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大切にしているもの

「今日はサロンに寄ろうか」



夕方ごろ、仕事終わりにアルフレッド殿下に誘われた。

最近はよく一人で行っていたのに、今日は一緒に仕事を終えたからか、サロンに一緒に行くことになった。



サロンに行くとほかに人はいなく、彼女は一人で花瓶に生ける花を抱えていた。



「ごきげんよう、アルフレッド殿下、ギルベルト様。」



花束を持ちゆっくりお辞儀する様は彼女らしく完璧だった。



「珍しいね。今日はほかに人がいないんだね。」



「そうですね。ゆっくりなさってください。どうぞこちらへ」



席に案内され、紅茶を待つ間、アルフレッド殿下は体ごと彼女の方を向く。

部屋の隅で紅茶を淹れる彼女を誰が見ても好意的に見つめている。

「リディアは完璧な女性だ。でも、私には興味がないらしい。リディアは霧のようにするっと逃げてしまう。でも、つかめないものはつかんでみたい。」

目線を彼女から離さず彼女には聞こえない声の大きさで、そういうアルフレッド殿下は今までに見たことがないくらい楽しそうだった。



このままだと彼女は無理に殿下の手の中に押し込められてしまうのではないかなんて、ふと思う。



「殿下、彼女は…」



「分かっている。身分が違うと言うのだろう?」



僕の意見を鼻で笑う殿下だったが、

身分なんて、殿下にかかればどうにでもなる。

たとえ、彼女が平民であっても関係ないだろう。





そんなことじゃない。



アルフレッド殿下の幸せを願いたい。

でも、彼女が言わないなら、隠したいのならそのままにしてほしい。

もしそれが、彼女を壊してしまうほどのことだったら。



知らないままの方がずっといい。





「どうぞ」



紅茶を持ってきた彼女は静かに丁寧にテーブルを整える。



その姿をアルフレッド殿下は食い入るように目で追っている。



そんな熱い視線にもかかわらず、彼女はいつも通りでアルフレッド殿下の目を見て、にこりと笑い、アルフレッド殿下がニコニコしながら「ありがとう」と返す。



そして僕を見て、またにこりと笑い、彼女は去っていった。





あぁ、僕も笑い返せたらな。





気の利いた一言も、愛想のいい顔も、彼女に見せたいが、

結局、そう簡単に仏頂面の僕の顔は動かず、会釈するので精一杯だった。



淹れたての紅茶の香りと、彼女の笑顔で頭がいっぱいになる。

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