384000/500000
スキル
魔力硬化
魔力操作
種族
魔物
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魔力多過ぎだろ!
てか、俺の1000倍かよ…俺が少ないんじゃないよね。じゃないよね!
魔力ってどう使うんだろ?
トリトンのスキルを鑑定してみたら、分かるかも知れない。
「鑑定」
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魔力硬化…魔力によって皮膚を限界まで硬くする(持続)
魔力の総量によって消費魔力が変わる。大きくなるほど固くなる
物理攻撃と魔法攻撃に耐性
魔力消費量 毎分5000(トリトンの場合)
魔力操作…自分の体外の周りの魔力を操れる、魔力の扱いが上手くなる
魔力消費量 0
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「つ、強くね!」
トリトン固すぎだろ、こんなに防御特化だったのか。
じゃなんで、俺の攻撃が通ったんだろう?
怪しいな?
頭の中で念じる。
(ステータス)
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獅子部 雹
Lv1
NEXT
26800/100
魔力
500/500
スキル
生活魔法
魔力拡散
魔力操作
鑑定
剣才
種族
人
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
自分のステータスで何か引っかかることはないような気がする。
レベルも変わってないし。
やっぱ、スキルに問題があるのだろうか…
(鑑定)
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鑑定…対象物の詳細を知ることができる
魔力消費量 0
魔力拡散…魔力が集まった物に触れたら魔力を分解し空気中に流せる(常時)
魔力消費量 0
生活魔法…ライト、ウォッシュ、ファイヤーの三つのこと
魔力消費量 50
剣才…剣速が速くなる、剣の威力を上げる。(常時)
魔力消費量 0
ライト…拳くらいの光を出す(魔力依存)(持続)
魔力消費量 毎分1
ウォッシュ…体の汚れを綺麗にする
魔力消費量 50
ファイヤー…手のひらの上に小さい火がでる
魔力消費量 50
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おぉ、生活魔法便利だな!
スキルと魔法はどちらも魔力がいるんだな。
使ってみたいが、魔力そのものの使い方が分かんねー。
とりあえず、言ってみるか?
「ウォッシュ」
体の隅々がさっぱりする。
スゲー気持ちいいーー!
これは癖になるなーー
次、いってみるか。
「ライト」
ピカッーーーー
握りこぶしくらいの大きさで弱く光る光の塊ができた。
(よ、よえーー!!)
魔力依存って書いてたよな…
俺って…
…
次いこう!次!
「ファイヤー」
ライターのような火が出る。
20秒程見ていると……消えてしまった。
もう一度、出すか!
「ファイヤー」
また、指の先にライターのような火がでる。
ボッ!
服に着火する。あっ、やべ!
消せ、消せ、消せーーーーーー
ふぅー、危なかった!
って20秒以上、火出てたよな?
燃え移ったものは普通の火に変わるのか、成程!
魔力が関係しているのかも知れない。
ライトの光はまだ続いている。
(消えろ)
念じると消えた。
そういう仕組だ。
「ウォッシュ」「ライト」「ファイヤー」
楽しいなコレ!
テンション上がるわー
「ウォッシュ」「ファイヤー」「ライト」「ファイヤー」
どっと疲れくる。
ライトも消えろと念じてないのに消えてしまった。
(ステータス)
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獅子部 雹
Lv1
NEXT
26800/100
魔力
0/500
スキル
生活魔法
魔力拡散
魔力操作
鑑定
剣才
種族
人
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
魔力が0になっていた。
魔力が無くなると、魔法は使えないし疲れるし。
気を付けよう。
いろいろなことを考えていると、混乱してきた。
横でトン吉はぐっすり寝ている。起きる気配はない。
トン吉の寝顔を見ていると、睡魔に急に襲われ意識が…
……………
…………
……
「はっ!寝てたのか」
トン吉も起きたみたいだった。
トン吉を優しく撫でながら、辺りを見渡す。
一面見渡すと怪しく光る岩が、右、左、上、下、どこまでも続いていた。
「やっぱ、現実なのか?」
目の前にトリトンの死体があった。
動きそうで、まだまだ怖かった。
「やっぱ、現実なんだよな」
今更ながら、手持ちの物を整理する。
ナイフ、フォーク、スプーン、箸、学生証、紙屑、短刀、しかない。
ナイフ、フォーク、スプーンは雹の標準装備である。
なぜなら、昼に人の弁当から一品貰うためであるのだが、今は置いておく。
短刀があったの忘れてた…
「ぐううううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!!!!!」
こっちの方も忘れてた。
も、もう食うしかねーじゃん!トリトン!!!!!!!
よし、覚悟を決めるか……………
トリトンをまず、短刀で切り分ける。
切り分けた部位の一つを取って、食おうとする。
いや、待てよ。生はよくないだろ生は!
焼くか…よし焼こう!
「ファイヤー」
学生証と紙屑に火を移し、生のトリトンの肉を焼く。
15分程かけてじっくり焼いていく。上手に焼けましたー!
ステーキのような感じだ。
いざ、実食!
「う、うまい!!!!」
食べた瞬間、口の中で肉が溶けて口いっぱいに肉汁が広がる。
味付けをしていないのに、広がる風味、圧倒的存在感!
これはうまい!
今まで食ったことがないないような肉だ。
これだけでご飯3杯いけますよ!…
バクバクムシャムシャ…
「食った、食ったーー」
トリトンを全部食べってしまった。
ご馳走様でした!
挨拶が遅れました。キツツキです。
これからもよろしくお願いします。
不定期更新だけど、感想はいつでも待ってます。