揉めるかもしれない
「──翔太郎。どうしてここに」
「心配だから様子を見にきたんだ。あと、いろいろと情報を伝えにね」
幽霊である彼と会話しているところを見られるとマズいため、部屋のドアを閉めてから向き直った。
翔太郎の気持ちは嬉しいがいまは時間がない。
「一階で彼女らが待ってるから手短に頼む。遅くなったら怪しまれる」
「……少しだけ会話を聞いてたし、パーティメンバーの様子も確認していたから状況は分かってる。だからこそ一つ提案があるんだ」
今の状態で他に何かできることがあるのだろうか。
「逆転の発想だ。むしろ怪しませよう」
生粋のエロゲハンター、つまり百戦錬磨の恋愛マスターとも言い換えられる立場にある彼からの提案はまさに目から鱗だった。
「まず前提としてあのアイリスという少女だが、僕らの会話が全て聞こえるような距離にはいなかった。物陰から早歩きで向かってきたから、聞こえたとしても最後のほうだけ……しかも間宮の声だけだろう」
確かに幽霊である翔太郎の声は、彼が幽霊になった術式の一部を応用した俺にしか聞こえない。
あのドヤ顔で語っていた異世界おっぱい攻略作戦は、俺以外の誰かには絶対に認識されていないということになる。
「恐らく間宮が思っているほど深刻な事態には陥っていないはずだ。内容が不確かな会話だけで殺されるほど勇者という立場も弱くはない」
言われて気がついた。
俺、一応は人類側の主戦力じゃん。
服従の紋章も仕込んであるし、そんな簡単に手放しはしないか。
「──だからおっぱいは揉める」
「ッ!!!!!!」
衝撃で尻もちをついた。
翔太郎のそのセリフが、まるで確信しているかのような、あまりにも自信に満ちたものだったから。
おっぱいが、揉める。
それは本当なのか、友よ。




