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勇者様に触れる不届き者



 ──は?


 なんだ。

 誰だ、あの少女たちは。

 勇者墓地で強敵を倒されたタイガ様が居住区で戦うエレナさんの加勢に向かわれたと聞いたから、魔物の群れの間を縫うようにして全速力で現場に到着したら──意味不明な光景が待っていた。

 住民の方が避難さ、無人となった家の中で、エレナさんがタイガ様に簡易的な回復魔法を施していたが、これはまだ分かる。

 おそらく連戦に次ぐ連戦でタイガ様の疲弊は限界に達していたのだろうし、あの膝枕も魔法を使いながら肉体を密着させることでこちらの魔力も生命力に変換して注ぎ込むというやり方があるため、理にかなった回復方法だ。

 エレナさんだからわかる。

 勇者パーティのメンバーが彼を効率的な方法で回復させるのは至極当然のことであるから。


 だが、あの二人の少女はなんだ?

 なぜエレナさんと打ち解け、気安い態度でタイガ様のそばにいるんだ?

 意味が分からない。

 わたしがいない間に何があったというのだ。

 ともかくまずは殴ってでもあの二人をタイガ様から引き剝がして、この場所から叩き出して早急にわたしが彼を回復させてあげないと。


 …………いや、ちょっと、待て。

 落ち着こう。

 冷静に。

 すぐに暴力を持ち出すのは、くないことだ。

 神父様も俯瞰して物事を見るようにと仰っていたではないか。

 彼女たち二人は確かにタイガ様と近すぎるしあわよくば触れようとしているし、今すぐにも四肢を削ぎ落して祭壇の供物にしてやりたいくらいには腸が煮えくり返る思いだが、まずは落ち着いて状況を判断しなくては。


 そうだ、あの砂袋を腰に携えた彼女ら二人はきっと現地の協力者だ。

 玄関の横には数刻前に使った形跡のある武器が置かれていたし、タイガ様が動けなくなったあとに魔物の掃討を引き受けてくれたのだろう。

 味方になってくれたからこそ、エレナさんとも打ち解けている。

 あそこまでタイガ様に接近しているのは不本意だが、まずは協力してくれたお礼を言わなければ──


「……ったく、十代目め。のんきに眠りこけやがって。ほっぺつついてやる、うりうり」

 

 ────ッ。


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