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77 ちゅうえちゅえ

 あー、やばい。ついうっかりと着地先にいた一般人を殺しちまった。

 でも俺を目撃したのも悪いよな。変に騒ぎ立てられて俺の侵入がバレちゃったらそれが一番最悪だし。まぁ運の尽きがなかったと思ってくれ。


「この死体どうしよう」


 俺は足元に転がっている男を見下ろした。

 もう首がひん曲がってしまっている。絶対に命はない確信があった。


 どうしようか。隠蔽した方がいいのか? いや、誰かに襲われたのが発覚したところで、俺がやったというところまでは突き止められないはず。服装もいつしか他人から拝借した無難なものを来てるし、俺の特徴もそうないはず。……まぁ黒髪黒目はこの世界ではそんなに見かけたことはないが、そうだな、意外とバレたらやばいのかな。今度かつらでも買おうかな。


「ま、今回に限っては他に見られてもなさそうだし大丈夫だろう」


「どうしたのー? リグー?」


 すると階下から上がってくる足音が聞こえた。

 俺のいる部屋を目指してきている。

 おそらく騒がしいかなんかで不審に思ったといったところだろう。たしかに着地するときもその辺ケアしてなかったけどお

 ちっ、厄介なことが次から次へと面倒くさい。


「リグ、なにがあって……ひゃっ」


 その人物はその部屋に本来いるはずもない人物を見て固まっていた。

 そしてその人物の下に転がっている少年の姿も捉えているのが分かる。


 つまり俺と殺された少年をその目にハッキリと映していた。


 その人物は四十代くらいのおばさんだった。

 ちょっと小太りの主婦といった感じか。

 まぁ雰囲気的には母親といったところだろうな。お嫁さんとかいうせんもあるが、少年の年齢で結婚というのは考えづらいしまぁ親だろう。


「り、リグ……?」


 おばさんは信じられないものを見るような顔つきで、よろよろとこちらに歩いてきた。

 現実を受け入れられないのだろう。リグくんの首は絶対にあってはならない方向に曲がっているというのに。誰がどう考えても死んでるだろ。一発で分かれよな。


「ふん、死ね」


 俺は魔力でおばさんの頭を横薙ぎに殴った。

 殴った衝撃で、ごきりとおばさんの首がへし曲がる。ほーら、せめて息子と一緒にしてやったぞ。感謝しろよな。


 おばさんは目を見開いたままその場にドサリと崩れ落ちた。

 たまたまだろうが、伸ばされた右手が少年の足まであと少しというところで止まっていた。

 おつかれさん。


「はぁ、ったく、余計な接種をさせられたぜ。どんどんどんどんと俺の邪魔ばっかしてきやがって。即死させただけ感謝しろよ」


 俺は自分がいささか乱暴な口調になってることに気づき、頭を振る。だめだ、何をいらついてるんだ。冷静になれ。こんな程度で心を揺さぶられては最強など夢のまた夢だぞ。最強というのは戦闘面もそうだが、心の余裕的にも最強でなければならないのだ。落ち着きをもとう。冷静に、クールになるんだ。……うーん。ポウ! よし、もう大丈夫。


 一旦冷静になった俺は、少し腹が減っていることに気づいたので、おばさんが上がってきていた階段を経由し家の一階に降りた。


 するとちょうど四角い木の机の上に、バスケットのような入れ物があり、その中にパンが入っていた。

 おもむろにとり、かじる。

 うーん、硬い。こりゃ日本のパンとは大違いだな。なんか素材がゴムかなんかでできてるんじゃないかってレベルだ。やっぱり日本は偉大だったんだな。

 ただまぁお腹は空いていたので、文句を言いながらもパン一つ分は全部食べきった。

 その間も部屋の中は誰の反応も感じなかったので、おそらく現時点でこの家屋にいたのはさきほどの二人のみだったのだろう。


「さーてと、腹ごしらえも済んだし、お父さんが帰ってくる前にとんずらしますかね」


 まぁそれもあるが、いつまでもこんなところにいるわけにもいかないという思いが強かったので、とっとと出ることにした。


 どうやって出よう。まぁ普通に玄関からでいいか。


 俺は普通に玄関の戸を開け、外へと出た。


「うー、しけてやがる」


 出た先は知っていたことだが古びた住宅街になっている。

 家の前に面している道はかなり狭く、舗装もろくにされていない。

 まぁ国の中でも比較的貧しい人たちが住んでるところなのかな。こんな貧乏な生活は送りたくないな。こんなところですごすならジャングルで寝泊まりしたほうがよっぽどマシだ。ひもじい生活を送っているという事実が許せないし不快だからな。


「さーて、とっとと高い場所を目指しますか」


 おじさんとの約束場所は高い場所だ。

 それがどこなのかまだわからないので探す必要がある。


「建物が邪魔で見えないな。仕方ない、またスーパーハイジャンプエクセレントファイヤーを決めるしか無いか」


 上空に踊りでれば視界も開け高い場所を探しやすくもなるだろう。要するにここへやってきた時にやったことをもう一度やればいいだけの話だ。


 そう思った俺は、足に力を込め始めた。

 高く、高くこの手を伸ばして。きっと。きっと、ってもう一度願うからー。てな。

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