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26話 「風の理を目指して」

翌朝。

夜露の残る石畳を踏みしめ、僕たちは宿場を後にした。


ラピスはまだ眠たそうに目をこすり、羽をふわりと揺らす。

スラチャビはその横で元気いっぱいに跳ね、朝日にきらきら。


「よし、行こうか」


荷を背負ったカリナが振り返る。

昨夜のからかいの余韻は消え、ただ前だけを見る戦士の眼。


セレナはラピスの外套を整えつつ、静かに周囲を見回す。


「この先の森を抜ければ丘陵……

 【風の理が集う地】へ続くはずです」


僕は頷き、朝の光を吸い込むみたいに深呼吸した。


「【アルセリア】が辿った道……」


朝焼けに照らされた街道。

人々の暮らしの音を横目に、新しい旅路へ踏み出す。


背には、伝説の【召喚魔導士グランド・エヴォーカー】を目指す使命。

叶わぬ夢でも、叶えたいという強い想い。

そして、まだ見ぬ未来を変える光への希望。


小鳥のさえずり。露をはじく草の匂い。

血の匂いが漂った戦場とはまるで違う空気に、自然と心が和らぐ。


「こういう景色、ほっとするね」


言うと、ラピスがぱっと笑顔を咲かせた。


「うん! こんな景色が、

 ずっと続けばいいのに」


その言葉に、セレナの表情が少しだけ柔らぐ。

すぐに鋭い視線が巡る。


「……警戒は怠れません。歪み(アビスリフト)の影響が残っている可能性があります」


直後、茂みから小型モンスターが飛び出した。

【グラスレイス】それは植物由来の草霊。

二体、三体と姿を現し、風に揺れる透明な身体で胞子を散らしながら取り囲む。


「っと、早速来たか!

  植物は火が弱点だ!」


カリナは迷わず剣を抜き、颯のような速さで斬り払う。


ラピスが慌てて杖を構えるより先に、スラチャビが飛び出した。

ぷるん、と体当たり。レイスがはじけ飛ぶ。


「ぷきゅっ!」

「わっ、スラチャビ頼もしい!」


ラピスが笑う。

僕は小さな火の魔弾を放ち、もう一体を霧散させた。


「……火の扱いにも、だいぶ慣れてきた」


カリナがにやり。


「強くなったもんな、あたしたち」


視線を交わす。

下級モンスターなら、もう怖くない。

軽い笑みを残して、再び街道を進んだ。





森を抜けると、視界いっぱいに丘陵地帯。

草原を渡る風が頬を撫で、緑の海が波みたいに揺れていた。


「……これは」

足が止まり、息を呑む。


遠くに断崖と峡谷。

霧をまとい、吹き上がる風はただの自然じゃない。

理力の気配が、はっきり混じっている。


カリナが口元を吊り上げる。


「なるほど……あれが【風の理が集う地】。

 どうやら普通じゃないね」


セレナは真剣な眼差しで峡谷を測る。


「風の流れが異常です。

 理力の渦が生じているのでしょう」


僕は拳を握り、深呼吸。


「ここで、新しい理に触れられるかもしれない。進もう、みんな」


峡谷の入口。

荒れ狂う風が一行を迎える。

砂が視界を奪い、木々が根元からうねる。

まるで峡谷そのものが侵入を拒むかのように。


「すごい風圧だね……」

腕で顔を庇い、声を張る。


「理力が渦巻いてやがる」


カリナが剣を半ば抜き、風を読むように目を細めた。


峡谷の奥から唸り。

黒い異形(アビスモーフ)が数体、風に翻りながら襲いかかってくる。


歪み(アビスリフト)の影響がここにも……!」


セレナの矢が風に乗り、一体を吹き飛ばす。

僕は結界で仲間を守り、岩片と砂塵を弾きながら動きを見守った。


やがて黒い異形(アビスモーフ)は霧散し、残るは風の轟音だけ。

けれど、直感していた。

これは始まりにすぎない。


「ここからが本番だな」

カリナが挑むように笑う。


僕は強く頷く。

「……行こう」


風の咆哮が響く峡谷の奥へ僕たちは、歩を進めた。

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