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67 蝶々結びって何種類もあるんだよ!

 遠くに人為的な明かりが見えた。

 どうやら街に着いたということらしい。


「にしても随分と早く着いたなぁ。まだ二時間経ってる気しないんだけど」


「確かにな、馬が優秀だったっつぅことだろ」


 御者の見立てではもう少し掛かると言っていたが、まぁあまり道に慣れてないとか色々考えられるしな。それに早く着き過ぎることに関してはなんの問題もない。


「だったらそろそろ降りる必要があるよね。ねぇ、御者さん、もうすぐ街着くんでしょ? だったら直前で物陰とかあれば隠れてよ。そこで解放してあげるから」


 俺は馬車の窓から顔を出し御者に話しかけた。


「え? えっと街ならもう一時間くらい掛かるはずですが……」


「ん? 前に見える光がそうなんじゃないのか?」


「あれは街道村ですが」


「かいどうむら……? なんだそれは」


「え、ええ、街と街の間に設けられてる拠点のことです。街と街の距離が長い場合とか治安が悪い地帯によく設置されているのですが……」


 そんなものがあるのか。確かに街までのあまりに距離が長い場合とかには野宿しないといけなかったりりするかもしれないしな。こういう休憩地点があればありがたいだろう。高速道路でいうサービスエリア的な感じかな。


「まぁでも特に寄る意味もないしな……」


 俺たちはどのみち街まで行くつもりだから立ち止まる時間は勿体ない……いや、待てよ?


「因みに規模的にはどれくらいの人が住んでるんだ?」


「さ、さぁ。街道村によって違うと思いますんでなんとも……」


「あんたの見立てでは?」


「そう言われましても……まぁ百人いるかいないかとかの規模でしょうか。で、でも! 間違っていたからといって殺したりはしないでくださいよ!」


 百人か、悪くないな。


「大丈夫だよ。街まで案内してくれる人を殺すわけないだろ。ちょっとおじさん」


 俺は窓を閉じ、中のおじさんに話しかけた。


「なんだ? ちょっと寄っていくのか?」


 おじさんも話は聞いてたようだ。


「違うよ、いや、違くないのか。なんにせよちょっと作戦を思いついたんだけど」


「作戦? さっき言ってたやつか?」


「それは街での話だよ。今、あの街道村でできる作戦だ」


「どうするんだ?」


「どうやら村の規模的にはそんなに大きくないみたいなんだ。だからさ、あそこを壊滅させることによっておじさんの依り代候補を見つけられないかな?」


「……なるほど」


 おじさんは顎に手をやり少し考える素振りを見せる。


「でも流石に数が多すぎるだろう。お前一人でなんとかできるレベルじゃないんじゃないか?」


「百人くらいなら大丈夫だと思う。何も一万人とかいるわけじゃないんだし」


「お前さんがいいっていうならまぁ俺は勿論賛成だぞ」


 降って湧いた好機。

 流れでたった今ひらめいた作戦だけど、なかなかに悪くない気がする。

 一気に一定人数の候補を確保できるということもそうだが、集落として孤立しているというのが大きい。もしここで騒動を起こしても、街とかからの援軍が来る前にとんずらしてしまえば事件の真相は闇へと消えることになる。俺たちは何もお咎めなしというわけだ。リスク無しで目標達成のチャンス! ああ、確かにこういった街道村とかをひたすら狙っていくのもありかもしれないな。我ながら己の頭脳が恐ろしい。


「御者さん、ひとまず近づいたら馬車を街道村から見えないような位置に停めて。その後俺たち三人で街道村に向かうから」


「え? 一応中にも馬車を停める場所があるはずですが……」


「いいからいいから」


 御者の人を馬車で待機させてもいいが、もしかするとがしゃがしゃしている内に逃げられる可能性がある。同行させるのが無難だろうという判斷だ。


「強い奴いるのかな?」


 一応村である以上護衛や見張りの類は配置しているはずだ。そうでなければ先程言ってたように盗賊などからの襲撃に対応することができないだろう。できればうんと強い奴がいてほしいものだが……厳しいかな?


 そうして数分が経ちある程度近づいたところで、馬車を道から逸らさせ、岩陰に停車させた。

 御者が馬につけている縄を近くの木に括り付けている。


「よし、それじゃいくか」


「おう」


 そして三人で村に近づいていく。

 まぁ作戦の手順としては、一人ずつ順番に静かに拘束していこうかな。あまり派手にやりすぎて散り散りに逃げられても厄介だし。そこそこの年齢のおっさん以外は全員殺しながら、おっさんだけ確保していく感じでいこう。


「ん?」


 内心で作戦について思考を巡らせていると、村の方向が何やらやけにうるさい気がした。

 お祭りでもやってんのかってくらい騒いでいる。

 キャー、やら、うおおあああああ、やら凄い迫力ある悲鳴が聞こえてくるけど、一体何をやってるんだ?


「これは……」


 ふと横をみるとおじさんが神妙な顔つきになっているのが分かった。御者の人もいつもにまして不安げな表情だ。


「どうしたの?」


「いやおかしいだろ? 叫び声聞こえんだろ、間違いなく恐怖による叫びだ」


 え、そうなの? てっきり楽しんでる感じかと思ったけどそういう雰囲気でもないようだ。だとしたら何が起こってるんだ……


「行ってみよう!」


 俺たちは小走りで街道村の方に急ぐ。

 そして目にした光景は……


「えぇ……」


 武器を振りかざす何人もの人間の姿と、地面に倒れる何人もの人間の姿だった。

 

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