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男子高校生、悪役令嬢に転生して断罪されましたが 、追放の瞬間に記憶が戻ったのでハーレム作って魔王ぶっ倒します  作者: 奈香乃屋載叶(東都新宮)


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7/20

ルーチェ・ネレトヴァの覚悟

【ルーチェ視点】

「お嬢様……眠っていますね」


 隣のベッドでよく眠っている姿が見えました。

 私は眠れなかったので寝返りをうちながら、横になっているお嬢様を見ていました。


「本当にお嬢様はあんな罪を犯したのでしょうか」


 昨日の夜からの出来事を思い出す。



(お嬢様はいつお帰りになるのでしょうか?)


 私は舞踏会が終わったはずの時間になっても、帰ってこないお嬢様を気にしていた。

 馬車はご主人様が乗っていただけでお嬢様は居なかった。


「グローリア……ごめんなさい……私を許して……」


 奥様がお嬢様の肖像画を抱きしめながら、謝罪していた。

 明らかに様子が異常でした。

 涙を流して、泣き続けていました。


「奥様……?」


 様子を訊きたかったのですが、訊ける状態ではありませんでした。

 ただ部屋へ付き添うくらいしか出来ませんでした。


「おい、酒を持ってこい!」


 しばらくして部屋に戻ったご主人様は、既にワインを一本空ける勢いで飲んでいた。

 いつもなら、ワインを嗜む程度に飲んでいて、気持ちよくなっている程度。

 それなのに今日は、何故か荒れていました。


「はい! ただいま」


 私はご主人様にお酒を持っていく。

 酔い潰れるのも構わないし、二日酔いにもなっていいかのように、飲み続けているご主人様。

 こんなに飲んでいるなんて。


「足りない……! もっと……くれ……!」


 ご主人様の目は涙を浮かべていて、荒れているのに矛盾しているようでした。

 追加で持ってきましたが、途中でお嬢様が描かれた絵を見ながら泣いていました。


「うう……グローリア……すまない……すまない……」


 この時、ご主人様が酒に逃げないといけない状況になっていると分かりました。

 私は何度もお酒を持っていって、当座の気持ちを落ち着かせる。

 やがてご主人様は酔い潰れてしまい、そのまま眠ってしまった。

 その間もお嬢様を待っていましたが、戻ってくることはありませんでした。


「まだグローリア様は戻っていない……」


 次の日、お嬢様の寝室は無人のままでした。

 どこかで帰ってきた様子も無さそうですし。

 明らかに何かがあった。

 それも昨日の様子も合わせると、お嬢様に何かがあった。


「ご主人様」


 私はご主人様へ話しかけることにしました。

 二日酔いで顔色は悪いのですが、訊きたくなって。


「ルーチェか……私は気分が……」


 話しかけると、少々不機嫌で頭を押さえていた。


「二日酔いで体調が悪いのは存じておりますが、お嬢様に何があったのでしょうか?」


 状況が分からないのは、メイドの私でも不安になりますので。


「確かにそうなるよな。グローリアが戻ってこないから」


「はい。ですから、お教えいただけますか?」


「……グローリアはな、王都を追放になった」


 ご主人様は、ぽつりぽつりと衝撃的な事実を私に話しました。


「お、お嬢様がですか……?」


 王都を追放……

 しかも、誰にも話さずに?

 何が起きたのでしょうか。


「詳しく言うと、フィリップ殿下との婚約を破棄されただけじゃなく、グローリアだけ爵位を剥奪された」


「そんな……!」


 殿下との婚約破棄の上、お嬢様だけが爵位を剥奪。

 家は無事だけれども、お嬢様を破滅させるなんて。

 王家は何を考えているのでしょうか。


「私が悪いんだ……」


 ご主人様は、頭を抱えていた。


「どういうことでしょうか?」


「王宮で無理矢理書かされたんだ。署名しなければ、家を取り潰すと」


「と、取り潰しに……」


 つまりお嬢様と家を天秤にかけさせたのですね。

 取り潰しになれば、私の仕事も無くなって生活できなくなるので。

 それだったら、家を守るしかなかったということ。


「しかもな、グローリアは閉門にしてもう一度教育させるくらいの罰にするって言われていたんだ。騙されたんだ……」


 どんな書類だったのかは分からないのですが、書かされた処罰の内容は曖昧だったのでしょうか。

 完全にお嬢様を殺すつもりなのでしょうか。


「確かにあの子は素行が悪かった。問題だっていくつも起こしていて、悩まされた」


 お嬢様は高圧的で何回か暴力的な行動を起こしていたこともありました。


「だがな、人を殺そうするようなそんな、人物ではないのは、私が知っている」


「私もです」


 それでもお嬢様は優しいところもあって、だからこそ私はお嬢様を好きになっていた。


「エミリア嬢をいじめた上、殺そうとしたなんて、信じられないんだ」


「……同感です」


 お嬢様がそんな事をするなんて……

 考えても絶対にそれはしてないのは分かる。


「だが王家はそれも真実だと断定した」


「……っ!」


「娘は魔王を倒すまで、帰ってこられない……」


「魔王を、倒すまで……」


 この国を脅かしている存在、魔物。

 それの中枢を倒さないと、戻れないなんて。

 はっきりとお嬢様を殺すつもりだっていうのが分かる処分。

 処刑するって言われていないだけ。


「誰も追いかけないのでしょうか?」


「出来るわけない。もしそんな事をしたら、王命に反したことになる」


 よりお嬢様は死ぬ運命しか残されていないということ。


「だから……もうグローリアの事は……」


「お気を確かに……!」


 ご主人様は、涙を流していてすでに亡くなられたような気持ちになっていた。

 私は慰めながら一つの決断をしていた。

 追放されてから時間が経っていないみたいですので、まだ間に合うかもしれません。

 誰も助けなければ、それこそお嬢様は死ぬことになってしまう。

 私はご主人様を部屋に連れていった後、荷物の準備をする。

 でも悠長に選んでいたら間に合わないかもしれない。

 だから必要と思うものを鞄に詰めていく。


「ご主人様、これまで預かっていた給金を出せるだけください」


 落ち着いたご主人様にそう伝える。

 すると当然驚いていた。


「突然、どうした?」


 今まで預かっていたものを、急に引き出そうとしたら理由を尋ねるのは当然ですね。


「もしかして、グローリアを追うのか!?」


「はい」


 私が言う前にご主人様は理由を察していた。

 否定なんて出来ないから、そのまま肯定する。


「そんなのやめるんだ! お前まで死ぬことはない!」


 ご主人様は驚きと怒りの声を挙げていた。


「ですが、何もしなければ孤独なまま死ぬことになります」


「だが、そなたが居たところで……」


「私、多少でしたら魔法は使えます。お嬢様を助けることは出来ますから」


 ネウム家のメイドとして、元々多少なりとも魔法を使用出来る。

 それを活かして働いていましたので。


「……良いんだな?」


「はい。もし不都合がありましたら、お暇を取らせても構いません」


 もしネウム家の人間として行くなら王命に反したことなる。

 ならその立場を無くせばいい。私個人でお嬢様を助けたことになるのだから。

 それに暇を取るなら、預かっていた給金を引き出したって問題はない。


「分かった。現時点をもって、ルーチェ・ネレトヴァを解雇する。今まで世話になった」


 これで私はお嬢様を追いかけるしかなくなった。


「いえ、こちらこそ今までお世話になりました」


 カーテシーをして、ご主人様に感謝を伝える。


「すぐに給金を用意しよう。時間はあまりないが、用意できるだけな」


「感謝します」


 部屋を出ていこうとした時、ご主人様が一言呟いていました。


「……生きて帰ってこい。それだけは、約束してくれ」


「かしこまりました」


 迷うことなく、肯定の返事をしていた。

 私は荷物を持って玄関前へ行く。


「ルーチェ、本当に行くのね?」


 奥様が悲しそうな表情で私を見ていました。

 解雇されたのは形の上。

 しかもお嬢様を追いかけるためだったら、そうなるかもしれない。


「はい。お世話になりました」


「なら……これを持っていって。役に立つか分からないけれど」


 渡されたのはいくつか入っている小さな袋。

 ネウム家の紋章が入っていた。

 開けてみると、小さなペンダントと封をされた手紙が。

 そして夫人は震える手で、私の両手を包みました。


「それは……”名前を名乗れる時”に、力を取り戻すわ」


 何か重要な秘密があるのでしょうか。

 今は分かりませんでしたが、袋を閉じて落ちないようにする。


「お願い……あの子を、ひとりにしないで」


 その手に残されたのは、小さな温もりと、重い責任だった。

 涙を流していて、様々な思いがありそうだった。


「本当は、誰よりも臆病で、誰よりもさみしがり屋なのよ」


 夫人は涙を流しながら、お嬢様の事を考えていた。


「……分かりました」


 私もほんのちょっとだけ言葉が震える。

 同僚の執事が巾着袋を持ってやってきた。

 ぎっしりと銀貨が詰まっている。


「給金ですが、大量にありすぎると危険なのと、王家から怪しまれる可能性があるので、これだけを」


 重くなって私が歩きにくくなってしまう可能性を考えた配慮で、これだけなのでしょう、


「分かりました。ありがとうございます」


 それでも結構な金額になっている。

 当面の生活は何とかなる。


「そしてこれを」


 渡されたのは、解雇通知書だった。

 アレクサンダー公としての署名もある。

 そして『※本書は王命に反しないことを証明する正式文書である』。


「もしも王家などに”ネウム家”として同行していると言われたら、これを見せるようにと」


「ご配慮、感謝します」


 つまり私は個人の意思でお嬢様に同行している。

 私としてもそれでいい。


「では、失礼します」


 屋敷の中へ向かって、カーテシーをして屋敷を後にする。

 それから、お嬢様を追いかけるために歩いていったのでした。

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