つながり
振り向けば…克也がいた。
私はこの半年の色々を思いめぐらせながら、作業服姿の克也を見上げた。
「や、やあ。」
まずは挨拶。
まさか、いきなり、ハウスホーファーだの、UFOだの話すわけにはいかない。 「久しぶりですね。卯月さん。元気でしたか?
そうそう、あの川沿いの空き地、ドラッグストアになるみたいですよ。」
克也、早口で地元民のキャッチーな話題を打ち込んでくる。
「え!まじ?」
が、私もつられてしまう。
あの川沿いの空き地は、夜暗くて、何か、建たないかと心待に…って、いかんいかん。
「ごめん、図書館、大丈夫?」
柱時計を見た。あと30分くらいで利用時間は終わる。
一瞬、克也の気が図書館へと飛ぶ。
「あ、すいません、10分、すぐに調べものを済ませてきますから。」
克也はそう言って図書館へ小走りで向かう。
さあて!はじめなきゃ。
私もワクワクしてきた。
今回の謎は、面倒くさいけれど、なかなか、面白い題材だ。
上手く書いて、話題になれば、ミステリーまがじん『みい・ムー』の読者投稿に載るかもしれない。
なにしろ、字数は沢山ある。
ネット小説において、字数と更新回数は、ゲームのレベルあげのようなもんだ。
地味に積み上げた文字数は、使えるライフと攻撃力。
しかも、『トミノの地獄』の都市伝説から、『ファティマの聖母の予言』を関連させ、それを当時のローマ法王と関連させて進んでいる。
まあ、ここまでは、私なんか、見たことの無い頭の良い人がすっかり書いているかもしれない。
が、
ここから、ブリル協会とハウスホーファーから、江戸川乱歩の未完作『悪霊』に関連付けるアクロバットな展開は、なかなか無いに違いない。
本当だよ…
苦笑が漏れる。
ああ、辛い、面倒くさい、嫌になる。
でも、半年の地味な投稿が、今、私をレベルアップさせてくれたに違いないのだ。
もう、ここに来て、クローリーが登場するんだもん。
私は深いため息で興奮を静めた。
そう、克也と話せるのは、図書館の利用時間の20分。
ここで何か、話のヒントを貰わないといけない。
テーマはUFOとオカルト団体。
今まで、オカルト番組でなぜ、UFOを特集するのか、謎だった。
確かに、みんな怪しい。
怪しいけれど、私の頭では、UFOはSF、オカルトはホラー・ミステリーとカテゴリーが明確に別れていた。
幽霊の存在は、証明できないけれど、
UFOは、科学と物理学で証明できるものだと信じていたのだ。
つい、この間、Y氏の本を見るまでは!
この本には、ある秘密結社が1922年にUFOを作り上げたと書いてある。
しかも、チャネリングで宇宙人に製造方法を教えてもらったらしい。
もう、いい加減にしてほしい…
と、最初は思った。
だって、全くの素人、もしくは、カテゴリーの違う町工場の職人にネットでハイブリット車の作り方を見せたとして、それが作れるか、と、いえば、随分と難しいと思う。
それが、宇宙人にUFOの作り方をチャネリングで聞くんだから、
剛にエッグベネディクトを動画を見て作れと言うようなもんだ。
しかも、パンも自作をしろというようなものなのだ。
当時、どんなにドイツが優れていようと、秘密結社が凄かろうと、UFOの不思議な金属を作り出せるとは思えない。
大体、ステンレスですら、1910年代の発明なんだから、こっから、いきなり半重力のなんか、凄い金属なんて、チャネリングで宇宙人に聴いたくらいで出来るとは思えなかったのだ。
が、ここで私は思い出したのだ。
夏に語り合った江戸川乱歩の未完の小説『悪霊』について。
この作品は、密室殺人の連載で、『犯人はΣ( ̄□ ̄)!』と、ここで作者がごめんなさいと打ち止めにした作品だ。
本当に…未完の中でも最悪な終わりかたである。
と、言うわけで、素人、玄人の作家たちが、この謎を解き明かそうと奮闘し、私も夏にホラーのネタとして考えたことがある。
が、私にそんな答えがわかるはずもなく、間抜けな話を作ってひっそりと撃沈した。
が、この時、克也に聞いたアドバイスが、この話に引っ掛かってくる。
ブリル協会の登場で、政治とオカルトが繋がったからだ。