モグラと一緒
半回想回1
「るぅるぅがはじめて、あの世界に渡ったのは、実に偶然だったのだ!」
力強く言い放てば、モグラがゴソゴソとなんか準備している。
クッションを直し、たっぷり入っているジョッキを置き、つまみはミミズのたっぷり衣揚げに木の実を甘辛く炒ったものをお皿にたっぷり。確認して満足そうに頷き、力強く手を打ちながら座り直す。
「さぁ! 話すがいいべ」
やつは清々しく長話聞くぞモードに入った。
るぅるぅは、ちょっぴり挫けそうだったのだ。
記憶の奥底を漁るまでもなく、飛行訓練中にふらりと落ちた世界。
魔法はないはずなのに力のある優しい町。
魔法はないはずなのに陰りのあった町。
ツチノコを捜し求める青年。
冷静に事態を分析する揺らぎの薄い女性。
健やかにのびやかな子供たちとそれを見守る優しげな女性。
ガラスの箱の中にいた仔猫。
揚げ物をわけてくれた河童との遭遇。
冷たい剣な気配のある術師の少女と狐の少年。
赤い『天狗面』の青年。
穏やかな雰囲気の町長。
あの町には人も人ならざる者も普通に混じっていた。
一日で出会った人は多く、有意義な一日。
「あの町は雑多だが暖かい空気があったのだ」
だから、
「だからるぅるぅはもう一度渡る時に、あの町を選んだのだ」
踏まれスタートだったけどな!
「で、何回落ちたんだべ?」
「落ちてないのだ! 着地なのだーーー」
るぅるぅが思い出に浸っていたのに~~~。
じっと視線を感じる。
「ちゃ、着地はたぶん、うまくいってたのだ」
木の実を齧るカリッといい音が響く。
「秘密。……なのだ」
心を決めて渡った二回目はわからないことがたくさんあって楽しい時間だったのだ。
「ラノベもお酒も大量ゲットだったのだ!」
「恋の出会いもげっとだべな」
「な、な、渚とは、そ、そんなのじゃないのだ。種族の差も寿命の差も世界の差もあるのだ」
なに言うんだこのモグラー!!
ジョッキを豪快に傾ける。
「種族差も寿命も些細な問題だべ?」
「だ、だから!」
「それに町に行くのならまた出会えるべ? ろまんすだべ? ろまんすだべ? いいべなぁ~」
モグラ。何を期待してるのだ。ついてくる気はないくせに……。
『うろな町でツチノコを探し隊』より川崎省吾さん
http://ncode.syosetu.com/n7518bq/
『朽葉うろな行』より和倉葉朽葉女史
http://ncode.syosetu.com/n2415br/
『Family』より藤崎芽衣さん
http://ncode.syosetu.com/n9190bq/
『"うろな町の教育を考える会" 業務日誌』より梅雨ちゃん
http://ncode.syosetu.com/n6479bq/
『うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話』より魚沼弁護士
http://ncode.syosetu.com/n2532br/
『人間どもに不幸を!』より芦屋ちゃんと稲荷山君を
http://ncode.syosetu.com/n7950bq/
『うろな天狗の仮面の秘密』より天狗仮面様
http://ncode.syosetu.com/n9558bq/
『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』より青空 海ちゃん。渚ちゃん。
http://ncode.syosetu.com/n7439br/
「URONA・あ・らかると」るぅるぅ墜落紀行でのネタでした。