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 * * * * *


 城の外に出たメテオとテルルの視界に映された光景は凄惨なものだった。

 魔族だけでなく討伐隊の死体も無造作に転がり、地面や壁は赤く染まる。


 しかし戦いはまだ終わっていない。

 魔族のリーダーのエグゼトはたった一人で討伐隊――数十人の人間を相手に戦っていた。

 安全な場所にいる騎士団の中隊長がエグゼトを睨みつける。


「なぜこいつは逃げようとしない?!」


 エグゼトの目的は仲間を逃がす時間を稼ぐこと。既に生き残りの魔族は逃げた。


 エグゼトも逃げるつもりだったが――


「強い吸血鬼がいたのだから人間も凄いのがいるのだろうと思っていたが、大したことないな。これなら仲間を逃がす必要などなかった!」


 エグゼトは圧倒的な身体能力、魔法に任せて一人一人蹴散らしていく。

 そのまま戦闘不能になる者もいれば、隙を見て反撃を仕掛ける者もいた。

 しかしエグゼトには効果的な傷を与えることができない。


「強すぎる、逃げるぞ!」


 逃げ出す冒険者も現れ始めた。


「くそ、たった一人だというのに……」


 有利な状況が覆され始め、中隊長の頭に撤退がよぎる。

 遠くで作戦会議をしていたメテオとテルルは助けに入ることにした。


「テルル」


 メテオが名前を呼ぶとテルルは頷き、剣と液体の入った容器を持って飛び出した。


「さっきはよくもやってくれたねぇぇ!!」


 エグゼトの注意を引くために叫び、翼を広げ一直線に滑空していく。


「生きてやがったか……ちっ」


 エグゼトは不利になると感じ、討伐隊のいない場所にテルルを誘導しようと駆けだすものの、討伐隊の姿がまだ目に入る場所でテルルに追いつかれた。

 テルルは赤い液体の入った容器をエグゼトの顔めがけてぶちまけた。


「ぐおっ、なにしやがる!!」


 エグゼトは額から顎に向けて手で拭うと手が真っ赤になったことに気づき、鉄のような臭いからも液体が血だと理解した。


「お、ちゃんと顔に当たった、私偉い!」


 テルルは地面へ足を着け、殺意を込めた斬撃を繰り出す。

 エグゼトはギリギリで避け、反撃をするもののテルルの動きが速くて当たらない。

 反撃の隙をテルルが攻めるもエグゼトはギリギリで弾き直撃を回避する。


「あとちょっとなのに」


 悔しそうなテルル、しかし押していることから心に余裕はある。


「吸血鬼に加勢するぞ!」


 エグゼトの背後を追いかけてきた討伐隊が逃げ道を塞いだ。

 彼らはテルルの動きに合わせてエグゼトを攻め、動きを狭めていく。


「くそ、このままじゃ負ける。吸血鬼の相手より雑魚の人間を減らすべきか」


 危機感を抱きながらも冷静なエグゼトはテルルを背に向け、人間を蹴散らし始めた。


「人間じゃなく私を狙いなさいよ!」


 テルルは当たらない斬りから突きに変え、突っ込んだ。

 エグゼトは振り向いて避けようとするも肩に貫き深く刺さった。しかし致命傷ではない。


「ぐぬぅうっっ! だが好都合、近づき過ぎたな!」


 痛みに顔を歪めるエグゼトだが強い意志で痛みを意識から遮断した。

 彼のすぐ目の前にはテルルの姿。エグゼトは片方の手でテルルが剣を握っている両手を動けないように強く握り、もう片方の手に持つ短剣でテルルの首目掛けて振った。


 そのとき、さきほど顔に掛けられた血が光りだし、視界を阻害されたエグゼトの攻撃が少しズレて傷が浅くなった。


 しかしそれでもテルルの首から血が溢れ出し、激痛で顔を歪める。


「きゃああぁぁっっ」


「ふっはっは、妙な邪魔が入ったが俺の勝ちだな!」


 エグゼトは勝ちを確信し笑った。

 しかしすぐさまテルルもニヤリと笑い返した。首の傷が光り出し一瞬で溢れてた血が止まる。その際、エグゼトの顔も光り彼は眩しさに目を顰めた。


「くそ、またか、なんだこの光は?! それにお前、なぜ血が止まってる?! 詠唱もなしにどうやって回復を?!」


 焦るエグゼト。テルルは剣を握る手に力をこめ、斜め下に斬り降ろす。


「教えるわけ――ないでしょ!!」


「ぐあぁぁぁぁぁ」


 エグゼトはほぼ真っ二つに分けられ地面に崩れ落ち、完全に沈黙した。

 テルルは安堵から腰が抜けた。


「テルル、無事か?!」


 隠れて見ていたメテオが心配そうに駆けてきた。


「全然大丈夫だよ! ちょっと怖かったけど、離れててもメテオの回復魔法で治ると信じたから頑張れたよ!」


『メテオが自らに回復魔法を掛けるとテルルも同時に回復する』を利用してテルルがすぐに傷ついても回復できるように陰からずっと見守っていた。


「なら良かった。作戦は上手く行ったようだな。だけど俺達の目的はテルルの願いを叶えることだ、本番はこれからだな」


 魔族を倒すことが目的ではない。

 テルルの望みは町に入れるようになること。もっと欲張れば町で住めるようになることだ。

 メテオとテルルはその願いを伝えるために騎士団の中隊長の元へ向かう事にした。


 途中、冒険者に囲まれ、二人に緊張が走る。


「吸血鬼の女、お前の名前は何ていうんだ?」


「て、テルルです」


「俺達人間のために戦ってくれてありがとう!」


「凄かったぞ!」


 冒険者から次々と飛んでくる称賛にテルルは自然と笑顔になった。今なら理解者が増えるチャンスと捉え、自分の思いを伝えることにした。


「わ、私は吸血鬼なので人間からは恐れられたり嫌われたりしてます。でも人間のことが大好きで仲間だと思ってます。だからこれからも人間の事を助けるし、私のこと理解してもらえるように頑張ります!」


 拍手と歓声が起こり、テルルは手ごたえを感じた。


「吸血鬼とその仲間の男!」


 冒険者の間から騎士団の中隊長が相変わらずの硬い顔のまま姿を見せた。

 

「二人の名前を聞かせてくれ」


「僕はメテオです。彼女はテルル」


「先ほど我々に要望があると言ってたな、聞こう」


 メテオは緊張しながらテルルに代わって願いを伝えた。

7話は7日の朝に更新

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