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ムーンショット

これはシリーズものの番外ですが、これ単体で読めるように書いているつもりです。

イベント参加のために、結構無理して書いたので色々とアラがあるのですが、誤字やら、間違いも含めて楽しんでいただけたら幸いです。


全く、どうしたらいいんだか…


地元の図書館のエントランスの端のソファに座り、私は本を片手にボンヤリと図書館の入り口を見つめる。

春も終盤、夕方の図書館は昼下がりのような明るさがある。

私は音楽を聴きながら穏やかなその場所で来るとも知れない人物を待っていた。


克也(かつや)

私のフリマの仲間で、オカルト話の友でもある。


風変わりな奴だが、こう言う…

小説のイベントの締め切りギリギリで頭の整理をしたいときには、案外、頼りになる存在だ。


私はホラーゲームのBGMを聴きながらY氏の著作を握りしめた。


ため息がこぼれる。

去年、私はサイトのミステリーイベントに参加できなかった。

だから、今年は色々と考えていた。

今年のテーマは『コンタクト』言葉の意味合いは…作者に任されていた。


で、色々考えた。

特に、今年は…来年、明智小五郎デビュー100周年を記念する作品を発表したかった。

2025年…この年で私はグループでの活動を終わらせようと考えていた。

中年の田舎のフリマ好きが集まって適当に作ったIDなので身バレが怖いのだ。

そして、2025年の大阪のイベントに合わせて念願のグループ旅行を計画していた。

が、一人、メンバーが亡くなり、諸事情も重なり、それは頓挫(とんざ)した。

だから…もう、小説を必死で書く必要は…無いと言えば、ないんだけれど。


「未完で逃走なんていけませんぜ。」

気がつくと、Y氏の本の精霊が私の横に座っている。

勿論、これは空想だ。

苦節(くせつ)6年…

メンバーが誰も絡んでくれないので、こんな一人遊びも上手くなる。

それに、これは必要な行為でもある。

絵師がデッサンや習作を欠かさないように、

日頃から、様々な状況でキャラクターを想像して動かしていないと、物書きもイザと言うときに話なんて作れない。


コイツは、身長180cm。

足が長く8等身。時代物のラッパズボンにアフロヘアーの男だ。


こんな男、リアルでは見られないから、現実の図書館でのシュミレーションは欠かせない。

私は何も居ない隣の空間の少し上の方に視線を向ける。

多分、この辺りが奴の視線と合わさる場所で、そうすると、奴の長い組まれた足はタイル4枚向こうまで届き、黒革のブーツは優雅に遊んでいるはずだ。


「逃走?今は、締め切りに追いかけられてるのよ!もう(>_<。)」

わたしの恨み節を、奴は笑って見ている。

「ふふっ、俺を舐めてかかるから…古紙再生(すて)ようなんてするから悪いんですぜ。」

奴のどや顔を…甘んじて受けた。

そう、なんとなく買ってしまった古本。

少し、必要になったので探し、読まないから古紙回収に回そうと考えていた。

「そうね…悪かったわ。」

「これに懲りたら、段ボールにしまわずに、本棚に返してもらいましょうか。」

奴は甘く私を脅迫し、私は渋い顔をして見せた。

「それは…分からないわ。でも、当分はあなたにはいてもらう事になりそうね。」

ため息をつく。

「10倍の価値に…してくださるのでしょ?次の持ち主に…高く売り付けてくださいよ。」

奴は抜け目ない笑みをうかべる。

「イベントに参加できたらね。」

私は遠い夢を吐いた。


創作イベント…名古屋で最後のフリマを予定していた。

2025年、私はすべての作品を完結し、退会の宣言と共にイベントに参加する予定だった。


でもっ、そんなのは、全てを夢のまた、夢なのよっ。


「ムーンショットって、知ってる?」

私の問いに、奴は嬉しそうに私に右手の親指を立てて見せる。

「やる気ですね!」

「はっ?」

何をコイツは喜んでるんだろう?

ムーンショット…

元はアポロの月面探査を意味していて、月に行くほど難しい事を表す言葉だ。

私達には…月どころか、名古屋すら遠く…叶えられなかったと言うのに、月なんて…行こうとすら思わない。

私にとって…自作の完結とは、月のように遠く、ほぼ、諦め状態の夢なのだ。

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