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プロローグ

かつて、この大陸には

アルセリア王国という統一国家があった。


この世界の理。7つの理力―

火、水、氷、雷、風、光、闇。


それはこの星の地下を流れるエネルギーみたいなものでこの星の性質。例えば、海や川では水の理力が強く火山地帯では火の理力が強い。


場所や時間によって理力は強まったり弱まったり世界のバランスを取る。


そして命を循環させ剣と魔導の繁栄を支えていた。


だけど、ある日。地下を流れる理力の均衡が大きく崩れたとき、地上に亀裂が走った。


その亀裂は歪み(アビスリフト)と呼ばれた。


黒い霧(アビスマター)を吐き出しては木々や花々を腐らせ、大地を汚染する。周囲の人も獣も異形に変えていく。


そして、その日を境にこの大陸の至る所で今も亀裂は増え続けていて、黒い霧(アビスマター)は人々を恐怖の底へ陥れている。


この災厄を前にアルセリア王国は真っ二つに割れた。


「理を克服して、押さえ込むべき」

とする西の魔導国家イリシア。


「理を取り込み、力に変えるべき」

とする東の騎士国家ヴァルディア。


魔導士も騎士も子どもも大人も選択することもできずに。



あの頃はまだ、国が分かれる前でみんな同じ学舎で学んでいた。魔導士も騎士も関係なくそれぞれが夢を語り合って。


魔導士の極は召喚魔導士グランド・エヴォーカー

騎士の極は刻印騎士(グリフナイト)


少年少女がそのどちらかを夢見て訓練所で剣を振り、呪文を紡いでいた。


そして訓練場の隅にいつも笑いの的にされる僕とロイがいた。僕らは毎日、指をさされて笑われていた。


【おちこぼれコンビ】とバカにされながら。


【ロイ=ヴァルガード】

幼馴染の彼は僕より少し背が高い。まだ10歳なのに、肩や腕にはうっすらと鍛錬の跡が見えていて細身の体に不釣り合いなくらい逞しさが芽生えていた。


短く刈った黒髪は稽古のたびに汗で額に張りついてどこか大人びて見える。けれど笑った顔は年相応に子どもらしい。


擦り切れた黒い胴着に、土で汚れた靴。腰に下げているのは木剣一本だけ。


なのに、立っているだけでどこか騎士の影をまとっている。そんな風に見えるのは....きっと僕だけか。


なぜ僕らが【おちこぼれ】と言われているか。


僕は緊張すると喉が震えて、声が出なくなる。詠唱は途切れてしまい魔法なんてもちろん発動しない。


笑い声だけが訓練場に響いた。悔しくても、うつむいて拳を握りしめることしかできなかった。


一方のロイはやる気が空回りしては

()()()()()()()し派手に転んでは傷だらけになる。みんなにからかわれてもロイは笑って立ち上がる。


「ドジ踏んだくらいじゃ負けないさ」

そう言って、いつでも胸を張る。


それが強がりだってわかる。震えているのも、痛そうなのも僕にはちゃんと見えていた。


でも、不器用で強がりなその背中は、なぜか眩しかった。

だから、僕も負けちゃいけないって思えた。


そんな日々だったけど僕とロイにとっては毎日が楽しかったし充実していた。

共に夢を語り合ってはお互いの未来を信じて。期待して。





ある日僕がまた詠唱につまったとき。笑い声が訓練場を満たした瞬間ロイが僕の前に立った。


『お前が安心して詠唱できるように、俺が前に立つ。前は任せろ!』


そして剣を両手で抱え天へ突き出す。



『魔導士は言葉に力を込める。』

『ならば、その言葉が絶えぬよう』

『騎士は刃で守り抜く。』



堂々とした声に、胸の奥が熱くなった。その瞬間、ロイを揶揄う笑い声はピークを迎えた。


剣を掲げるロイの手は震えていた。本当は怖いはずなのに。それでも格好つけては僕を支えようとしてくれる。


その瞬間、喉の詰まりが解ける。震える声じゃなく、ちゃんとした声が出た。


聖光の矢(ルミナ・レイ)!」


鋭い光の光線が標的を撃ち抜いたとき訓練場は静まり返った。さっきまで笑っていたみんなが黙り込みロイが振り返って笑う。


「な?俺が前にいると、お前はちゃんとやれるんだよ」


その笑顔がずるいくらいに誇らしかった。


その日の夕暮れの帰り道、僕は小さく尋ねた。


「……ロイ、本当は怖かった?」

「……強そうに見せときゃ、お前は安心するだろ?」


にかっと笑った顔はいつもどおり傷だらけで今日もほっぺにつけた絆創膏が赤くにじんでいた。

完璧じゃなくて、不器用でも僕を支えてくれる笑顔。


その姿に胸が熱くなって僕はその日初めて回復魔法の文献を手に取った。


ロイを守りたかったから。


傷ついた彼を癒してあげたい。


そうやって心から思ったから。





そして・・・歪み(アビスリフト)の是非を巡って国は裂け、道は分かたれた。


魔導士はイリシアへ。騎士はヴァルディアへ。


もちろん僕とロイもその日から離れ離れになった。

今となっては、ロイが生きているのかも死んでいるのかもわからない。


でも、あの日の言葉はまだ胸の奥で生きている。


『魔導士は言葉に力を込める。』

『ならば、その言葉が絶えぬよう』

『剣士は刃で守り抜く。』


夢を語った日の尊い時間がきっとまた僕たちを引き寄せる。

たとえそれが……戦場だとしても。



プロローグを読んでいただきまして

ありがとうございます☺︎


初めまして『ゆおや』と申します。


『おちこぼれ魔導士と呼ばれた僕が、世界を救うために旅に出る話』

タイトル通り、幼少期『おちこぼれ』と呼ばれてきた少年フィオルが主人公の

異世界ファンタジー冒険譚です。


本編は、プロローグの10年後から始まります。


セオリー通りの

剣技を使いこなす『かっこいい男主人公』ではなく

魔法を使いこなす『少し気弱な男主人公』で

展開していきます。


初めてのファンタジー作品なので読みづらいところなど

あると思いますが、

読んで頂けたらとても嬉しいです!


一応現時点で20万字ほどストックがある状態で

まだ完結はしておりません。


『第1話 10年後』を

本日19時にアップいたします。

これからも、よろしくお願い致します!


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