第十四章:王国の再生 ―悪役令嬢の下剋上完結―
朝日が王都の尖塔を淡く染める。
夜の闇が消え、石造りの廊下は穏やかな光に包まれた。
マルコム卿の陰謀は完全に暴かれ、書類は王に提出され、枢密顧問としての資格を剥奪された。
「……やっと、すべて終わったのですわね。」
私は深く息を吐き、胸に抱えていた書類をゆっくり下ろす。
宰相レオンが隣で、静かに頷いた。
「……ヴィオレッタ、お前の判断と勇気がなければ、
ここまで王国を守れなかった。」
彼の言葉に、心の奥で小さな熱が走る。
怒りや恐怖ではなく――達成感と、信頼の温もり。
私は微笑み、紅茶館での教訓を思い出す。
「紅茶は、熱いうちに味わうもの。
陰謀も、策略も、早めに潰さなければならないのですわ。」
王都での任務を終え、私は紅茶館へ戻る。
店は無傷だった。森の中で、夜風に揺れながら静かに営業を続けていた灯り。
「……ただいま。」
小さく呟き、扉を開けると、リュシアンがカウンター越しににこやかに笑った。
「お帰りなさいませ、お嬢様。
王都での戦いの結果は、こちらにも届いております。」
「ふふ……ありがとう、リュシアン。」
私は書類をテーブルに置き、紅茶を淹れる。
この一杯は、勝利と再生の味。
香りが立ち、過去の屈辱や追放の記憶が、少しずつ溶けていく。
レオンも紅茶館に現れ、私の隣に座る。
「……ヴィオレッタ、王国の再建はこれからだ。
そして、お前の名誉も完全に回復する。」
「ええ。紅茶館も再開ですわ。
もう、ただの店ではなく、王国の情報網の拠点でもありますの。」
私は微笑みながらカップを掲げる。
「そして、宰相閣下。貴方には、紅茶一杯では済まされませんわね。」
レオンは笑みを浮かべ、静かにカップを受け取る。
二人の視線が重なり、沈黙の中に信頼と連帯が広がる。
森の風が、紅茶館の扉を揺らす。
朝の光とともに、新しい一日が始まる。
悪役令嬢ヴィオレッタ・ランベール――
追放され、策略に翻弄された彼女が、自らの力と知恵で王国を守り、名誉を取り戻したのだ。
紅茶館の小さな火は、これからも王都の闇を照らす――
静かで、温かく、しかし確かな力を持って。
エピローグ
森の紅茶館では、今日も香り高い紅茶が淹れられる。
情報は集められ、策略は練られ、
王国の秩序は、悪役令嬢と宰相、そして忠実な仲間たちによって守られている。
「……さて、次はどんな陰謀が舞い込むのかしら。」
私は笑い、カップを傾ける。
紅茶の香りに包まれながら、ヴィオレッタの“下剋上”は、新たな日常と共に続くのだった。
〜fin〜




