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ショッピングモール。傘を携えて

2014年八月半ば雨続きの日。

「ふぁにふぁじふぁんきー♪」

 琉伊は渚とおーでーかけなのだー。二人っきりだから逢引?

 ちょっぴりドキドキー。あー。シンも一緒だから二人っきりじゃないのだ。

「その歌は?」

 渚が不思議そうに聞いてきた。

 よーくーぞー聞いたのだ!

 くるんとターン。傘からはちょっと手を離して決めポーズに傘を握りなおす!

「るぅるぅ賛歌なのだ!」

「賛歌?」

 人の多いところではちゃんと傘は振り回さないのだ。危ないからな!

「るぅるぅを褒め称える唄なのだー。ふぁじーでふぁにーでふぁんたすてぃっくふぁんきーなのだー」

 るぅるぅ賛歌は琉伊の作詞作曲(テキトー)なのだ!

「おー。今日も長虫が元気なのだ〜」

「電車」

 修正してくる声。

 うん。もちろん知ってるぞ!

 長虫だ。


 一緒にお出かけは楽しい。小さい姿だと気兼ねなくはしゃげる。一緒が嬉しいのだ!

 渚は昼間はお店のお手伝い。

 夏場は『うみのいえ』はカキイレ時だから、琉伊と過ごす時間は少しなのだ。

 昼間は琉伊、安定のおチビさんだからな。おじゃましないのだ!

 閉店してからちゃちゃっと掃除しちゃう時は渚と一緒なのだ!

 琉伊は、琉伊は、隅っこの汚れが気になるお年頃なのだ!

 この外見だとお一人様でちょっと沖に出ると注意されるのでお部屋で大人しくしている日々なのだ!

 あいつのトコに遊びに行っても邪魔だって邪険にされるしな。生意気なのだ!

 琉伊はお利口だからな、ちゃんと注意されないようにお部屋でお昼寝しているぞ。もちろん、お歌歌ったり、勉強本(ラノベ)読んだりもしてるのだ。

 パールとソーシャルゲームをしたりもするのだ!


 でも、渚と一緒なのが一番、今嬉しいのだ。


 おっきな建物。ショッピングモール。

 お店の中はなんだか眩しい感じなのだ。

 琉伊の世界の(イチ)みたいな気もするけれど、あっちは屋根があったりするのは地底都市だったりで限られる。地底都市はまわり一面土壁だしな。

 地底都市(そっち)より海底都市の方がイメージが近いかなと思う。色合い違うけど。

 キョロキョロとあたりを見回す。飾り方も面白いのだ!

「琉伊、手を」

 差し出された手をぎゅっと握る。見上げれば、少し、渚が満足そう。

 渚が嬉しいなら琉伊も嬉しい!

「はぐれちゃダメだから」

「はぐれても琉伊、渚ならすぐ見つけるのだ!」

 ふっと流れ込む空気は冷やっこい。外は雨のせいでむしっとしてるのだ。

「渚! アレはなんなのだー」

 ビニールにしまった傘を持って、あいた手で渚を引っ張る。ちゃんと渚と手をつないでいるのだ!



「背負い皮荷袋なのだ!」

「ランドセル」

「汐がおんなじの持ってるな!」

 赤いの!

「ん」

 頷く渚。

 そうこれは『ナツヤスミ』に入る前、汐が背負って毎朝のように出かけていくのを琉伊は憶えている。渚は背負い袋ではなかったと思う。

「琉伊は何色が好き?」

「琉伊は黒が好きなのだ!」

 台の上に飾られた背負い袋。スッとキレイな水色や、チョコレート色、葡萄色、赤や青。それでも数が多いのは赤と黒かなと思う。

 同じ黒の鞄でも縫い糸の色が違ったりする。ぽんぽんと叩いても頑丈そうだ。

 渚にだけ聞こえる声で呟いてみる。

「琉伊のお部屋に実は最適?」

 るぅるぅの本体時ならゆったり入っていられそうだった。

 見上げると、じっと見つめられる。

「でも、琉伊、汐とおそろいも嬉しいけど、渚とおそろいがいいぞ?」

「でも買うのはランドセル」

 何かこだわりがあるらしいのだ。



 そのあと、ノートや、琉伊専用の鉛筆、鉛筆を入れる小さな箱、他にも細々と買ったのだ。

 全部に一守琉伊って名前を書くのだ!

 書く位置は決まってるらしいのだ。好きなように書いちゃダメなのか?

「いっぱいあるから大変だぞ?」

 って言ったら、「大丈夫」って返ってきたのだ。渚が大丈夫って言うなら大丈夫だなー。

 荷物が多くなったから「こっそり琉伊の袋に突っ込むか?」と聞いたら、渚は笑って、「モールでたら」って言ったのだ。その視線が見た先にあったのは防犯カメラ。

「琉伊、納得なのだー」

 不審行動はさけるべきなのだー。

 いろんなところでよくわからない決まりごと。

「ごーにいってはごーにしたがえ。なのだー」

「うん。学校いこうね」

 ぽつんと、渚が音を落としたのだ。

「琉伊、子供じゃないぞ?」

 五十年生きてるのだ。

 はっと気がつく。

「渚と一緒!?」

 なら、いいかなぁ?

 静かに首が横に振られる。

「汐と一緒」

 瞬間、世界が真っ白に染まったのだ。



「ふぁじふぁにふぁんきーふぉーちゅんほーりーふぁんたじー~、ふぁじふぁにふぁんきーふぉーるふぉーりんふぁんたずむ~♪ ふぁにふぁじふぁっとふぁんたすてぃっく、ふぉーりん!」

 気分切り替えのるぅるぅ賛歌。三番! なのだ!

「琉伊は、学校行くのいや?」

「わからないのだ~。でも、汐の行っている学校は子供の行く学校なのだ~。琉伊は、子供じゃないのだ」

 できるだけ水たまりを避けて跳ねる。

 小さい身体では渚との歩幅が違う。琉伊の力では渚と同じ学校に行くほどの外見を維持できない。

「でも背負い袋は気に入ったのだ!」

「ランドセル」

 琉伊の寝部屋なのだ!

『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』

http://ncode.syosetu.com/n7439br/

青空渚ちゃん。

お名前だけ汐ちゃんお借りしました♪


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