最初の依頼
俺達はマルム村を出て、森の入り口へ向かった。
朝の冷たい空気に混じって、葉の匂いが心地良い。
「このあたりが、薬草の群生地だと思われます」
「そう、慎重に行きましょう」
森の中は、静かだった。
鳥の声。小動物が枝を走る音。
そしてーー
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◆探索開始
対象:グリーンリーフ
発見率補正:同行者【家政知識+採取経験】適用
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(システム、優しいな)
少し歩くと、特徴的な緑の葉が群生している場所が見つかった。
はっきりと他の草とかは違っている。
「これね」
「葉の緑が白くなっているものが上質です。こういう風に」
ルーチェは丁寧に根を傷つけないように摘み取っていく。
さすがメイド、育ちが違う。
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◆採取成功
品質:良
採取数:5
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(仕事っぽいな)
「お嬢様、茎をねじるより”押してから抜く”方が崩れません」
「なるほどね」
ルーチェに言われるような感じで摘み取っていった。
これは良いな。
だが、穏やかすぎる時間は、長くは続かなかった。
「お嬢様、音が」
草むらが揺れた。
鋭い気配、緊張が走る。
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フォレストウルフがあらわれた
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ウィンドウが出てきた。
俺は杖を構えた。
「ルーチェ、後ろに下がっていなさい」
フォレストウルフの鋭い目が俺を捉える。
次の瞬間、地を蹴った。
「お嬢様、右前方から来ます!」
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ルーチェ:【虚偽:なし/成功率:91%】
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「了解よ!」
UIを組み合わせると、回避出来る可能性が高い。
俺は杖を使って、軌道を弾いた。
骨に響くような衝撃。
重いーースライムやゴブリンとは全然違う。
「グッ……!」
「お嬢様、無理に受け止めないでください! ”避けて戦う”敵です!」
その言葉の直後、フォレストウルフが背後へ回り込む。
(背後か! いやらしい動きをしやがって!)
「ルーチェ!」
「はい!」
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ルーチェはクイックステップを唱えた
グローリア:機動補正+15%
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やはりヒールなのに、ちゃんと地面を踏めている。
「助かるわ!」
足元へ滑り込むように身を低くし、ウルフの噛みつきをかわす。
牙が空を切り、木の皮を裂いた。
「次、左前方! 足が弱いです!」
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ルーチェ:【虚偽:なし/成功率:89%】
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「そこね!」
俺は杖ではなく、短剣を抜いた。
「ぅらぁあああっ!!」
瞬間、男子高校生のような令嬢らしからぬ声が出たが気にしていられない。
左前脚へ刃を突き立てる。
フォレストウルフが悲鳴を上げて跳ね退く。
「ひるみました! 今です!」
「任せなさい!」
ルーチェの光矢が飛ぶ。
フォレストウルフの顔面へ命中。
「グオッ……!」
視界を焼くような光。
狼は頭を振り、隙だらけになる。
俺は迷わない。
「終わりよ……!」
杖を、全力で後頭部へ叩きつけた。
鋭い衝撃音。
ウルフは崩れ落ち、動かなくなった。
倒れたウルフの体温が残っていた。
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フォレストウルフを倒した
レベルアップ
レベル2→レベル3
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「はぁ、はぁ……やった、わ」
手が震えている。
でも、倒した。
心拍が落ち着いてくる。
「お嬢様! 大丈夫ですか!?」
「ええ」
ルーチェが駆け寄る。
その顔には安堵と誇りが宿っていた。
「お見事でした」
「貴女もね」
本当に、ルーチェがいなかったら無理だった。
心からそう思った。
その後も順調に採取は進みーー
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◆依頼達成条件を満たしました
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「これで村へ戻れますね」
「ええ、”働いて稼いだ”最初のお金ね」
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◆称号解放:『初仕事完遂』
効果:村での信用+小
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森の風が優しく吹いた。
ほんの少しだけ、胸が軽くなった。
「案外、生きていけそうね」
「ええ。お嬢様は、お一人じゃありませんから」
ちゃんと働けば認めてもらえる。
それにルーチェが隣にいてくれる。
(まだ、この世界は優しい)
……この時までは。




