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プロジェクト

「トーマス、あなたも協力してくれるわよね? あなたはドミニク様の片腕なんだから、ドミニク様にケイのことを吹き込んで洗脳しちゃいなさい」

「はあああ? おれが閣下、ではなくてドミニク様を助けられるのは、軍にいるときだけだ。ドミニク様のプライベートまで関与出来ない」

「なにを言っているのよ。ケイが気の毒じゃないの? 彼女、いい人でしょう? ドミニク様だってそうよ。いま、助けを必要としているの。心身ともに疲れきっていらっしゃるのですから。そのドミニク様を癒せるのは、ケイよ。そうよ。ドミニク様を癒せるのは、わたしでもあなたでもパーシヴァルさんでもない。ケイよ。それから、ウインストンさんの料理なのよ」


(あの、ステイシー。わたしの存在がとんでもないことになっていないかしら?)


 どんどん膨らんでいく彼女の妄想には、もはやついていけそうにない。


「ったく、なんて場違いで勘違いすぎる思い込みなんだ。呆れ返るよ」

「なんですって、トーマス?」

「やめないか、二人とも。たしかにステイシーのは、ひとりよがりな思い込みだ。しかし、発想は悪くない」


 彼女とトーマスをなだめたのは、パーシヴァルさんだった。


「ケイ様。われわれはいまはこうして民間人を装っていますが、ドミニク様といっしょに戦場を駆けまわっているのです。ですから、いまのドミニク様を見ているのはつらいのです」


 パーシヴァルさんが教えてくれた。


 彼はドミニク様の参謀で、トーマスは副官。そして、ウインストンさんは専属のコックと護衛を兼ねているらしい。三人はドミニク様に信奉しすぎていて、ドミニク様が軍を離れているいまもこうしていっしょにいるのだとか。特別待遇らしいけれど。三人ともそれだけの実力があるので、それも許されているのに違いない。なにより、ドミニク様もそれを望んでいるでしょうから。


 それはともかく、軍ではドミニク様のことを将軍閣下と呼んでいるらしいけれど、ここではドミニク様と呼んでいるそう。わたしのときもだったけれど、ドミニク様は「ドム」と呼んでくれとお願いしたらしいけれど、そんな呼び方をするわけにはいなかい。おたがいに妥協し、「ドミニク様」に落ち着いたという。


「ケイ様にはご迷惑かもしれませんが、ステイシーのアイデア通りしばらくドミニク様といっしょにいてくださいませんか? もしかしたら、ステイシーの思い込み通りあなたはドミニク様にとって必要な方かもしれません。あれだけ断ったのに、王都に連絡がうまくいっておらずにあなたがやって来たのは、というよりかは身代わりとして来たのは、偶然ではなく必然なのかもしれません。もちろん、われわれも協力いたします」


 パーシヴァルさんまで、そんなことを?


「やった。ケイ、応援するからがんばってね」

「ステイシー……。わたしにドミニク様を癒したり助けたりなんてことは出来ないけれど、彼の部屋をピカピカに磨き上げることは出来る。気持ちよくすごしてもらったら、もしかすると心身ともによくなるかもしれない。正直なところ、わたしも仕事を得ることが出来て助かります。ただ、パーシヴァルさん。わたしに対して様づけや敬語はやめていただけませんか?」

「皇女殿下に失礼ですが、この計画の成功の為にも仰せのままに従います。ウインストン、トーマス。きみたちもいいね?」

「もちろん、全力で協力しますよ」

「わたしも協力します」


 トーマスとウインストンさんがこちらに笑いかけてくれる。


 こうして、わたしたちはついてもいい嘘のもと、プロジェクトに取り組むことになった。


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