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5話 城下町の買い物

翌朝。

僕はラピスとセレナを連れて、活気にあふれる城下町へ繰り出していた。昨日の謁見のあと、カリナからこう言いつけられている。


「ラピスの羽は目立ちすぎる。隠せる外套を買ってこい。それと、武器や道具の準備も一緒に見てきてやれ。」


というわけで、僕らはこうして買い出しに来ているわけだ。


石畳の通りには人がひしめき、露店の呼び声や楽器の音が入り混じって耳を賑わせていた。革具、ローブ、魔導具、携帯食料に回復薬……並ぶ品々は冒険者や魔導士を相手にしたものばかりだ。


「わぁ……!人がいっぱい!ぼくの村じゃ、こんな賑やかな場所なかったよ!ねっ?セレナ!」

ラピスが大きな瞳をきらきらさせ、左右をきょろきょろと見渡す。


その背にセレナが素早く外套を被せた。


「ラピス様、フードを深く被ってください。それに羽を見られれば、無用な騒ぎを招きます。あまり目立たぬように。」


「……うん」

ラピスは少し残念そうに肩を落とす。


(あんなに綺麗なのにな……)

つい心の中でそう呟きながら、口からもぽろりと出てしまった。


「でもさ……やっぱり隠すの、もったいないくらい綺麗だよね」

「えへへっ……そうかな?」

ラピスは頬を赤くして笑う。セレナは小さくため息をつき、きっぱりと言い添えた。


「軽々しく口にすべきではございません。その羽は特別な証なのですから」



武具屋では、セレナが真っ直ぐ弓具の棚へ向かい、真剣な眼差しで品を吟味していた。


「……この弓。軽量でありながら、引きも十分に効きます。人間界の弓、実に興味深い。」


隣でラピスは小さな短剣を手に取り、首をかしげる。


「ぼくも……こういうの、持った方がいいのかな」


「護りはわたしの務めです。ですが護身用に一本持つのは悪くありませんね」


(ほんと、真面目だなぁ……)

僕は思わず口を出す。


「なんか……セレナって冗談通じなそうな真面目タイプだよね」


ラピスがぱちくりと目を瞬き、ふわりと笑った。


「……うん。でもね、あー見えて可愛いところもあるんだよ」


(……うそ)

僕はちょっと驚いてラピスを見返す。セレナはちらりとこちらを見たが、何も言わず、弓の弦を確かめ続けた。


雑貨屋では、保存の効く食料を買い込む。ふと店主が差し出した小瓶に目が留まった。


「回復薬か。高いけど、一つくらいは持っておいた方が安心だね」


「そうですね。傷薬も、念のため買っておきましょう。戦場では、些細な備えが生死を分けます」


セレナが冷静に必要数を計算し、迷いなく購入していく。やがて袋がどんどん重くなり、ラピスが抱えながら小さく笑った。


「こうして歩いてると……なんかちょっとわくわくする」


「わくわく、か」

僕は少し苦笑して答える。


「僕は正直、不安の方が大きいけど……ラピスがそう言うなら、少し安心するよ」


ラピスの羽が外套の中で小さく震え、その横顔はどこか誇らしげに見えた。



買い物を終えて石畳を歩き出す。遠くで鐘の音が鳴り響き、賑やかな町に一瞬だけ静寂が落ちる。

それは、僕らを再び歪み(アビスリフト)の渦へ導く合図のように聞こえた。


 


『5話 城下町の買い物』を

最後まで読んでいただきありがとうございました。


次回予告


フィオル、カリナ、異世界のからの来訪者

ラピスとセレナは王直轄の【特別班】となり

新たな歪み(アビスリフト)が生まれた境界の村の

調査へと派遣される。


農業で静かな暮らしをしていた辺境の村は

黒い霧に蝕まれ静かな営みに

影響が出始めていた。


初任務に挑む【特別班】フィオルたち。

しかし、霧の奥で待つのは

歪み(アビスリフト)だけではなかった。


黒い異形と化した動物が村を襲う。

再び姿を現すヴァルディアの影。

そしてフィオルの【光】が、試される―。


次回、『Chapter02:特別班始動』

10月13日18時に投稿いたします!

お楽しみに!

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