手の中に
最近の日課になってきているサロンで
リディアを見つめていると、リディアはふと窓の外の中庭に目をやる。
中庭を見るとアベルが、いつものように東屋でくつろいでいた。
ふーん
面白くない。
夜会の時に、僕との挨拶もそこそこにアベルのもとに行った。
少し前もそうだ。庭園の前を通った時、東屋を見るとアベルと、イザベラ、そしてリディアの三人でお茶会をしていた。
僕は、リディアとろくに話すこともないのに。
「アルフレッド殿下、ギルベルト様、お待たせいたしました。」
紅茶を運ぶ主人公に珍しく話しかける。
「君は僕に興味ないの?」
リディアが僕を見る目には何も映っていない。
好意も、悪意も何もない。
「こうやってお話しできることを光栄に思います。」
リディアは僕の目を見て、にこりと笑った。
いつもそうだ、無下にせず、かかわりもせず、丁寧にかわす。
だから余計に入り込めない。
なのに、アベルとはお茶会までするのか?
下がろうとするリディアの手をつかみ、
「そうは言うが、アベルとはずいぶんと仲が良さそうじゃないか?」
「殿下。」
ギルベルトが止めに入るが、まっすぐにリディアの意見を待つ。
「うふふ、何もかも手にあるアルフレッド殿下も嫉妬をされるのですね。」
意地悪そうに笑うリディアに目を奪われ、頭が真っ白になり、気が付けば掴んでいた手を離した。
「失礼します。」
お辞儀をして去るリディアを、止めることもできず、ただ見送る。
何もかも手の中にある?
今一番ほしい君がいないなら、何もないのと同じだ。
リディアを掴んでいた手を見つめ、強く握りしめる。
おかしな話だ。
少し前までリディアの言う通り、この手の中にすべてがあると思い込んでいた。
でも、今はリディアの視線一つ、言葉一つに一喜一憂して、心を乱される。
きっと僕は彼女の手の上で踊らされているのだろう。
リディアにはかなわない。
そう思う感情は不思議と嫌ではなかった。
気づきたくなかったが、これが愛しいと思う感情なようだ。




