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 * * * * *

 

 次の日の夜。

 メテオは森の入口でテルルを待ってると目当ての姿が空から降りてきた。


「メテオ~、約束守ってくれたんだね、今日も会えて嬉しいよ!」


 テルルはメテオが来てくれなかったらどうしようかと不安に思っていた。

 メテオも同じく思っていたがテルルと違い死活問題でもないため彼女ほどは気にしていなかった。


「食べ物が欲しいって言ってたから果物持ってきたぞ」


「ありがとう~! 甘いもの欲しかったんだ、今食べちゃうね」


 テルルはリンゴを豪快に齧り始めた。硬いはずのリンゴだがそれを感じさせないくらいサクサクと削り取っていく。


「今日も空から町を眺めてたのか?」


「う、うん。眺めてるだけでも寂しさが紛らわせるし、夜なら誰も空の私に気づかないから」


「そうか。そういえばテルルはどこに住んでるんだ?」


 メテオの疑問にテルルは遠くの山の方を指した。


「あの方角には廃村がいくつかあって、ちょっと前まで人間の親子の二人と私の三人で生活してたの。母の方が亡くなったら娘の方も出て行っちゃって、今は私一人で生活してる。あの頃は楽しかったなぁ……」


 テルルはどのように生活してたかを語り始める。


「あの時は娘の方から血を分けてもらっていたの。でも娘が村からいなくなって血が手に入らなくなって困った私は夜を出歩く人に必死にお願いして血を分けて貰ってどうにか生き延びてきたの。メテオから血を貰えなかったら近いうちに人を襲ってたかもしれないかなぁハハハ……笑えないよね」


 血に飢えたギリギリの状態では力が弱く返り討ちに遭う可能性が高いため、まだ余裕があり理性のあるうちに事に及ぶ吸血鬼は多い。


「苦労してきたんだな。俺の血で良いなら出来る限り協力するよ」


 そう伝えた後メテオはギルドで不思議な事があったのを思い出し、テルルにも関係ありそうだったので教える事にした。


「そういえば今日ギルドでステータスを確認したらレベルが3に上がっていた。もしかしたら昨日テルルが魔族を倒した時に近くにいたからかもしれない。お礼を言わせてくれ、ありがとう」


 レベルは上がったものの『無限出血』に変化は無かった。

 それとこの世界ではゲームみたいに仲間と一緒にいれば攻撃していない者でも経験値が入るのだろうとメテオは予想した。


「何かよく分かんないけど強くなったんだね、おめでとう! 私もいつか自分のレベル確認してみたいなぁ」


 ステータスは冒険者ギルドでしか測れないためテルルは自身の実力を数値として把握していない。

 メテオはそんなテルルをどうにか町に入れられないかと昨日から考え続け、とりあえず思いついたことを口にした。


「俺、思ったんだけどさ。テルルが良い吸血鬼だとみんなに理解させれば町にいられるようになるんじゃないか?」


 メテオとしてもこれだけでは無理だと考えており、既にテルルが実行して失敗してるかの確認も兼ねての質問だった。


 テルルは頭を横に振る。


「何人か私の理解者に頼んで町の人に私が良い吸血鬼だと伝えて貰ったんだけど、さすがに全員に理解させるのは無理だったみたい」


「一人一人を説得するよりこの町を治めている領主に理解してもらった方が早いかもしれないな」


 領主がテルルを認め通行許可を与えれば町の人も心の中では反対だとしても従わざるを得ないだろう。


「でも誰が偉いのか私には分からないよ?」


「実は俺も知らない。でもいい方法を思いついた。ギルドに依頼の張り紙があって、どうやら騎士団が魔族に占拠された廃城を奪還するために動くらしい。その際の戦力を募集してるみたいなんだ」


「それってつまり私も騎士団と一緒に戦って役に立てばいいってこと?」


「ああ、騎士団なら権力者と通じてるだろうし掛け合えば町の出入りくらいはどうにかなるかもしれない。けど残念ながら俺は弱すぎてその依頼の条件を満たしていない」


「え、じゃ、じゃあ私一人で行けってこと? 私が討伐されちゃわないかな?」


「いや、俺とテルルの二人で行こう。ギルドで手続きはせず勝手に参戦する。戦闘が終わった後で俺が騎士団に掛け合う。これでいいか?」


「もし、失敗したら?」


「とりあえず挑戦しよう。駄目だったとしても次にチャンスがあれば今回の事がプラスに働くかもしれないし」


 二人は魔族討伐へ向かう騎士団と廃城で合流することを決めた。


 * * * * *


 魔族討伐作戦当日、昼に差し掛かる頃、町の騎士団と実力のある冒険者で組まれた討伐隊が廃城の近くに集まっていた。

 騎士団の中隊長の男が鼓舞する中、メテオとテルルはあえて目立つように遅れて現れた。


 テルルの吸血鬼であることを示す翼がみんなの目に触れた途端、どよめきが起きる。


「おい吸血鬼がいるぞ、昼なのにどういうことだ?」


 集まったのは強者ばかりであるため吸血鬼に怯える者は全くいないが、基本的に夜に活動している吸血鬼が昼に姿を見せていることに対し怪訝に思っていた。


「テルル、昼間でも本当に大丈夫か?」


「メテオから血をたくさん貰ったから全然大丈夫。でもちょっと体がチリチリと痛むから早く終わらせたいな」


 メテオと出会う前は少量の血しか得られないため、体力の消耗の激しい昼間の活動は危険を伴っていた。

 今は1日中太陽の下にいても死なないくらい力がみなぎっている。


 そんな二人に中隊長の男がいかつい声を飛ばす。


「吸血鬼がこんなところへ何をしに来た!?」


 テルルがビクッと震えるとメテオは安心させるために彼女の手を握る。


「彼女は俺の仲間です。人間の力になりたいと言うので連れてきました」


「戦いのどさくさに紛れて血を吸うのが目的か?」


「ち、違うから! 私は本当に人間の――」


 テルルがムキになって前に出ようとするがメテオが制止した。


「血は俺が与えるので大丈夫です。でももしそのような行為に及んだら責任をとって俺と彼女の命を差し出します」


「まぁいいだろう。それで、その吸血鬼は戦力になるのか? ……いや、そうでなければ来ないか」


 強いか弱いかは気にしないことにした。吸血鬼は弱くとも危険な存在。死んでもらった方がいいと考え、廃城に巣くう魔族のリーダーにぶつけようと考えた。


「悪いが吸血鬼は信用できないためまずは二人だけで先陣を切ってもらう。乱戦のどさくさで仲間に何かされては困るのでな。それでも構わないというのなら戦っても良いぞ、嫌なら今すぐ帰れ」


 不安になったメテオはテルルへ顔を近づけ、小声で確認する。


「先陣ってことはピンチになればかなり危険だ、自信はあるか?」


 テルルはニヤリと笑うとこう返した。


「メテオは不安そうだね。でも安心して、私、自信しかないから! メテオの事は私が絶対守るよ!」


 明るい返事に気持ちが軽くなったメテオは覚悟を決め、中隊長に告げる。


「戦いが終わったらお願いしたいことがあります」


「いいだろう。終わった後で生きていたらもう一度声を掛けに来い」


 メテオは頷くと討伐隊へ背を向け、テルルと一緒に城の正面入口へと向かった。

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