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男子高校生、悪役令嬢に転生して断罪されましたが 、追放の瞬間に記憶が戻ったのでハーレム作って魔王ぶっ倒します  作者: 奈香乃屋載叶(東都新宮)


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11/20

前婚約者

 食べ終わると、またマルム村を散策することにした。

 農作業をしている人達や、いつもように営業をしている肉屋やパン屋など。

 のどかな感じが、満腹になった俺をさらに癒すようだった。

 ああいう店も良いだろうな。


「依頼って、日が経てば新しいのが出てくるのかしら?」


 ルーチェに出して貰ってばかりだから、また一つ依頼を受けたいが。

 行商人の荷運びの補助なら、安全そうな気はするが半日かかるし、明日も出ているのだろうか。

 ゴブリン討伐は危なすぎるし。 

 ルーチェを必要以上の危険に晒したくない。

 明日以降に、別の依頼が出てくれればいいが。


「状況によりますね。都市ではほぼ確実に毎日依頼が更新されますが、この村で出てくるかどうかは、分からないです」


 確かに依頼したいという状況じゃないと、誰も出さないからな。

 明日、見てみるしかないのかな。

 今日はあの依頼をこなしたし、いいか。

 転生前に仲良かった先輩の話でも、バイトの掛け持ちって疲れやすいみたいだし。


「そうなのね。明日に期待するしかないのね」


 仕方ないか。


「お嬢様、焦らなくても大丈夫ですからね」


 ルーチェは微笑みながら、ちょっとだけ焦れったい俺を落ち着かせようとしている。

 そうだな、ルーチェを心配させる必要は無いな。


「分かるのね」


 俺は苦笑いをした。


(今日は休もう)


 そう思って、また歩いていく。

 と、兵士が馬に乗って走ってきた。

 何かあったのだろうか。


「とりあえず、こっちに」


「はい」


 俺達は見つからないように、身を隠しながら様子を見る。

 おそらく彼は、俺の事を知っているかもしれないからな。

 兵士は村の中心部にある、掲示板に張り紙をしていた。


「王都より告げられた通達だ。フィリップ殿下、聖女エミリア・ラグーサ殿との正式婚約が発表された。そして、”前婚約者の不祥事”も正式発表している」


 そして周りにいた人々へ聞こえるように言う。

 やはりエミリアは聖女になっているのか。

 静かなざわめきが起こった。

 露骨な敵意ではない。

 ただ、空気の温度が微妙に下がったような感じだ。


「この通達に同様のことが書かれている」


 そう言って、兵士は去っていった。

 俺達はその通達を見てみることにした。

 確かに、さっき兵士が言ったことがそっくりそのまま書かれていた。

 ただ、”前婚約者”と書かれいて、”グローリア・ルイーザ・ネウム”という名前は一切無かった。

 さらには、『前婚約者は婚約破棄の上で処分した』と。


「一応、伝わらない、のか?」


 名前はぼかしているなんて。名前を出さずに、ただ“前婚約者”で処理する。それが一番、残酷だ。


「ですが、グローリア様が婚約していた事は、王都周辺でも知っているはずです」


 やっぱりそうだよな。

 長年フィリップ殿下と婚約していたからな。

 それに、婚約者であることを傘にして、悪行をしていたから。

 と、ウィンドウが表示された。


ーーーーーーーーーー

◆世界認識 更新

エミリア・ラグーサ:婚約者及びヒロインとして認識

グローリア・ルイーザ・ネウム:”前婚約者”及び悪役令嬢として認識


村の空気変化:微弱

ーーーーーーーーーー


 村人達はいつも通り笑っていた。

 けれど、その笑顔の奥底に、”様子を探る薄い膜”みたいなものが、一枚だけ挟まっている気がした。


「前婚約者って、グローリア様だよな」


 その場にいた村人が名前を出した。

 やっぱり知っている訳か。

 名前だけかもしれないが。


「結構、問題行動をしていたしさ」


 噂だけど、旅人の間で一応知られているんだ。


「エミリア様も殺そうとした噂だってよ」


 それは冤罪だって。


「今はどうしているんだろうな」


「さあ。おそらく、閉門蟄居じゃないか?」


 幸いだったのは、俺の顔がまだ知られていないこと。

 だから俺を見ても、叫ぶ声がなかった。

 SNSがなくて良かったって、この時にはそう思えた。


「お嬢様、今日は……少し早めに宿へ戻りましょう」


その声は優しくて、でもどこか、俺を守るみたいだった。


「…………」


「とりあえず、宿屋に戻りましょう」


「ええ、そうね」


 ルーチェの言うとおりだ

 変に目立ったら、俺がグローリアだって知られてしまう。

 ということで、早々に宿屋へ戻った。

 これから作戦会議だな。

 世界はまだ優しい。

 でも、その優しさは、きっと永遠じゃない。

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