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始まりの巻

キーンコーンカーンコーンーーーー

下校のチャイムが鳴る。



「そろそろ帰るか……またなトン吉」



トン吉とは通っている高校で飼育されているウサギのことだ。

なぜ、彼、獅子部雹が放課後まで、ウサギの世話をしているかというと……

長い話になるので、今はしない。



「雹ーーーー終わったーー?」



彼女は如月美優。成績優秀、容姿端麗、運動神経も抜群、性格は誰にでも優しい。

彼女に優しくされた日には男子なら勘違いするのも、無理ないだろう。

そんな、彼女だから毎日のように告白されているが、まだ黒星を上げた男子はいないという……。



「あぁ、終わったぞ。今から帰るところだ。」



名残り惜しみながら、トン吉に別れをつげ、帰途につく。



「ちょっと、待ちなさいよ」



彼女の言葉には応じず、そのまま歩く。

彼女と帰るのは久しぶりだ。試合前であったので時間が合わなかったのだ。

なぜなら、美優はバリバリ現役の陸上部で俺は帰宅部だからだ。



獅子部雹、16歳、帰宅部、童貞、年齢=彼女いない歴、

顔は上の下、勉強は中の上、運動神経は平均よりも高いくらい、

という一般的な高校生なのである。

帰宅部では勿体ないと言われるのだが、それには少し事情があるのだ。



そんな普通の俺のことより、スーパー高校生美憂との仲の方が気になるであろう。

まぁ、勿体ぶらずにに言うと、家が隣で幼なじみだからとしか言えない。

残念だ。非常に残念だ。幼馴染ならと思ってた時期もありました。



実は一度、美憂に告ったことがあったのだった。中2の頃の話だ。

…………

……




「み、美憂!俺と付き合って下さい!」



ぶぉぉおおおおーーーんん!!!大型トラックだ。



「雹、なにか言った?」



(のおおおおおおぉぉぉぉぉぉんんんんんんんん!!!!!!!!!)

「何も言ってないデスヨ…」

…………

……




それ以来、友達という関係で定着してしまった。

まぁ、代えようとは思わないのだが…

(勝てない戦いだからじゃないヨ…)




「雹ーー、今日の夜ご飯はどうするの?」



彼女は、親が単身赴任中でいない時に夜ご飯をよく持ってきてくれるのである。

一人暮らしの時には有難い限りである。



「んーー、美優に悪いし、今日はいいや」



「……べ、別に……そんなことないのに…」



「なんか言った?」



「何も言ってない!雹のバカーー!」



美優はそう言って、家に入ってしまった。



「美優のやつ、なんだってんだ。いきなり怒鳴りやがって」



そう、呟いて、家に入る。

いつも通り誰もいない家で、自分の部屋まで直行する。

ゲームをして、宿題をして、友達とメールして、風呂に入って、布団に入る。

そんないつも通りの生活だ………

明日も……

zzZ…






「雹、起きなさいよ。」



美優が起こしにくるのは毎日のことで、なぜ勝手に家に入っているのかは聞くまでもない。

俺の両親が合鍵を渡しているらしい。俺の知らないとこで……おかしい。



美優が作ってくれた朝飯を一緒に食べて一緒に登校するのが習慣になっている。

こうなるまでに色々あったのだが、な、長くな……る………ことはないので、話そうと思う。

……………

……





小5のある日のことだ。

  ~放課後~


「美優、俺は遊んで帰るけどどうする?」



「先に帰ってるよ、じゃあ明日ね」



「おう!またな!」



この後、美優は誘拐されたのである。

ちょうど、巡回していた警官に保護され無事ではあったのだが、

家に帰ってから、泣いていた美優を見て心の底から守りたい思った。

と同時に自分の無力さを呪った。

 


「俺がお前を守るから、黙って俺についてこい!」



「うん!」



泣いてる美優をギュッと抱きしめて言った。

それから、俺と美優は一緒に登校するようになったし、できる限り一緒に帰るようになったのだ。

と同時に力を欲して、叔父を訪ねるのだがそれはまた別の話。

…………

……








「今日もイチャイチャしてますなー、羨ましい限りですよーだ」



「茜ちゃん、そんなんじゃないっていつも言ってるでしょ!」



明るく話しかけてきたのは同じクラスの時坂茜だ。

美優とは親友らしく、同じ陸上部に所属していて、実力は全国レベルだという。

顔は童顔でキレイ系というよりカワイイ系で明るい性格も相まって、よく告白されていた。

成績は悪く、いつも、補習と格闘しているとかいないとか…



そんな茜だからこそ、校内、一緒に勉強したい女子ランキング1となっている。

(マニアック過ぎだろと思っているが投票してしまったので何も言えない)

ちなみに、付き合いたい女子ランキング1は美優で2が茜らしい。



「茜、美優、雹、おはよう!」



今、声を掛けてきたのは、またもや、同じクラスの近衛健吾である。

成績は学年主席、部活はサッカー部で1年でレギュラーをとっているという。

性格は温厚で誰にも気軽話しかけ、正義感と責任感が人一倍あり、気遣いのできるやつなのだ。

要するに近衛健吾を一言で表すと完璧超人なのである。



ちなみに校内彼氏にしたいランキングは堂々の1位である。俺は・・・圏外だ。

告白された回数は3桁はくだらないという。マジ○ね。ごほん、ごほん、



「おはよう、近衛君」



「健吾ー、おーはよ」



「健吾か、遅いな。朝練はどうした?」



いつもはもっと早くきて女子にキャーキャー言われながら朝練しているのだ。

くそ!チートやチート、チーターや!



「今日は休みなんだよ。」



4人で教室に向かう途中の靴箱で俺は見た。

3人が靴箱から手紙を取り出し鞄に仕舞う姿を…………

はい。俺のところにはありませんね。通常運転ありがとうございます。




キーンコンカンコーンー

…………zzZ…はっ!



「今日の授業はここまで、ちゃんと宿題しておくように!」



ガラガラー


先生が言い終わると同時に教室を速攻で出ていく者たちが数名。

ゆっくり鞄から弁当を取り出す者が大多数だ。

俺はもちろん限界に挑戦している前者の方で、購買でパンを買っている。

購買のパンを買いに行くのは戦争だ。人を躱し、倒さなければ目当て物は手に入らない。

弱肉強食の世界である。



「今日もGETGET-」



今日もいつも通り、パンを持って教室に向かう。



「雹、今日も買えたの?」



「ほら、いつも通りだ美優」



今日の戦績を美優に見せる。

それから、4人で集まってお昼を食べるのがいつもの習慣である。



「美優ー、その卵焼きもーらい」



「茜ちゃん、行儀悪いよ!」



「はーい。んー、やっぱおいしいなー美憂ーの料理。美優ーはいいお嫁さんになるよ。

でも、もう先約が入ってるもんねーー」



「や、やめてよ!そんなんじゃないよ」



その間、俺と健吾は苦笑いするしかなかった。

ハハハ…









キーンコーンカーンコーンー

今日一日の俺の学校生活に終止符を打つ鐘が鳴り響く。




「あー終わったー、じゃあな、美優、健吾、茜、トン吉とこ行ってくるわ」



「私も久々に行こうかな」



「じゃあ、私もトンちゃんに会いに行くよー!」



「部活に出る前に、俺もよろうかな」



ウサギ小屋に行くと、トン吉が待っていた。

丸々した目をうるうるさせてこちらを見ている。

可愛いなもう、善し善し、エサの量を増やしてやろう!

…………

……





そろそろ皆が部活に行こうとしている時、急に地面が光りだし……

魔法陣のようなものが浮き出てきた。



「逃げろ!」



「雹、コレ何?」



「きゃー、光ってる!」



「どうなってるんだ!」



「…」



4人+1匹は吸い込まれるようにして、その光に飲み込まれていった。

この世界から4人+1匹が姿を消した瞬間だった。

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