思いがけないタイミング
「──タイガ様」
とても、マズい。
何が良くないかというと時節が良くない。
神がかり的なタイミングの悪さだ。
俺は早朝に一人でこっそり聖都の宿を出ていった。
今日は誰との約束も無く勇者パーティの少女たちにも休暇ということで好きに過ごしてもらうことになっていた──はずだった。
「……アイリス」
にもかかわらず、彼女は何故かここに現れた。
勇者パーティの後方支援担当こと聖なるクソデカおっぱいで俺を惑わすロリ巨乳──アイリスだ。
俺が神祇官からの命令で勇者パーティという部隊に所属する前から、何かと聖都での生活をサポートしてくれてた恩人でもある。
だが、それはそれ。これはこれ。
コレはパーティのメンバー全員に言えることだが、彼女らは魔物に対して容赦がなく討伐の旅に出ると途端に心に遊びがなくなる。
何が言いたいかというと、そんな殺伐とした環境でのみ行動を共にする俺に対しては、勇者パーティの面々は『仕事場における上司』という認識以外何の感情も持ち合わせていないということなのだ。
ハーレムとはあくまで男女の比率の話というだけであり、よくわからん神を崇拝し魔物をぶっころころしたい気持ちでいっぱいな彼女たちにとって、俺はただちょっと強いだけの知り合いなのである。
……アイリスに関してはこの世界での生活の面で多少気にかけてくれている、というのは何となく分かるが。
それも恐らく教会からの命令だろう。
同じ部隊に所属する異世界人に対して召喚云々について他より知識がある聖職者が上から対応を任されるのはごくごく自然な流れだ。
さて、そんな俺の世話を任されてしまった苦労人なロリ巨乳のアイリスだが、彼女がこの場にいるという事実が少々危うい。
「タイガ様っ」
「ま、待て。そこで止まれ、アイリス」
「えっ……」
果たして彼女はどこからどこまで聞いていたのか──それが問題なのである。