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彷徨う先輩たち

『オメー翔太郎っつうんか! どう見ても日本人やん! 遊ぼうぜッ!』

「ちょっ、僕はやらないって──ま、間宮ー!」


 亡霊に引きずられて強制的に生首サッカーに参加させられた友人を一瞥しつつ、墓石の前に立って手を合わせる。

 すると墓石の後ろから一人の少女が姿を現した。

 例によって例の如く彼女の身体もまた半透明、つまり亡霊である。


『あら。十代目、こんにちはぁ』

「お久しぶりです、八代目」


 ニコニコしながら俺の隣に座るほんわかゴースト。

 彼女は歴代で八番目にこの世界へやってきた勇者だ。

 つまり俺の先輩にあたる人、ということになる。


「みんなの様子はどうですか」

『相変わらず、かなぁ。今日は珍しく動いてるけどいつもはダラダラしてるだけだしぃ』


 少女の見つめる先に視線を移すと、そこでは翔太郎を含めた五対四のサッカーが行われていた。

 内一人の少年は首から上が無いため今日は彼の頭がボールの担当になっているらしい。


 ここにいる彼女たちは、幽霊ではなく亡霊だ。

 特殊な術式で魂を綺麗に保存して幽霊になった翔太郎とは異なり、突然の死で魂が欠けている彼ら彼女らは肉体が安置されているこの墓地から動くことはできない。

 ゆえに暇を持て余し、誰か一人の首を選んで球遊びに興じているというわけだ。


『十代目もいんじゃん! おーい、早くあの国滅ぼせーっ!』

『よそ見してるのでボール頂くね』

『あっ、てめ!』


 彼らは元々一般人だったわけだが、エドアールに選ばれた結果強制召喚され勇者としてその生涯を終えた。

 それに関して思うところがないわけではないが、それはそれ、これはこれ。

 俺には俺のやるべきことがある。

 義憤に駆られていち国家に反逆できるほど彼らに対して思い入れがあるわけでもなく、ヒーロー然とした感性を持っているわけでもない。

 できる事といえば聖剣による先輩たちの成仏。

 そして元の世界へ帰還する際に召喚システムを破壊して、以降の勇者を生み出させないようにするくらいがせいぜいである。

 この世界の行く末に関しては知らぬ存ぜぬだ。

 

『今日はパーティの女の子たちはいないの?』

「墓の掃除に来たわけじゃないんで。あいつら来たらみんなも隠れないといけないでしょ」

『まあねぇ。例え亡霊でも魂が鎮座してるのバレたら、あの国にまた利用されそうだしなぁ』


 八代目の少女とそんな会話を交わしていると、サッカーが休憩時間に入ったのか六代目の少年がフラフラと此方へやってきた。

 

『おう十代目、エレナは?』

「いませんよ。来週の戦いに向けて聖都でいろいろ調整してます」

『はぁー、そうか。また墓の掃除してほしいなぁ』


 六代目である彼はまだアイリスとシャルティアが加入する前のパーティの勇者であったため、一応古参のエレナとだけは顔見知りだ。


『あの無表情っ娘の頭をまた撫でたい……』

「……? エレナが無表情、ですか」


 六代目とはそんなに会話をしていなかったため初耳だ。

 あのツンデレの化身みたいに表情豊かなエレナが無表情っ娘とは、どういうことだろうか。

 まるで想像がつかない。

 俺はアイリスと先に二週間ほどチュートリアル的な冒険をしたあとに勇者パーティを任されたため、それ以前のエレナのことはよく知らない。詳しく教えてもらう事にしよう。


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