第一章:断罪イベントが始まったけど、台本と違うのは誰のせい?
「ヴィオレッタ・ド・ランベール、公爵令嬢でありながら──己の嫉妬で侯爵令嬢リリアを陥れた罪、万死に値する!」
……はい、出た。断罪イベント。
煌びやかな舞踏会場の中心で、第二王子アランが高らかに宣言する。
まばゆいシャンデリア、ざわつく貴族たち、そして涙ぐむ「聖女」リリア。
完璧な構図。
──脚本通りなら、私はここで泣き崩れ、すべてを失い国外追放の運命。
けれども。
「……はぁ。台詞、最後まで覚えたのね、アラン様。」
「な、何だと?」
私は扇子をパチンと閉じて笑った。
周囲がざわつく。
リリアが震える声で言う。「ヴィ、ヴィオレッタ様、反省の色が見えませんわ!」
「だって、反省する理由がありませんもの。──その“証拠”の手紙、あなたが書いたのよね? 字が雑すぎて筆跡偽装になっていませんわ。」
「!?」
王子が目を見開く。私はゆっくりと前に出た。
こんな杜撰な計画に流されて、断罪ルートなんてごめんだ。
「この舞踏会、録音魔法が仕込まれているの。──昨夜、あなたが侍女に“計画”を命じた会話、きれいに残っているわ。」
ざわっ……!!
貴族たちの間にどよめきが走る。
私はスカートの裾を翻して一礼した。
「というわけで、“断罪”はお返ししますわね。陛下、どうぞお聞きくださいませ。」
玉座から立ち上がる国王陛下が、渋い顔で魔法球を受け取る。
再生の呪文を唱えると、リリアの甘ったるい声が響いた。
『王子様が可哀想って泣けば、ヴィオレッタは終わりよ〜。ふふっ、これで私が王妃♪』
再生魔法による再現音声
……会場の温度が一気に氷点下に下がった。
リリア、真っ青。
王子、真っ赤。
私、にっこり。
「アラン様? “彼女は無実だ!”と叫ぶ練習を、もう一度なさっては? きっと今度は“彼女”が変わると思いますわ。」
「ヴィ、ヴィオレッタ……これは……!」
「ご安心を。──陛下にお許しいただければ、あなたの婚約は破棄で結構。代わりに私、王国監査官として汚職調査を担当させていただきます。リリア様のリンドール侯爵家から始めましょうか?」
「な、なぜそんなことを……!」
「だって、悪役令嬢は根に持つの。」
私は満面の笑みで宣言した。
拍手が起こる。
なぜか一部の貴族夫人たちが立ち上がって「よく言ったわ!」と叫んでいる。
──断罪イベント、完。
……いや、ほんと。
「悪役令嬢」って、やってみるとストレス解消になるわね。
次はどこの貴族を成敗しましょうかしら。




