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悪役令嬢、ただいま国を立て直し中  作者: AAA
第一部

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第五章:聖女派の陰謀 ―愛か、策略か―

「……聖堂に呼び出された、ですって?」


宰相執務室の扉を閉めるなり、私は眉をひそめた。

宰相補佐官――つまり、私――に届いた“教会派代表”からの招待状。

文面は丁寧だが、行間に毒がある。

《貴女の信仰心を陛下と共に確認したい》……なんて、要するに「脅し」だ。


「行くべきではありませんわ。」

私は紅茶を置き、はっきり言った。

「今、王国の改革が進んでいる最中に、彼らに弱みを見せたら終わりです。」


レオンは静かに私を見る。

その目はいつもより暗く、冷たい。


「……ですが、あなたが行かなければ、“王室が教会を敵視している”という口実を与えます。

それは、国を分断させる火種になる。」


「……つまり、行けと?」


「護衛は私が務めます。」


「……あなた、やけに早く答えましたわね。」


「あなたが断ると思っていましたから。」


「……ほんと、腹黒宰相って予知能力でも持ってますの?」


「あなたを見ていれば、行動の先は読めますよ。」


「……それ、褒めてませんわよ。」


笑い合ったけれど、胸の奥には妙なざらつきが残った。

その瞳の奥に、一瞬、言葉にできない影を見た気がしたから。


【レオン視点】


“共犯”と呼ばれて、どれほど嬉しかったことか。

ヴィオレッタのあの目――誰も信用しない強がりの奥で、初めて見せた「信頼」。

それを壊すわけにはいかない。

だが。


机の引き出しに隠した密書。

『枢機卿へ。標的変更。悪役令嬢を排除せよ。』


この指令を、私は陛下から直接受けた。

教会派が動き出す前に、彼女を“排除”する。

……そう、“死”ではない。

名を消し、遠国へ追放する。それが陛下の命令。


彼女が真実を知れば、必ず怒るだろう。

でも、守るためには、嘘も必要だ。

私の役目は、彼女を救うために彼女を裏切ること。


「……共犯、ね。」


思わず口の中で呟く。

甘い言葉ほど、最も残酷な呪いになる。


聖堂は白と金で飾られ、冷たい香の煙が立ちこめていた。

私は背筋を伸ばし、レオンの腕を取る。

その瞬間――

空気が変わった。


壇上の枢機卿がゆっくりと口を開く。


「宰相殿、そしてランベール嬢。

王国改革の名の下、神の意志に背く行いがあるとの報告がありました。」


「……神の意志、ですって?」

私は軽く笑ってみせた。

「“神”とは、いつから財務報告書の改ざんを正当化するようになったのかしら?」


「貴女のような異端者が陛下の隣に立つことこそ、神への冒涜だ!」


聖職者たちの怒号が響く。

私は一歩前に出ようとしたが、レオンの手がそれを制した。

彼の指が、強く私の手を握る。

その力に、ほんの一瞬、震えを感じた。

――怯えている? この男が?


「……ヴィオレッタ。下がってください。」


「なにを……」


「陛下の命令です。」


「……え?」


レオンは懐から一通の封書を取り出した。

王の紋章。

封蝋が、赤く光る。


「これより、ヴィオレッタ・ランベール公爵令嬢を、王国監査官の職より解任し、国外に追放する。」


ざわっ……!


空気が、凍りついた。

私の頭が真っ白になる。

何かの冗談?

いや、レオンの目は真剣で――けれど、悲しそうで。


「……あなたが、これを?」


「……そうです。」


その声に、微かな震え。

私は笑うしかなかった。

喉の奥で、乾いた音がこぼれた。


「……ふふ、なるほど。

共犯だなんて言って、最初から“駒”にするつもりだったのね。」


「違う。これは――」


「言い訳はいりませんわ。宰相閣下。」


扇子を閉じ、背を向けた。

涙なんて見せない。

“悪役令嬢”が、涙で終わるなんて御免だ。


ただ、紅茶の香りだけが、いつまでも胸に残った。


【レオン視点】


彼女が扉を出て行ったあと、

枢機卿がにやりと笑った。


「見事でしたな、宰相殿。

これで“聖女派”は安心でしょう。」


「……ええ、安心ですとも。」


私はゆっくりと立ち上がり、懐からもう一通の封書を取り出す。

封蝋には、別の印章――“王妃陛下の紋章”。


『作戦第2段階へ。

ヴィオレッタを隠せ。

彼女の命こそ、改革の切り札。』


レオンは、深く息を吐いた。


「……ごめん、ヴィオレッタ。

あなたを“追放”したのは、救うためだ。」


その声は、祈りのように小さかった。

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