65 入れ墨意味ないから!
股間がやばいことになってる男を乗っ取ろうとしたおじさん。
しかしいつもよりは長いなーというぐらいの時間潜ったあと、結局いつものように飛び出してきた。
俺はとてもがっかりしてしまった。
「……全然ダメじゃんか」
「すまん! こればっかりはどうしようもないんだよっ!」
そしてそんな俺に対し、おじさんも流石にバツが悪いと思ったのか誤ってくる。
まぁ別に怒ってないしいいんだけどさ。
「はぁ、でもこれでもう候補は全滅だよね」
襲撃した馬車に乗っていた者たちの中で、息のあった奴らの憑依は全員試し終えた。
結局結果としてはダメだったが、まぁおじさんの霊力は回復できたので及第点はあげてもいいのではないか。
「憑依はそううまくいかないかぁ」
「すまん、だがやはり確信したが俺と歳の近いやつほど憑依しやすい感覚はある。これは間違いないはずだ」
「なるほどね、じゃあおじさんと同年代ぐらいの人を狙っていけばいいんだね。となるとやっぱり街が効率いい気がするな」
「指名手配されてるのがなんともな……」
「だったら他の街に行けばいんじゃない? それだったら関係ないから自由に動けるでしょ」
「結局はおんなじ経過を辿る気がするんだが……案外支配階級のやつらを舐めちゃいけねぇ。たぶん俺みたいな霊に対する対策なんかもある程度固まってんだと思うぜ。動き始められたら本当に逃げ回るしかなくなっちまう」
「それっていうのは魔法とか何かで居場所がバレるとか?」
「分からねぇ。だがとにかく俺を除霊しようと四六時中追いかけ回してくるんだ。俺もなんとか逃げるんだが、結局人数を掛けられちまえば為すすべもねぇ、捕まっちまう前に撤退するしかなくなるって寸法だ」
「ふーん、聞く限りだと厄介そうだね。まぁその辺の作戦は後ででも考えようよ。今はこれの片付けを優先した方がいいと思うんだ」
現在道のど真ん中に馬車やら死体やらが放置されている状態だ。
そんなに人通りのない場所ということでまだ何事にもなっていないが、いずれは誰かが再び通りかかってこの惨状がバレてしまう。まぁそいつらも殺してしまえばいい話ではあるが、そんなことをやっていてはキリがない。とっとと片付けてしまった方が面倒もないし安牌だろう。
「そうだな、どうする? 適当に森にでも隠すか」
「うーん、おじさん馬車の運転とかできる? それならひとまず隣街にでも行って一休みってこともできるけど」
「そんなの知ってるわけねぇだろ。たぶん特殊な技術とかがいるんじゃねぇか?」
「そっかぁ。じゃあおじさんの言う通り森にでも隠しとこっか。死体なんかは動物かなんかが食べてくれるでしょ。でも馬はどうしようか」
「適当に解放してやればいいんじゃねぇか?」
「そうだね」
ということで俺たちは死体を馬車に積み、なんとか馬を誘導したり俺が自力で引いたりしながら近くの森に持っていった。そして丁度森の中のちょっとした崖のようなところから下へと突き落とした。こんな場所そうそう探索するやつもいないだろう。というかもし仮に何かの偶然でたまたま場所がバレたとしてもそれは俺たちがこの場から退散したはるか未来のことだろうから、俺たちの足がつくということもないはずだ。
あと、馬は適当にその辺に解き放った。馬は言葉をしゃべらないので俺たちのことを吹聴される心配もない。
「こんなもんかな」
因みにおじさんに生気を吸い取られた藍色の髪の男だが運ぶ際まだギリギリ息があった。もう死ぬ寸前といった感じだったが、一応トドメを差しておいた。
「それじゃあこれからどうするんだ?」
「ここにいたってしょうがないし隣町にでも行って考えるでいいんじゃない。人もいるから最悪生気の補充とかもできるだろうし」
「そうだよな、俺はいいがお前さんは休息が必要なんだよな、よし分かった」
「因みに隣町までのルートは分かる?」
「知らねぇな」
「いちいち使えないよね。まぁしょうがないか……うーん、そうだな、ここで待機でもしとこうか」
「使えなくて悪かったな、でも待機って何すんだ?」
「次に通りかかる人に連れていって貰おう。馬車かなんかで移動してたらありがたいんだけど」
「……俺が言うのもあれだが、お前さん人をなんだと思ってるんだ……」
そうしてしばらくダラダラと道の真ん中で寝転がったりと暇を潰していると、一時間くらい経ってようやく一台の馬車が通りかかった。
この馬車に乗っていたのは筋骨隆々なヤクザみたいな男と、御者のよなよなしてるおしゃれメガネ男の二人だけだった。
俺が隣町まで連れていってくれるよう頼むと、ヤクザみたいな男が俺の襟首を掴んできたので、首に手を突き入れて瞬殺した。もうおじさんはお腹いっぱいらしいので生気の補充は必要ないからな。あとからダメ元でも依り代チャレンジをした方が良かったのではと思い至ったが、流石に体格が違いすぎるので恐らくダメだっただろうと思うことにしといた。
そしてその後残った御者は泣きそうな顔になりながら、命乞いをしてきたので、再び連れて行ってくれと頼むと、素直に馬車に乗っけてくれた。
最初からそうすれば連れ人も死なずに済んだのにな。世渡りがうまくないな。
そうして俺たちは無事足をゲットして、ひとまず隣町まで行くことになった。




