62 ポッキーはすぐなくなる
目の前には耳を抑え痛がってる年寄りの男がいた。
はぁ、なんか偉そうなこと言ってたけど結局暴力で脅すハメになっちまったな。せっかく対話での猶予を与えてあげたのに、分からない人に何を言っても無駄ということか。やっぱりこの世界は戦闘力がものをいう感じなのかな。日本と違って無法地帯な場所も多いし、個人が強くなりすぎるがゆえに起こることなのかもしれない。俺的には暴力で支配するとかあんまり好きなほうじゃないんだけど……でもやっぱりこんな混沌としたシビアな世界で生きていくには力に頼らざるを得ないよね。そう考えると俺に能力をくれた神様には感謝してもし足りないな。毎度のことながらありがとう神様。アーメン。
「で、どうします? これ以上痛い目を見るのか見ないのか。降伏しないというのであればさらに攻撃します。ただし降伏するということでしたら、これ以上攻撃はしません」
俺が得意になった脅し文句で締めにかかると、年寄りの男は凄い顔で睨んできた。うーん、やはりプライドの高い人はなかなか折れてくれないな。それはそれで男らしくていいことなのかもしれないけど。でもまぁでもある程度頭があるやつなら脅しがエスカレートしていく仮定のどこかで折れてくれるから、結局はうまくいく仕組みになってるんだけどな。折れなければ死ぬだけだし。ああ、これが拷問の原理か、また賢くなったな。
「き、さ、ま……」
「まだ降伏しないということですね」
仕方ないので俺は男の頭に手を伸ばし鷲掴みにする。
俺の方が立場は上だぞと、生殺与奪の権利を握ってるんだぞとアピールする意味も込めての行動なのだが。
パシッ。
だが男は俺の手首を力を込めて握ってくる。反抗の意思を示すかのようだ。
ポキ。
俺は伸ばされた男の右手の親指を、百八十度の方向に折り曲げてやった。
再び悶絶し、絶叫する男。
ほんと学習しないな。俺も俺でちょっとチビチビやりすぎなのかな。おじさんの依代になる可能性もあるからそんなに壊すようなことはしたくないというのが本音なんだけど……。まぁあんまり言うことを聞かないというのであれば破壊するのもやむなしか。別に代わりはこの世に腐るほどいるだろうし。
「立場をそろそろ分かっていただけるとありがたいんですが。次歯向かってくるなら左腕を落とそうかと思います」
「ひふ……ひふ……クソッタレっ……」
男は充血した目で睨んでくるだけだ。
はぁ、仕方ない、脅し継続か。というかもう面倒だしやっちゃってもいいのかな。よくよく考えるとこの人にそんない固執する意味ない気がしてきたし……。
そんなことを俺が考えていると、男はゆっくりと両手を上に上げ始めた。
「……降伏、だ」
ようやく折れてくれたようだった。
はぁ、まぁ意外と考える理性はあったってことだな。俺が内心殺そうかと思った瞬間の降伏だ、悪運が強いやつだな。
「そうですか、では降伏を受け付けます。これ以上は攻撃しません。ですが今後何か僕に反抗する素振りを見せた場合は有無を言わず破壊します。で、お隣のあなたはどうなんです?」
年寄りの男の隣で怯えきっているもう一人の男に視線を向ける。
「ひぃえ! も、もちろん降伏しますぅ。どうか、どうか命だけは……うぅ……」
ということだった。
「じゃあとりあえず馬車の外に出ましょうか。妙な動きは見せないでくださいね。僕が妙な動きと少しでも判断すれば攻撃します」
俺は男二人を連れて外へと出た。
そして先程降伏させた護衛たちの元へ連れていき、座らせる。
護衛の男たちは言われた通り手を地面に付けたままでいた。意外といいコじゃーん!
これで馬車に乗っていた者とその一味全員を捕縛することができた。
まぁ約一名は頭部がなくなってしまってはいるが……まぁご愛嬌というものですよ。
「お、おい、こりゃ……」
と、このタイミングでおじさんがひょっこりと現れた。
様子を見に来たといったところだろう。
地面に座る男たちを見て目を見張っている。
「とりあえず制圧しといたよ。殺さずに脅すって意外と大変だったんだから」
「そ、そうか」
なぜかおじさんは恐れおののいていた。なんだ? 流石にもう反撃はしてこないと思うけど……散々力の差は見せつけたしな。
「……おい、どうする気だよ」
そこで護衛の藍色の髪の男が問うてきた。
「さっきは俺たちを殺さないって言ったよな? だがブルズは殺された」
不満を吐露するように言う男。
ブルズ? もしかしてデブのことか?
「ああ、太ってる奴に関してはなんというか事故みたいなもんだよ。ほら、俺は地面に手を付けろと言っただろ? それをしてなかったからこうなってしまったのだ」
適当な文句をでっち上げ取り繕う。まぁあれに関してはハイになっちゃってたというか、ちょっとやりすぎたかなと反省してます。
「じゃあどうする? なんか生気を吸い取るうんぬん言ってたけど、これで出来たりする?」
「あ、ああ。そうだな。反抗さえしてこなければ大丈夫だ」
そうしてようやくおじさんのフェーズが始まろうとしていた。




