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39話 「燃え落ちる塔、届いた約束」

その頃、蒼天の塔・頂上。

僕は両手を広げ、結界を維持していた。


まだここまで脅威は届いていない。

でも、下の階から響いてくる轟音と熱気で

戦いがどれほど苛烈かは嫌でもわかる。


隣ではラピスが胸にスラチャビを抱きしめて

祈るように目を閉じていた。

その姿を横目に、僕の脳裏に昨夜の作戦会議が蘇る。



_決戦前夜・作戦会議室



「えっ!? 蒼天の塔を囮にする!?」


驚きの声を上げたのは僕自身だった。


「そうだ」

カリナは涼しい顔で言う。


「おそらくだがロイとイザリアが

 真っ先にここを攻めてくるだろう。」


腕を組み、僕らを鋭く見回す。


「正直に言う。イザリアはともかくロイを抑え込める保証はない。あの強さは異常だ」


セレナが静かに問い返す。


「では……塔を囮にするというのは、

 どういうことです?」


「単純だよ」

カリナは机を指で叩きながら続けた。


「あの”爆発女”は煽れば煽るほど火力を上げる。狂ったように突っ走る分、視野は狭くなる」


セレナが言いかける。

「つまり、長期戦に持ち込めば……」


「ああ。痺れを切らして勝負を決めようと火力を限界まで上げるだろうな」


カリナは頷き、口元を歪めた。


「イライラしたら一気に火を噴く。

 その瞬間を狙って、あたしの風を送り込む」


「でも……風をぶつけたら

 炎が逆に煽られてしまうのでは?」


セレナが眉をひそめる。


「その通り」

カリナは不敵に笑った。


「吹き消すんじゃない。逆に燃え広がらせる。消されまいとあの女も火力をさらに上げる。炎をさらに大きくさせれば……部屋そのものが焼けていく」


「塔を……焼く……」


思わず僕の口から言葉が漏れる。

カリナは頷いた。


「そう。蒼天の塔を崩壊させる覚悟を持って奴らを撤退させる」


沈黙。

けれど、理屈としては現実的だった。


「頂上はフィオルの結界で守られている。だから塔が倒壊しない限りお前らは安全だ。あたしとセレナも、タイミングを見て上に逃げ込む。そして」


転移の石(トランシティア)を使って脱出する……」


僕が言葉を継ぐと、カリナは頷き、ラピスは羽根を揺らした。


「そういうことだ。勝つためじゃない。

 ラピスを守るために、塔を囮にする」


そのとき、老臣が声を荒げた。


「馬鹿な! 塔は王国の象徴だぞ!

 それを、炎にくべるなど……!」


場の空気が揺れる。

でも王は目を閉じてから深く息を吐き、静かに言った。


「……致し方あるまい。塔よりも守るべきものがある。この国と異世界から来た客人をな。塔一個倒れたところで国がなくなるわけではないからの」


老臣は歯噛みしながらも黙り込み、決意は固まった。

最後に、カリナは悪巧みをした顔をして王と老臣の耳元で何かを囁く。

王は力強い笑みを見せた。


「ふぁっふぁっ……なるほど面白い。

 老いぼれではないところを示すとしよう」



_現在



結界に理力を注ぎ込みながら、僕はあの時のカリナの横顔を思い出す。


仲間を生かすためなら、国の象徴すら燃やす。

その鋼みたいな覚悟が、彼女の強さなんだ。


「ちゃんと、

 無事に戻ってきてよ。みんな....」


僕は小さくつぶやき、結界に力を注ぎ込んだ。


玉座の間は、灼熱の渦に沈んでいた。

カリナの風で煽られたイザリアの炎は暴走し、空間そのものを燃やすほどに。


ロイとセレナでさえ熱に息を詰まらせている。


その中で、ロイは視線をセレナへ向け、静かに告げた。


「セレナ殿…ここまでのようだ。

 だがあなたとはまた戦いたい。

 次こそは、あなたを超える速さを見せよう」


敵意よりも敬意に近い声音。

セレナはうなずき、薄く笑む。


「あなたにそう言ってもらえるとは光栄です。

 わたしも鍛錬して強くなりましょう」


だがその一瞬を打ち破るように、イザリアの狂声が響いた。


「あはははっ!

 裏切り者もエルフも、全部燃やしてやる!」


「イザリア!もうやめろ。撤退するぞ」


ロイが制止するが止まらない。


「まったく....」


次の瞬間放たれた雷光が奔り、ロイの姿は音を置き去りにして消えイザリアは床に崩れ落ちていた。


ロイは淡く笑い、カリナへ言う。


「カリナ……ありがとう、

 約束を守ってくれて。

 これからも、フィオルを頼んだよ」


それだけ告げると、ロイはイザリアを抱え転移の石(トランシティア)を使い消えた。

残ったのは焼き尽くされた広間だけ。


カリナは短く鼻で笑った。


「ああ……言われなくても。

 そうするつもりだ。」


そしてセレナに合図する。


「上だ! 結界まで戻るぞ!」

「ええ。急ぎましょう」


二人は炎に包まれた広間を抜け

フィオルの張った結界の光を目指した。

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