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6話 奪われた日常

鐘の音が響き渡った直後、僕たちは城へ呼び戻された。玉座の間に跪くと、厳しい表情の老臣が一歩前へ出る。


「報せが入った。東境に近いレーヴ村の近くに、新たな歪み(アビスリフト)が発生した」


胸の奥がきゅっと縮む。

(また……歪み(アビスリフト)が……)


老臣は淡々と告げる。


「規模は小さいが、放置すれば拡大する恐れがある。加えて、ヴァルディアの部隊がすでに現地へ向かったとの情報もある」


すると王が静かに口を開いた。


「……故に、フィオル=アズレア、カリナ=アルディナ、そして異界より来たりしラピスとセレナ。お前達をたった今より王直属の【特別班】とし、任務を命じる。直ちにレーヴ村へ向かい、歪み(アビスリフト)を調査せよ」


カリナは力強く頷き、剣の柄に手を置く。

「御意」


セレナは静かに頭を垂れラピスも小さく「がんばる」と呟いた。


僕は唇を引き結び、胸の奥に熱を感じる。

(……またヴァルディアと鉢合わせになるかもしれない。)


こうして、僕たち【特別班】の最初の任務が始まった。目的地は辺境の村レーヴ。そこに生じた新たな歪み(アビスリフト)の調査。





街道を進みながら、僕らの会話は途切れなかった。


「ねぇフィオル?」

ラピスが僕の杖を指さし、興味津々に身を乗り出してくる。


「フィオルの使ってた魔法、すごかったよ!あれってどういう仕組みなの?」


「えっと……人にはそれぞれ【得意とする属性】があるんだ。火、氷、水、雷、風、光、闇。七つあって、僕はその中の【光】が得意なんだ」


「光……」

ラピスが小さく呟く。セレナは横目で静かにこちらを見つめていた。


カリナがにやりと笑って口を開く。


「簡単に言ってるが、【光の理力】は滅多に現れない稀少なものだぞ。少なくとも今この大陸にいる【光の適性者】は、フィオル……お前ひとりだ」


セレナが頷き、言葉を重ねる。


「なるほど……あの光の結界を形にできるのはその稀少な資質ゆえ、ということなのですね」


「やっぱりすごいんだね、フィオル!」


ラピスが目を輝かせる。僕は顔を赤くして視線を逸らし、話を続けた。


「……七つの属性は世界を巡る根源の力。人は誰もがその力を宿して生まれるけど、どの属性に選ばれるかは魂の共鳴次第って言われてる」


セレナが頷く。


「理力と魂の共鳴……なるほど。そこで適性が定まるのですね」


「じゃあ、『ひとりにつきひとつ』だけ?」

ラピスが首を傾げる。


「うん、基本的にはそうだよ」


カリナが腕を組んで笑う。


「ただな【召喚魔導士グランド・エヴォーカー】と呼ばれる者だけは別格だ。『七つすべての属性』を使いこなしさらには精霊や獣を自在に呼び出したなんて言われる人間離れした魔導士。実際、七つの理力以前に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()に等しいのに、とんでもない話だよ」


「ぜ、全部!? それって、神様みたいじゃん!」


ラピスの目がまん丸になる。


「実際そうだな。特に、光と闇、この二つは本来相容れない理力だ。【光の適性者】すら滅多に現れない稀少なものなのに【闇の適性者】がこの時代にいるのかすら定かじゃない。その両方を操るなんて……神話の中でしか語られない話さ」


「……つまり召喚魔導士グランド・エヴォーカーを目指すなんて」

セレナが言いかけると、カリナはきっぱり言った。


「不可能だ」


幼い頃から見てきた叶うはずのない夢。幼馴染と語り合ってきた夢。その夢のハードルがいかに高いかが改めてわかった気がした。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()いればいいぐらいの選ばれた能力なのに。()()()()()()()()()()、さらに召喚獣を顕現させるなんて。


「…それでもいつか……僕は目指してみたいと思ってるよ」


カリナはにやりと笑い、僕の肩を叩いた。


「ははっ、いいじゃないか。その気持ちだけでも充分、立派な魔導士だ」


だけど、肯定してくれたような優しい声だった。ラピスも頷きながら満面の笑みを見せ、セレナも静かに頷いた。





やがて丘を越えると、遠くにレーヴ村が見えた。その空の向こうで黒い霧(アビスマター)が空気を蝕んでいる。畑は枯れ、家畜は衰弱し、村人たちは病に倒れていた。


村の入り口で黒い霧(アビスマター)に覆われた異形の獣が、駆け回っていた子どもに襲いかかる。


「グルゥアァァァッ!!」


「まずい……!」

カリナが剣を抜く。僕も杖を構えた。


聖光の帳(ルミナ・カーテン)!」


光の幕が広がり、子どもたちを包み込む。直後セレナの矢が獣の脚を射抜き、ラピスが必死に短剣を突き立てる。最後にカリナの剣が首を裂き、黒い霧が四散した。


残されたのは、ただの衰弱した犬の死骸だった。


「……元は犬だったんだね……ひどい」

ラピスが悲しげに呟く。


カリナが真剣な顔で僕らを見渡した。


「いいか。ここからが本番だ。歪みの源と規模を確かめるぞ」


僕は深く息を吸い、杖を強く握った。

「……うん。行こう」


『6話 奪われた日常』を

最後まで読んでいただきありがとうございました。


この物語の鍵となる【召喚魔導士】の偉大さに

このエピソードで軽く触れております。


世に出てるゲームの中の魔法キャラは

いろんな属性の魔法を扱えますよね。

でもこの作品の中のキャラが扱えるのは

例外を除き一つの属性だけとなっています。


人は一つの属性に適性して生まれてきます。

フィオルは希少とされる光を宿していますが

それも基本的には、火、水、氷、風、雷。


『召喚魔導士』とはその希少とされる光を

含めた全ての属性に適性しないとなる事ができません。


2つの属性に適性出来る人すらもこの世界では

1/100とされているのにとんでもない話ですよね。


フィオルが目指す【召喚魔導士】とは

そんなとんでもないものなんです。


この物語の主人公は

そんなすごいものになろうとしてるんだ!

って言うのがこの話で伝わってくれたらと

思ってます!


次回『黒鉄の騎士』へ続きます。


お楽しみに!

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