教育的指導と出掛けるぜショッピングデート序
八月半ばの雨続きの日
時速60kmそれはシンが出せる最高速度だった。
ばちり!
シンの聴覚には激しい音を立てて叩き落とされる。
叩き落としてきた相手は己が主だった。
困惑から理解へと至るは瞬時。
砂浜に穿たれた小さな穴から這い出す。重力操作を得意とするシンには自重で十m程度沈んでいようが造作ない動きである。
主は何事もなかったかのように赤毛の彼と会話している。
彼(お世話になっている青空家の三女空様の恋人の方)は気安く気軽く、主様の髪をなで小突くといった行為をしているのです。無礼です!
そんな憤りを湛えながらじっと主と敵を見つめる五センチほどの水色のウニ。雨降るビーチで転がる姿はあまり目立たない。
主が歩きつつ途中でさりげなく拾いあげる。
指先で軽く弾かれるが、主のスキンシップに身を喜びに震わせるのだ。
「座るのだ」
ころりと転がる水色のウニ。
そこは海の家の隣にある青空家の休憩場所と琉伊が認識している場所だ。
「シンはどーして空の恋人に突っ込んだのだ?」
そこで行われる糾弾。
小学一年生相当のお子様がおもちゃと思われる水色のウニにお説教タイム。
傍目には微笑ましい。
しかし、その内容は避けられた傷害未遂についての糾弾であり、実に真面目である。
伝えられた音のない情報にお子様が額を抑える。
「シンは、琉伊が軽んじられるのを嫌ったのはわかったのだ」
水色のウニは沈黙している。
ピシッと琉伊が水色ウニに指を突きつける。
「だが、雨の中で遊んでたら風邪引くぞと心をかけてくれた相手に攻撃するのは良くないのだ!」
ふっと息を吐き、
「そのぐらいで体調崩さないけどな!」
第一そんな天候で遊んでたのは薄暗い中で目が冴えて、かつ、ひまだったからだ。そんな琉伊の事情をキレイにスルーしてゆらりと水色のウニが揺れる。
『無礼ではありませんか』
事情などどうでもいいとばかりにそう訴える水色ウニに琉伊は困った表情を向けた。
「琉伊はあれを理不尽な無礼とは考えることはしないのだ」
琉伊は水色ウニをぽふりと撫でつまみ上げる。その内心が(だから連れてくるつもりはなかったんだ)どうであっても琉伊にとっては大事な部下であり、世話役には違いなかった。
「琉伊」
「渚!」
顔を出した少女に喜色を浮かべて駆け寄る琉伊。
「お店はいいのか?」
「雨続きでお客さん少ないから、大丈夫」
首を傾けて確認し嬉しげに跳ねる。
「一緒にお買い物なのだ!」
ばふんと抱きついて、一瞬不満げな色を浮かべる琉伊。
「暗くてもおっきくなれない……」
撫でられてぎゅっと抱き上げられる。
「琉伊、重さ調整しちゃダメ」
「る? 決めた一定を目指してるのだ! 今は渚が持ってるからかぁるくしてるのだ!」
「ダメ」
「るぅ」
黄色の明るい傘をポンと広げ、水色の長靴を履いて、くるりと回る。
「渚〜。お外のお店に行くのだ! ところで何を買うのだ?」
「いろいろ」
「楽しみなのだ!」
『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』
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青空家メイン渚ちゃん
ショッピングモールが目的地かな?
雨だし。




