冬桜の降る下で
ウマくいかない。何もかも。
チクショウ。
ガシッ。
八つ当たりで、目の前の冬桜の木を蹴った。
白い花弁が、俺の上に振って来た。
昨日―――
「言いずらいんだがね。君、XX課に移動してくれ。」
言いずらそうには見えない、部長の通達だった。
XX課・・・。つまり、厄介払い。
よくある話。辞めろとハッキリ言わないが、遠まわしに不要宣言されたワケ。
室内では、小さく失笑やら、コソコソこっちを盗み見て言いあってる同僚たち。
この嫌がらせは、俺が部長の意見に逆らったあの日の報復か。
これまでも、ネチネチと厭味を言ってたくせに。
沈んだ気持ちでアパートに帰ると、玄関先に彼女の姿が。「どうした?中で待ってれば良かったじゃないか。」
バシンッ。
いきなりビンタ喰らった。俺が目を白黒させてると、彼女は俺を睨みながら言った。
「どうせ、なんで怒ってるかも解らないんでしょ?」
・・・・。解らない。
「サイテー。もう、無理。さよなら。」
そう言い残して、鍵の入った封筒を俺に投げつけた。
散々、我儘言ってたくせに。
未練など無かったが、一方的に悪者にされた気分で、ムカつく。
なんだよ。なんなんだよ。
その日は、ムシャクシャして自棄酒呷って寝た。
次の日、つまり今日。
俺は、自分を落ちつけようと冬桜の咲く、この公園に来た。
でも、思い出せば思い出すほど、腹が立つ。
空気に色が見えるならば、きっと俺の周りは、どす黒い。
はらはらと。
降りしきる冬桜。
「綺麗ですね。」
声を掛けられ、俺は振り返る。
冬桜の降る下で。
―――黒の世界は、一瞬で吹き飛んだ。