第一章 任命
私はこの世界が嫌いだ。父上のおっしゃることは絶対、学校ではいじめられる、城では変に気を遣われる。
ここは地獄だ。嫌なことばかりだから地獄なのではなく、本当に地獄ー下界なのである。ここは死者たちが暮らす、死者たちのための世界。ひとついわせてもらうと、私は死者ではない。閻魔大王の娘だ。
そして今私はその父上に呼び出しをくらい、とぼとぼと歩いている。なんといっても父上の呼び出しだ。いい知らせなわけがない。
「私・・・なんもしてないよね・・・?」
つぶやくと、ひとつの魂が私に近寄ってきた。
「碧様、みつかってよかったです。閻魔様が急げとのことで」
私はその魂にたずねた。
「ねぇ、私なにもしてないわよね?要件はなんなの??」
魂が困った顔をする。
「それは・・・わたくしも存じないのであります。・・・とにかく、お急ぎください!」
「わかった、わかりましたって・・・」
いく気、余計に失せた。
「父上、お待たせいたしました」
大きな扉を開けると、そこは緊張感のかたまりだった。
「おお、碧か・・・」
父上はため息をつきながらいい、うなった。
私は一歩一歩歩き、いつもの位置でひざまづいた。
「なんでしょうか父上」
謎の沈黙。父上はやっとのことで口を開いた。
「碧よ」
「はい、父上」
そしてまた沈黙。何を言われるのか。父上の沈黙は恐ろしい。
「お前を孤独の審査員に任命することにした」
「えっ・・・」
全員が固まった。父上だけが、平然とした顔をしている。
「もうよい、さがれ!」
「は、はっ!!」
父上の怒鳴り声に、私は走った。泣きながら、走った。
怖くて、自分の部屋にもどった。息が上がる。ショックで、ただただショックで。
「嘘・・・まさか・・・なんで・・・この私が・・・」
孤独の審査員は、地獄の魂たちに与えられる仕事。それに、この私が選ばれるだなんてー聞き間違いだ。そうに決まっている。
「碧ー碧ー」
誰かがドアをノックした。
「な・・・によ!!」
乱暴にドアを開けると、そこにはコウがいた。
「こ・・・コウ・・・」
「碧・・・大丈夫か?なんて言われた?何があった?」
コウは事情を知らないらしい。やっぱり、聞き間違いなのか?そうだと、嬉しい。でも、そんなことはない。今でもはっきり、耳の中に音の振動が入ってゆく感覚が残っている。
「お前を孤独の審査員に任命することにした」
私は心なくつぶやく。
「え?」
「お前を孤独の審査員に任命することにした!」
叫ぶ。
「お前を孤独の審査員に任命することにした!!!!!!!」
また、叫ぶ。
「お、お前を!孤独の審査員に・・・!任命することにした・・・!!」
涙声で。
「コウーーーーーー!!」
私はコウに抱きついた。そして、泣いた。泣いた。泣いた。独りで泣くのが怖くて、泣けなかった。孤独が怖くて。その孤独を、判断する仕事を、私がするだなんて。怖くて、ただ怖くて。
私は、どうしたらいいか、わからなかったんだ。
mioです。
これは、私が6年生のときに思いついたもので。それを、書き直して見ましたw
ヘタクソですし、未熟ですけど、よろしくお願いします。
これからも見守っていただければ、幸いです。