第四章:紅茶館での魔導符的事件
紅茶館の午後は、いつもより穏やか……のはずだった。
だがヴィオレッタの手元には、今日の小さな悪戯用に仕込まれた魔導符がある。
「……今日は、香りで嘘を見抜く魔導符を試してみますわ。」
リュシアンは慌てて後ろに下がり、顔をこわばらせる。
「お嬢様……また何か大きな事件が起こりそうです……」
ヴィオレッタは両手を軽く広げ、カウンターに並ぶカップを観察する。
その視線の先には、今日もレオンとアレクサンドルが座っている。
「さて、二人とも……どちらが真実を言っているのか、紅茶で試してみましょう。」
ヴィオレッタが符を床に置くと、魔導符は突然暴走し、館内の全てのカップから香りが混ざり合った。
レオンは眉をひそめ、館内を見渡す。
「……またか、これが日常戦か。」
アレクサンドルは冷静にカップを持ち上げるが、香りの混乱に微かに眉を寄せる。
リュシアンは完全にパニック状態で、ティースプーンを握りしめる。
「お嬢様……誰か止めてください、館内が……!」
ヴィオレッタは肩をすくめ、符を慎重に回収しながら微笑む。
「……ふふ、紅茶による心理戦も、時には大混乱を呼ぶものですわね。」
レオンは無言で符を見つめ、静かにため息をつく。
「……紅茶館での任務も、なかなか油断できぬな。」
アレクサンドルは静かに紅茶を持ち、香りを確かめながら微笑む。
その瞳の奥には、まだ読者にも分からない“計算”が光っている。
「……やはり、紅茶館の午後は侮れませんね。」
リュシアンはようやく息をつき、ティースプーンを揺らす。
「……次回こそ、平和な午後になりますように……」
紅茶館には、笑いと混乱、そして微かに緊張感の残る午後がゆっくりと流れていた。
ヴィオレッタは胸の内で小さく笑い、今日も心理戦と三角関係を楽しんでいるのだった。




