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よそ見

カンッ



カンッ





と模造刀の木のぶつかる音が響く昼下がり。

汗がにじみ、腕の重さを感じる。



王宮の訓練所で稽古をしてると、遠くに見える廊下の柱の影にリディアさんが見えた。



何をするでもなく、柱の陰で隠れるようにただ誰かを、何かを待っているように見えた。

何をしているんだろう。



リディアさんをじーっと見ていると、目が合い、にこりと笑ってくれた。



あ、気づいてくれた。

リディアさんはよく見てる。

いつも礼儀正しくて、俺がリディアさんに気づくより先に、リディアさんはたいてい俺のことを認識している。そして、いつもにこりと笑っている。





手を振ってもいいかな?







迷った宙ぶらりんの手を挙げようか迷っているうちにリディアさんは廊下を歩きだした。





廊下の角からアルフレッド殿下が見え、リディアさんは立ち止まり挨拶をし、

リディアさんは来た道に戻るようにアルフレッド殿下とともに歩き出す。



なんだ、

アルフレッド殿下を待っていたのか。





ぐっと心が重くなる。待ち合わせかな?とか、二人は仲がいいのかな?とか余計なことばかり頭によぎる。二人が仲いいからなんだよ。と自分に言い聞かせても、胸から湧き上がる熱い何かで、落ち着かない。



視線が離せず二人を見ていると、二人の前からバタバタをドレスを大きく揺らしながら走るイザベラ様がアルフレッド殿下の横を通り過ぎようとしたとき、イザベラ様は大きく躓いた



あぶない!



ここからじゃ叫んでも意味無いか。と思う反面、足だけが一歩、イザベラ様の方に向いた。



結論、ここからじゃ、俺は何も助けになれず、

イザベラ様をアルフレッド殿下がかばい、二人は抱き合うように倒れこんだ。



二人は顔を真っ赤にして恥ずかしそうに、慌てていてとても可愛らしい。なんて言ったら失礼か。

俺だって、誰が相手でもあの状況は恥ずかしいな。とか思って見ていた。



でも、リディアさんだけは、

こんな状況、だれでもびっくりするはずなのに、リディアさんの目には驚きも、心配もなくいつものように笑っている。

まるで分っていたかのように。





リディアさんはにこにこしたまま、二人に一言、二言、話をしてその場を去っていった。

その言葉を聞いた二人は、恥ずかしそうにしていた。

きっと、冷やかすような、その場を楽しませるような一言を言ったんだろうな。





満足そうに、歩いてきた道をまた歩く。

リディアさんは結局、何がしたかったのかな…



俺に背中を向けて歩くリディアさんを見送っていると、リディアさんは顔だけ振り向き、俺を見てにこりと笑って、また背を向けて歩き出した。

ドキッとした。



俺に気づいて笑顔を向けてくれたってだけで嬉しい。

すべてを見透かされている気分だ。

リディアさんには、到底かなわない。 ニヤけそうになるのを必死に堪えて、俺は腕で顔を覆った。





「クラウス、お前よそ見しすぎ。」



ガンッ



頭に強い痛みが走る。

訓練中だったことをすっかり忘れていたせいで、同僚に強めの一撃を食らってしまった。

のぼせてたぐらいだ。これくらいでちょうどいいかも。

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