マルム村を出るグローリア
次の日早朝、俺は纏めた荷物を確認していた。
これで村を出る準備は整っている。
「お嬢様、本当にこの村を出ますか?」
ルーチェが念押ししてきた。
朝早くで、まだ滞在することは可能だから。
ここに居れば、安全ではある。今のところは。
だが、俺がグローリア・ルイーザ・ネウムだって知られては、このまま
俺は一瞬迷うものの、一昨日の通達や村の噂、そしてあの子との会話を思い出す。
『ねえ、お姉ちゃん達は聖女様を信じるの?』
やはりこの言葉が頭に残ってしまう。
もしもーー『聖女を害そうとした女』だと知られたら。
あの子は、俺をどう見るだろう。
『お姉ちゃん達は、悪魔なんだね』
そう言われて、俺達の心が傷つくことになる。
ーーそれを聞くくらいなら、名前を捨てて進む方がいい。
だから、早めに移動しないと。
逃げるわけじゃなくて、自分で移動する形だが。
UIで確認する。
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◆出立準備完了
・所持金:安定
・村滞在リスク:上昇傾向
・推奨行動:移動
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移動の準備は出来ているみたいだな。
「ええ。行きましょう」
ということで、俺達は移動をすることに決めたのだった。
マップもここじゃなくて、別の方向を指している。
「分かりました」
ルーチェは頷いている。
これでこの村とは別れることに。
俺は部屋を出ていって、朝ご飯を食べた後に、お世話になった宿屋からチェックアウトを。
「お世話になりました」
「気をつけてな」
数日泊めてくれた事に感謝を伝えると、宿屋の主人から簡単な一言を。
気をつけて、か。
それの言葉は、忠告じゃない。
ーー祈りに近かった。
俺の姿は令嬢だし、ルーチェの二人だから、なお刺さる。
命を大事にしないとな。
「まあ、気持ちいいわね」
朝霧が村を包んでいた。
視界はぼんやりとしているが、歩けないほどじゃない。
村の出口へと向かって歩いていくと、農作業をしている村人が見えた。
朝早くから大変だな。
「笑い声が聞こえるわ」
その方向を見てみると、ぼんやりだけど子供達が笑っている。
楽しそうだな。
少なくとも今は、あの笑い声は消えていない。
俺がいたら、その笑い声が消えるのだろうか。
聖女を信じているみたいだからな。
俺は彼女の敵だからな。
「お、君達、村を出るの?」
最初の依頼人の青年と出会った。
姿を見て察したみたいだな。
「ええ。次の場所へと」
「そうか。頑張ってな、また村に来たときには、依頼を頼むな」
「分かりましたわ」
彼からそんな言葉が。
嬉しくなるけれども、次を受けられるのだろうか。
分からないが。
ここは、悪役令嬢を追い出す場所じゃなかった。
それでも、居続ける場所じゃないのは分かる。
「これでマルム村から離れるのね」
ついに村を示す簡素な木の標識が。
これを越えたら、街道へ。
「ここから先しばらくは、助けを簡単には得られません」
ルーチェが俺に伝えた。
そうだな。
魔物が出てくるだろうから。
多少怖い気持ちはある。だが、立ち止まっていられない。
「だから、わたくしは行くのよ」
「ええ。私もついていきますよ」
ルーチェは微笑みながら、俺の後ろを歩いていく。
こうして、俺達は最初の村を後にしたのだった。
「次はシエラニコシエね」
マップの方向を頼りにしながら、歩いていく。
ここから先は、村か街に着くまで誰も俺を守ってくれない。
だからこそーー俺は自分で進む。
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◆エリア離脱
マルム村 → 街道
・危険度:上昇
・安全圏:解除
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